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レポート

2008/4/30

がん患者のためのレシピ・試食会報告【3】

食事は治療であり楽しみ、そして生きること

 がん患者とその家族にとって、がん治療中の食事をどうするかは大きな関心事。がんナビでは、静岡がんセンターが発行した「がん患者さんと家族のための抗がん剤・放射線治療と食事のくふう」に紹介された10品の試食会を開催した。座談会には、2人のがん経験者とがん診療や栄養、患者相談の専門家に集まっていただいた。連載最終回の今回はデザートを味わいつつ、一同、食の尊さを再確認した。



司会(がんナビより埴岡健一):そろそろデザートの時間です。吉田先生、デザートは何ですか?

吉田隆子氏ブルーベリーシェイクオレンジくず湯です。くず湯は、本来、温かいのですが、冷めてしまいましたね(苦笑)。

ブルーベリーシェイクと、オレンジくず湯
ブルーベリーシェイク(左)と、オレンジくず湯

樋口強氏:(オレンジくず湯を飲んで)――ぬるくてもいいですよ。冷たい方がいいかもしれませんね。熱いと口内炎があるときには辛いかもしれません。くずのやさしさとオレンジの色の上品さで、リッチなかんじがいいですね。味も素っ気もないものしか食べられないのかと思っているときには、これはうれしいと思いますね。

多和田奈津子氏(サバイバー)
多和田奈津子氏(サバイバー)

多和田奈津子氏:おいしいです。ただ、私は、元々が冷え性のためかもしれませんが、ホットも試してみたいですね。

司会:ブルーベリーシェイクはどうですか?

多和田氏:口の中が火照っているときには気持ち良さそうですね。ただ、ちょっと後味を感じました。

樋口氏:ちょっと甘いですね。熱があるときにはアイスクリームが食べたいのですが、アイスは後味が強くてつらいんですよ。シャーベットの方がすっきりしますね。

石川睦弓氏:カップのかき氷を好まれる患者さんは多いですね。味のついていないアイスキューブ(氷)を舐めているという話も聞きます。

稲野利美氏:そうですね。アイスクリームよりもシャーベットのさっぱり感が好まれますね。

病院食の選択制が全国に広がることを期待

樋口強氏(サバイバー)
樋口強氏(サバイバー)

樋口氏:入院していたときに思ったのは、食事メニューを選択制にしてもらえるとうれしいなということでした。入院中に何がしたいかといえば、家に帰りたい、テレビが見たい、食べたいです。どの患者さんに聞いてもだいたい同じです。食べるというのはとても重要なことなのです。入院時の食事内容を選択できれば、楽しみの少ない入院生活の中に楽しみを生むのではないでしょうか。また、自分で選んだのだから食べようという気も出てくる。自分で自分の背中が押せるのではないでしょうか。

稲野氏:おっしゃる通りですね。食事は、治療であり楽しみですからね。実は、静岡がんセンターでは、楽しみもそうですが、治療でもある食事に対して、患者さん自身に意思表示していただきたくて、食事内容を選べる制度を導入しています。具体的には、1)3食を自分で選べる選択食、2)少し高い食材を使った特別食、3) 時間に関係なく注文することも可能な補食(おやつ)の3種類があります。

山口建氏:特別食はなかなか豪華で、鰻重とかもありますよね。

稲野氏:はい。通常よりも1050円高いので、それなりに豪華です。ただ、入院期間が短い影響か、特別食を選択する人は少ないですけど。

多和田氏:特別な日を作って、その日だけ特別食にすることもできるんですか?

稲野氏:できます。

多和田氏:さすが静岡がんセンター。そういう制度が全国に広がるといいですね。

樋口氏:(大きくうなずいて)ほんと普及してもらいたいです。

食べることは本能、食べ物から生き方を教えて欲しい

司会:そろそろまとめに入らないといけない時間になりました。最後に、全体を通じて感想などお聞かせいただけませんか?

石川氏:食事、栄養など「食べる」ことに関しての悩みは、患者さんやご家族双方とも多いと思います。食べることは大切ですし、食べられれば「食べられた」という達成感も得られます。患者さんをサポートしたいと一生懸命のご家族にとっても、食事は具体的に関われ、患者さんと一緒に達成感を得られる機会にもなることだと思います。

 ただ、食べたくても食べられない時期がある患者さんと、いつも栄養のあるものを食べさせたいと焦ってしまうご家族の間にずれが起こることもあります。この書籍でコミュニケーションを図り、患者さんと家族の両者で合意しながら、食べられるものを増やしてもらえたらと思っています。

稲野氏:一人暮らしの高齢者で闘病中の患者さんが増えています。そのような方々は、体がたいへんなときに食事を一人で作らないといけない。そのような方々も念頭に、書籍のなかには、手間暇をかけるレシピだけでなく、体がつらいときにも自分で簡単にできるレシピも入れました。あまり力を入れずに簡単に作ってもらえればと思っています。また、紹介しているレシピを使った方のご意見を伺って、より現状を反映した物にしていきたいです。

吉田氏:本日お伺いして、患者さんの食行動は非常に自然で、幼児と同じだと感じました。人間としての食行動の原点を勉強させていただきました。今後、患者さんの食行動についても研究していきたいと思います。

山口氏:食べるということは本能です。食べられないのは、その本能に逆らうことだから、精神的に非常に辛いのだと思います。食べられないときの体のメカニズムは、がん治療中が特別なのではなく、つわりや他の病気でも似ています。今後は、がんに限らず、簡単に作れるレシピからなる、一人暮らしの高齢者用バージョンを作りたいですね。

多和田氏:がんの治療そのものは、医療者に任せるしか他に方法がありません。その一方で、食べられるときに食べて体力を作るというのは、自分にしかできない。私は、そのことに気付いたときから、「ちゃんと食べよう」と思うようになりました。まずは、好きなもの、食べられるものを食べるというのが最初の一歩だと思います。そして、だんだん、栄養のバランスも考えながら食べられるようになるのだと思います。栄養のバランスを考えるうえでも、この本やインターネットは参考になると思います。

樋口氏:私は抗がん剤投与のとき30分おきに吐いていました。もちろん食べられません。そのとき、自分にできることは何かと考えました。それは、水を飲むことでした。いろいろなミネラルウォーターを飲み比べましたが、飲めたのは1種類だけだったんです。あのとき、くさい水というのがよく分かりました。

 治療が一段落して一番食べたかったのはラーメンです。普段食べていて食べられなくなったものが一番食べたかったのです。今回の料理は、皆、特別なものではなく、家庭で作ることのできるものでしょう。作る人の優しさを感じることで、食べようと思えるのではないでしょうか。

 がんの患者が何よりも信じるのは、同じ病気に罹りながら自分よりも前を歩いている人です。先輩患者が食べられた、うちではこんな工夫をしたという声が今回の書籍に加われば、すごく大きな説得力になると思います。「食べ物から生き方を教える」というものにもなるでしょう。ぜひ継続して、次のバージョンを出してもらいたいです。

(まとめ:小板橋 律子)

(がん患者のためのレシピ・試食会報告 -- おわり)


〔関連書籍〕
がん患者さんと家族のための『抗がん剤・放射線治療と食事のくふう』
山口建(静岡県立静岡がんセンター総長)監修 静岡県立静岡がんセンター・日本大学短期大学部食物栄養学科編

〔関連ウェブサイト〕
SURVIVORSHIP.JP がんと向き合って

〔出席者〕(50音順)
 石川睦弓氏(静岡がんセンター研究所患者・家族支援研究部)
 稲野利美氏(静岡がんセンター栄養室長 管理栄養士)
 多和田奈津子氏(サバイバー)
 樋口強氏(サバイバー)
 山口建氏(静岡がんセンター 総長)
 吉田隆子氏(日本大学短期大学部食物栄養学科 教授)

〔協力〕(調理)
日本大学短期大学食物栄養学科 西島律子氏、小谷祐太朗氏、高橋千尋氏、森仁美氏、三島市保健センター管理栄養士 平澤佳代子氏、池谷広美氏 
--- 朝早くから調理、また試食会終了後の片付けもご協力いただきました。ありがとうございました。 ---

〔協力〕(会場設営)
三島市役所健康増進課食育推進室
--- 室長の加藤健一氏の全面的なご協力に感謝いたします。 ---

■メニュー
 主食:冷や汁うどん・かに卵雑炊・ひじきの混ぜごはん
 主菜:卵豆腐の冷やしあんかけ・いり豆腐
 副菜:もやしとにんじんのごま酢あえ・小松菜と油揚げの煮浸し
 汁物:精進汁
 デザート:ブルーベリーシェイク・オレンジくず湯

(2008年3月31日:三島市役所保健センターにて収録)

約6割が味覚障害を経験

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