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2008/3/11

乳がん治療薬トラスツズマブによる術後薬物療法

治療を終了している乳がん患者も投与対象になる?ならない?

乳がん治療薬トラスツズマブによる術後薬物療法

治療を終了している乳がん患者も投与対象になる?ならない?


 海外で標準的な治療法となって久しい乳がん治療薬トラスツズマブ(商品名「ハーセプチン」)による術後薬物療法。国内で大幅に遅れていたこの適応拡大が、2月29日にようやく認められた。専門家からは、トラスツズマブが術後薬物療法に組み入れられることで、HER2陽性乳がんの再発は今後低下すると期待されており、新規患者にとって福音といえそうだ。では既に、手術や放射線療法、薬物療法を終了した患者にとっては、今回の承認はどんな意味を持つのだろうか?
 トラスツズマブの術後投与の保険適応が、ようやく認められた。今回の承認を受けて、HER2陽性で、再発リスクが中リスク以上の乳がん患者の術後薬物療法に、トラスツズマブは組み込まれていくだろう。 トラスツズマブの販売元である中外製薬は、同申請を2006年11月末に提出しており、承認までに約1年3カ月の年月が流れたことになる。申請からわずか3カ月という短時間で適応拡大の認可が下りている欧州などに比べ、日本の薬事行政のフットワークの悪さを露呈したともいえる。 適応拡大の承認を待つ間、トラスツズマブの術後投与は、海外で標準的な治療法として多くの患者に適用されただけでなく、日本乳癌学会の診療ガイドライン(「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン1薬物療法」2007年版)においても、標準的な治療法として推奨された。つまり、標準治療であるにも関わらず保険適応が無かったため、これまで患者は全額自己負担(薬剤費だけでも年間300万円以上)で治療を受けるかどうかという決断を迫られていた。経済的な理由から、トラスツズマブの術後投与を受けたくても受けられなかった乳がん患者が多数いたことだろう。 このような、今も日々、再発の不安と戦っている患者にとって、今回の承認はどんな意味を持つのだろうか? 「手術後1年間ぐらいのインターバルであって、再発していなければ、術後薬物療法としてトラスツズマブの追加投与を受ける意味はあると思う。また、この考え方は、世界的にも一般的」。愛知県がんセンター中央病院乳腺科部長の岩田広治氏はこう答える。 岩田氏は、トラスツズマブの術後薬物療法が、再発抑制や全生存率改善に有用というエビデンスを示した国際共同臨床試験の一つ、HERA試験に参加した経験を持つ。HERA試験では、HER2陽性浸潤性早期乳がんを対象に、術後、トラスツズマブを1年間投与した群と、投与を行わない観察群を分けて、再発抑制効果や全生存率を解析している。 その結果、2006年に行われた中間解析の時点で、トラスツズマブ投与群では観察群に比べて、再発抑制効果や全生存率の改善効果が示された。そして、その結果を受けて、観察群にもトラスツズマブ投与が開始されている。 今後、この観察群においても再発の抑制効果が認められれば、ある程度のインターバルの後でもトラスツズマブを追加投与する意味はあるということが科学的に示されるだろう。ただし残念ながら、その結果はまだ出ていない。そのため、先程の結論に関して岩田氏は、「あくまで推察であり、科学的根拠は無い」という。 しかし、岩田氏は、HERA試験に参加した53人を今まで観察してきたなかで、手応えを感じているようだ。「私の患者さんのなかには、最高で2年ぐらいの間が空いた後にトラスツズマブの追加投与を受けた患者さんもいますが、トラスツズマブ投与に切り替えた後に、再発した例は、まだ一人もいません」という。 また岩田氏は、「術後1年程度までであればOKで、『では1年1カ月経ってしまっていたら、駄目なのか?』と言われても答えはありません。患者さんの希望があれば投与することになるのでしょう」と語る。明確なエビデンスが出るまでは、医師達は、リンパ節転移の状態など、様々な再発リスク因子を考慮し、また、患者の希望も聞きながら、トラスツズマブの追加投与をしていくということだろう。 もしもあなたが、術後ある程度の期間が空いているHER2陽性乳がんであったならば、トラスツズマブの追加投与について、ぜひ一度、主治医に相談してみて欲しい。乳がん治療においては、“とにかく再発させないこと”が非常に重要だからだ。
(小板橋 律子)

●トラスツズマブの副作用についてトラスツズマブの副作用としては、発生頻度は少ないものの心臓関連の副作用が報告されている。トラスツズマブ投与の際の基本的な注意点として、投与開始前や投与中の心機能検査(心エコーなど)が必要とされている。患者としては、心機能検査をしっかり受けること。また、動悸など心機能の低下を疑う症状を感じたときは、速やかに主治医に報告することを心がけて欲しい。●トラスツズマブを術後薬物療法として受ける場合の薬剤費トラスツズマブの初回投与量は、8mg/kg、2回目以降は6mg/kgを3週間ごとに1年間継続することとなる。トラスツズマブの価格は60mgで3万258円、150mgで7万3981円。保険収載されても3割負担では相当の医療費となる。経済的負担を軽減できる高額療養費などの制度を活用して欲しい。【関連記事】・ハーセプチンが乳がん術後補助療法に適応拡大【関連記事】 乳がん百科(監修者への質問コーナー)・トラスツズマブによる手術後の薬物治療、術後どれくらいまでであれば意味がある?

 海外で標準的な治療法となって久しい乳がん治療薬トラスツズマブ(商品名「ハーセプチン」)による術後薬物療法。国内で大幅に遅れていたこの適応拡大が、2月29日にようやく認められた。専門家からは、トラスツズマブが術後薬物療法に組み入れられることで、HER2陽性乳がんの再発は今後低下すると期待されており、新規患者にとって福音といえそうだ。では既に、手術や放射線療法、薬物療法を終了した患者にとっては、今回の承認はどんな意味を持つのだろうか?

 トラスツズマブの術後投与の保険適応が、ようやく認められた。今回の承認を受けて、HER2陽性で、再発リスクが中リスク以上の乳がん患者の術後薬物療法に、トラスツズマブは組み込まれていくだろう。

 トラスツズマブの販売元である中外製薬は、同申請を2006年11月末に提出しており、承認までに約1年3カ月の年月が流れたことになる。申請からわずか3カ月という短時間で適応拡大の認可が下りている欧州などに比べ、日本の薬事行政のフットワークの悪さを露呈したともいえる。

 適応拡大の承認を待つ間、トラスツズマブの術後投与は、海外で標準的な治療法として多くの患者に適用されただけでなく、日本乳癌学会の診療ガイドライン(「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン1薬物療法」2007年版)においても、標準的な治療法として推奨された。つまり、標準治療であるにも関わらず保険適応が無かったため、これまで患者は全額自己負担(薬剤費だけでも年間300万円以上)で治療を受けるかどうかという決断を迫られていた。経済的な理由から、トラスツズマブの術後投与を受けたくても受けられなかった乳がん患者が多数いたことだろう。

 このような、今も日々、再発の不安と戦っている患者にとって、今回の承認はどんな意味を持つのだろうか?

 「手術後1年間ぐらいのインターバルであって、再発していなければ、術後薬物療法としてトラスツズマブの追加投与を受ける意味はあると思う。また、この考え方は、世界的にも一般的」。愛知県がんセンター中央病院乳腺科部長の岩田広治氏はこう答える。

 岩田氏は、トラスツズマブの術後薬物療法が、再発抑制や全生存率改善に有用というエビデンスを示した国際共同臨床試験の一つ、HERA試験に参加した経験を持つ。HERA試験では、HER2陽性浸潤性早期乳がんを対象に、術後、トラスツズマブを1年間投与した群と、投与を行わない観察群を分けて、再発抑制効果や全生存率を解析している。

 その結果、2006年に行われた中間解析の時点で、トラスツズマブ投与群では観察群に比べて、再発抑制効果や全生存率の改善効果が示された。そして、その結果を受けて、観察群にもトラスツズマブ投与が開始されている。

 今後、この観察群においても再発の抑制効果が認められれば、ある程度のインターバルの後でもトラスツズマブを追加投与する意味はあるということが科学的に示されるだろう。ただし残念ながら、その結果はまだ出ていない。そのため、先程の結論に関して岩田氏は、「あくまで推察であり、科学的根拠は無い」という。

 しかし、岩田氏は、HERA試験に参加した53人を今まで観察してきたなかで、手応えを感じているようだ。「私の患者さんのなかには、最高で2年ぐらいの間が空いた後にトラスツズマブの追加投与を受けた患者さんもいますが、トラスツズマブ投与に切り替えた後に、再発した例は、まだ一人もいません」という。

 また岩田氏は、「術後1年程度までであればOKで、『では1年1カ月経ってしまっていたら、駄目なのか?』と言われても答えはありません。患者さんの希望があれば投与することになるのでしょう」と語る。明確なエビデンスが出るまでは、医師達は、リンパ節転移の状態など、様々な再発リスク因子を考慮し、また、患者の希望も聞きながら、トラスツズマブの追加投与をしていくということだろう。

 もしもあなたが、術後ある程度の期間が空いているHER2陽性乳がんであったならば、トラスツズマブの追加投与について、ぜひ一度、主治医に相談してみて欲しい。乳がん治療においては、“とにかく再発させないこと”が非常に重要だからだ。(小板橋 律子)

●トラスツズマブの副作用についてトラスツズマブの副作用としては、発生頻度は少ないものの心臓関連の副作用が報告されている。トラスツズマブ投与の際の基本的な注意点として、投与開始前や投与中の心機能検査(心エコーなど)が必要とされている。患者としては、心機能検査をしっかり受けること。また、動悸など心機能の低下を疑う症状を感じたときは、速やかに主治医に報告することを心がけて欲しい。

●トラスツズマブを術後薬物療法として受ける場合の薬剤費トラスツズマブの初回投与量は、8mg/kg、2回目以降は6mg/kgを3週間ごとに1年間継続することとなる。トラスツズマブの価格は60mgで3万258円、150mgで7万3981円。保険収載されても3割負担では相当の医療費となる。経済的負担を軽減できる高額療養費などの制度を活用して欲しい。

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