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レポート

2008/3/25

あなたの受けている化学療法は最適か

大腸がん患者の一部は、投与量が少ない可能性も

 大腸がん患者に化学療法を行う場合、患者の状態を考慮したり、副作用をできるだけ軽減するために、治療当初から抗がん剤の使用量を少なめにすることがある。また、治療効果が上がらない場合には使用する薬剤を変更することがある。しかし、こうした対応が適切ではない場合、本来の治療効果が得られず、結果的に治療が困難とみなされてしまう恐れが指摘されている。

 3月7日に東京で開催された第41回制癌剤適応研究会で、栃木県立がんセンター化学療法科の浜本康夫氏は「治療に悩んだ症例」として、次の2人の患者の臨床経過を紹介した。

 1人目は、60歳代の男性。2001年8月に直腸がんとわかり、直腸切断術が行われた。10月から術後の補助療法として、RPMIレジメン(5-FU/ホリナート)を実施。2003年12月に肺転移が出現したため、IFL療法(5-FU/ホリナート+イリノテカン)を開始した。2004年5月、両側の肺転移が明らかになり、病状増悪と判断して、6月からS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)単独療法を開始。

 2005年1月には、治療効果が不十分であるとしてUFT(テガフール・ウラシル配合剤)/ホリナート療法に変更。2006年5月には、FOLFOX4療法を開始。7コース実施したところで、毒性により中止となり、同年12月からFOLFIRI療法を開始した。2コース施行したものの、病状増悪のため、栃木県立がんセンターに転院となった。

 ここまでの経緯をみれば、既にどの薬剤も効かない状態だと思うだろう。ところが、浜本氏が薬剤の投与法について詳しく照会したところ、幾つかの薬剤で投与量が標準用量を下回っていたことがわかった。例えば、IFL療法では、本来は125mg/m2用いるべきイリノテカンの量が80mg/m2だった。また、FOLFOX4療法とFOLFIRI療法は本来、2週に1回行うこととされているが、病院の方針により、月1回の実施となっていた。

図1
図1 60歳代男性の腫瘍マーカーの推移

 このため浜本氏は、薬剤が有効濃度に達していなかった可能性があると判断、標準用量でのFOLFIRI療法を開始した。その結果、約4カ月で腫瘍マーカーは3分の1程度に低下し、その後も良好なコントロールが得られている(図1)。

 2人目は、70歳代の男性。2004年7月にステージIIIbの直腸がんに対し、低位前方切除術が行われ、術後補助療法としてUFT/ホリナート療法を実施した。2005年3月に肝・肺転移が出現したため、5-FU/ホリナート療法を24回実施した。病状増悪のため、11月からUFT/ホリナート療法を7コース実施。2006年7月に、腫瘍マーカーが上昇してきたため、S-1単独療法を開始。10月には、同様に腫瘍マーカーが上昇したために、FOLFOX4療法を開始したが、2コース実施したところでグレード1のアナフィラキシーが出現したため中止した。代わりにFOLFIRI療法を開始したが、4コースで腫瘍マーカーが上昇したために、2007年8月に栃木県立がんセンターに転院となった。

図2
図2 70歳代男性の腫瘍マーカーの推移

 浜本氏は、「腫瘍マーカーの上昇のみで治療法を変更したり、グレード1の毒性反応ですぐに治療を中止するなどしているが、もっと総合的に治療効果を判断する必要があるのではないかと思った」と説明した。この患者に対し、mFOLFOX6療法を開始したところ、すぐに腫瘍マーカーが低下してきた。約半年後に病状が再び悪化したものの、イリノテカンを追加したところ、再び良好なコントロールが可能になった(図2)。

 これらの経験を基に浜本氏は最後に、「副作用を軽減するために、標準用量より少量を投与したり、すぐに治療法を変更する医師の気持ちもわかるが、薬剤の効果を十分に発揮できない恐れがあるので注意が必要だ。できるだけ、標準用量での治療を継続すべきであり、もし減量などの対応を取る場合には、事前にきちんと患者に説明する必要があるのではないか」と話した。

(小又 理恵子)

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