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レポート

2008/3/18

日本がん治療認定医機構理事・東京都立駒込病院院長の森武生氏に聞く

がん治療認定医ってどんな人ですか?

 2006年12月に設立された日本がん治療認定医機構。この機構が認定するがん治療認定医の第1回セミナーと試験が1月13、14日に開催された。申請受付時には約5000人が集中し、全員受験できないといった混乱も見られたが、5月には3500人の受験が可能となり、第1回の1700人と併せて今年の申請者は全て受験できることになった。では、新たに誕生するがん治療認定医とは、どのような医師なのだろうか?日本がん治療認定医機構の理事で教育委員会委員長を務める東京都立駒込病院院長の森武生氏に伺った。



──1月末に、がん治療認定医の第1回セミナーと認定試験が終わりました。先生の率直な感想をお聞かせ下さい。

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「がん治療認定医とは、幅広いがん診療の知識を持った“がんの総合医”」と語る森氏

 セミナーに参加された医師は年齢構成が多岐にわたっていて、若い医師からベテランの医師までいました。私はセミナーの進行役を務めましたが、皆さん、非常に熱心に講義を受けておられたと感じました。

 講義も全て聞きましたが、非常に面白かった。内容も最新の情報を盛り込んだ、非常にレベルの高いものだったと思います。私のような年代では、専門以外の領域の知識は古びているし、最新の情報を知ることは医師としてもとても楽しいことです。受講者の皆さんもそう感じたのではないでしょうか。

──講義を受けた後、試験がありました。1月末には試験合格者が発表され、試験合格ラインは70%と発表されました。

 実は私自身、教育委員会委員長という立場もあり、事前に試験に挑戦してみましたが、これが結構難しい。セミナーを聞いてから受けた試験はゆうゆうと合格点がとれましたが、受講前は非常に厳しかった。セミナーは有効だと感じました。講師の方々も非常に力を入れてくれ、受講者も真剣でしたし、あの形は我々が理想としたものでした。

 試験の判定基準は70%としましたが、自分が事前に試験を受けてみた実感から、正直、もっとできないのではないかと危惧していました。70%ぐらいの判定基準にしなければ国民に説明ができないのだけれど、半分もいなかったらどうしようと。しかし、9割以上の受講者が70%を超え、非常に嬉しかった。70%で心おきなく線が引けました。

──改めて、このがん治療認定医の位置づけをお聞かせ下さい。

 セミナーや試験は、がん診療を行うにあたって持っておくべき基本的な知識、経験はどんなものかを示し、それを備えているかチェックするものです。認定医になれば、その医師はがん治療を行う上で持っておくべき知識は全てマスターしているという位置づけです。

 今後は、認定医として幅広いがんの知識を持っている上で、例えば消化器分野を追求すれば、その医師は消化器がんの専門医となっていくのだろうと思います。今回の認定医制度は、各領域のプロフェッショナルであることを否定するものでは決してありません。がんの診療に携わるならば、少なくともこれだけの知識を持っていて欲しい、というものです。他の専門医や認定医と競合するものではない。

 私自身は大腸がん診療に外科医として長く携わってきましたが、化学療法にはどんな選択肢があり、どの段階で行うべきか、緩和ケアはどうすべきか、放射線治療はどう受けるべきか、ということをアドバイスできなければならないと思っています。でなければ、「手術はしたけど、その後は……」と患者さんを放り出してしまうことになりかねません。そのため、常に幅広い情報の取得とアップデートは必須でしょう。

 がんの診療に携わるならばこれぐらいの知識は必要ですよ、と示しているものですから、当然、がん診療に携わろうという若手医師にはがん治療認定医を目指しながら学んでいってほしいと思います。

 また、がんの知識を持っている開業医が増えて欲しい。開業医は第一線に立つ医師としていろいろな相談を受ける機会が多いでしょう。この開業医ががん治療認定医であれば、患者さんはこの開業医にいろいろ相談ができるようになる訳です。“がん治療総合医”というイメージです。

 つまり、(1)今後がん診療に携わっていく若い医師の知識の充実、(2)開業医が幅広い、そして最新のがん診療の知識を得る、(3)ベテランを含む、現在がん診療に携わっている医師が自分の知識をアップデートする、という3タイプの医師が参加するわけです。正確な内訳は現在集計中ですが、受講者の顔ぶれを見ても、この3タイプの医師に参加していただいたと感じています。

──他の専門医制度と競合しないということですが、また新たに資格ができたという指摘もあります。

 今回試験を受けに来た医師の多くは、国民に後押しされているのではないでしょうか。専門医はたくさんいるけど、がんはいったい誰が見てくれるのか、と。私は大腸がんの専門家ですが、正直、疫学や緩和ケアについては聞きかじった程度です。専門家には、基本的に持っていなければならない知識が欠けていることがあります。それに、専門医や認定医は非常に多くいますが、必ずしも“がん専門医”であるとは限りません。他の臓器の診療でどんなことが起こっていて、治療法にどんな進歩があるのか、といったことも知っておくべきです。

 今の専門医制度は、各学会がそれぞれ決めていますから、セミナーや試験の内容は当然ながら統一されていません。かといって、今回のセミナーで講師をしていただいた20人余の各分野のエキスパートを集め、最新の情報を盛り込んだセミナーを各学会がそれぞれ実施することは非常に難しいでしょう。基本的な知識を得るという部分はこのがん治療認定医制度に一元化してほしいと希望しています。統一されたセミナーや試験を受けたがん治療認定医が増えることで、日本のがん診療の水準が底上げされ、患者さんのクレームや戸惑いも減っていくでしょう。これが最終目的です。がん診療に携わる医師が持つべき基準を決める制度ですから、国民の理解は得られやすいでしょう。

──がん治療認定医は標榜できるようになるのでしょうか。

 標榜できるようにしたいと思っています。最近は、ホームページなどから情報を入手する時代ですから、きちんと情報を発信していれば標榜と同じ効果はあるのではないかと思っていますが。ただ、特に若い医師へのインセンティブとして標榜は重要でしょうね。施設認定要件などにもなるのではないでしょうか。“がんの総合医”がきちんといますよというね。

 また、先ほど開業医の話をしましたが、開業医は例えば消化器外科の専門医にはなれないわけです。症例数が足りませんから。だけど、がんに関する知識はきちんと持っていて、何らかの形でがんの診療に貢献したいと思っているならば、この制度と標榜は重要だと思います。

 一番重要なのは、がん診療にかかわる医師は、常に自己研鑽すべきで、患者さんに対して責任があるということです。がん治療認定医取得はそのためのきっかけとも言えますし、認定医となってからも講習を受け続け、5年で更新がある制度となっています。

(まとめ:加藤 勇治)

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