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レポート

2008/3/18

進行腎細胞がんの治療が分子標的薬の登場で変わる

 特定の分子だけに作用する分子標的薬の登場は、がんの治療を大きく変えた。イマチニブ(商品名「グリベック」)は慢性白血病(CML)の高い寛解率を生み出し、トラスツズマブ(「ハーセプチン」)は予後不良であったHER2陽性乳がんの予後を大きく改善した。そして、腎細胞がんにおいても、日本における治療が大きく変わろうとしている。



 2004年4月からの約1年間をみると、米国における進行腎細胞がんの治療は、インターフェロンα、インターロイキン2を使ったサイトカイン療法が6割を占めていた。ところが2005年11月からの1年間は、サイトカイン療法の占める割合はたった12%へと激減した。2004年から2005年にかけて、ソラフェニブ、スニチニブという分子標的薬が登場したためだ。

 このほど開催されたバイエル薬品主催のプレスセミナー、「進行性腎細胞癌に対する薬物療法の今後の展開」(主催)で、筑波大学大学院腎泌尿器外科学・男性機能科学教授の赤座英之氏は「これは革命的な変化だ」と語った。

 多くの腎細胞がんでは、VHLというがん抑制遺伝子に変異が生じる。この遺伝子は、転写調節因子HIF(hypoxia inducible factor)の分解に関与している。HIFは腫瘍細胞の増殖因子であるTGFα、腫瘍血管の増殖を促すPDGFの遺伝子、VEGFの遺伝子の転写を促進する遺伝子だ。

 つまり、VHL遺伝子が変異を起こすとHIFを分解する働きが低下し、増殖因子が過剰に生産され、腎細胞がんが発生・増悪する。

 ソラフェニブとスニチニブは、この経路のうち主にVEGF受容体とPDGF受容体を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する。ソラフェニブは今年1月に日本でも承認され、薬価収載後発売される見通しだ。スニチニブも2月に行われた薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過し、近く承認される見通しとなった。

 この他に、米国ではテムシロリムスという別の分子標的薬も認可されており、日本では申請中の段階だ。テムシロリムスは作用機序からmTOR阻害薬と呼ばれ、HIFの活性を抑制することで効果を発揮する。また欧州では抗VEGF抗体ベバシズマブ(商品名「アバスチン」)がインターフェロンとの併用で認可されているが、日本では開発が検討されている段階だ。

 赤座氏によると、手術で治せない患者を対象にした場合、サイトカイン療法は患者を選択すればある程度の効果は得られるものの、一般的に腎細胞がんに対する奏効率はせいぜい20%しかなく、延命効果はほとんど期待できなかったという。

 赤座氏は分子標的薬の高い効果について、ソラフェニブを例にとって海外で行われた臨床試験TARGETs試験の結果を紹介した。

 TARGETs試験は、1つから3つまでの全身療法がうまくいかなかった、進行腎細胞患者を対象にした臨床試験。1日2回400mgのソラフェニブを投与された群(n=451)は、完全奏効(CR)1例(1%未満)、部分奏効(PR)43例(10%)、安定状態(SD)333例(74%)で、プラセボを投与された群のCR0例(0%)、PR8例(2%)、SD239例(53%)と比較して抗腫瘍効果が確認された。無増悪生存期間中央値もソラフェニブ群が5.5カ月、プラセボ群が2.8カ月で、ハザード比が0.51と有意にソラフェニブの有用性が示されている。

 また、日本人の進行腎細胞がん患者を対象にしたフェーズ2試験でソラフェニブの高い効果が確認されたことも、赤座氏は紹介した。転移性腎細胞がん患者で、少なくともサイトカインを含む治療法が1つうまく行かなかった131人に1日2回400mgのソラフェニブを投与した。その結果、CR、PR、SDを合わせた疾患制御率は86.8%で、無増悪生存期間中央値は32週(95%信頼区間 25-40)だった。

分子標的薬特有の副作用に注意
 分子標的薬の登場に期待が高まる結果だが、赤座氏は副作用について、サイトカインとは全く異なる副作用があるので注意すべきだと指摘した。

 例えばソラフェニブには、手足症候群といって手足の皮膚に水疱ができたり、ぼろぼろに剥げ落ちるという症状が良く現れる。日本人の試験では55%の患者で認められた。また、脱毛、皮疹、下痢、高血圧、リパーゼの上昇も多く認められた。ソラフェニブは市販後に全例調査が義務づけられ、投与施設も限られることになる。赤座氏はこの市販後調査の中で、日本人に特有の毒性プロファイルをまとめていかなければいけないと強調した。

 さらに赤座氏は、術後の補助療法としてソラフェニブやスニチニブを長期に得投与する臨床研究が始まっていることに触れ、現時点ではソラフェニブやスニチニブの長期投与における有害事象を予測する十分なデータが蓄積されていない点を指摘した。

(横山 勇生)


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