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2008/2/26

日本がん治療認定医機構理事長・札幌医科大学学長の今井浩三氏に聞く

「がん治療認定医とは患者さんのニーズに応えるがんの総合医です」

 日本学術会議ががんの専門医の必要性を提言したことをきっかけに、2006年12月に設立された日本がん治療認定医機構。提言から3年半を経た今年1月、第1回のがん治療認定医認定のためのセミナーと試験が開催された。この認定医制度の立ち上げに関わった日本がん治療認定医機構の理事長で、札幌医科大学学長の今井浩三氏に、設立までの経緯と認定医の位置づけについて語っていただいた。

「がん治療認定医の方向性を決めるポイントとなったのは患者団体との討論会」と語る今井氏

――2006年12月、日本がん治療認定医機構が設立されました。設立までの経緯をお聞かせください。

今井 2004年8月に、日本学術会議のがん専門部会から、わが国のがん治療の基盤は脆弱であるとして、癌治療専門医制度の必要性が指摘されたことが発端です。この指摘を受け、2005年6月に日本医学会が、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会などに対し、学会横断的な組織が必要であると提言しました。この3学会に全国がん(成人病)センター協議会が加わり、「がん治療認定医制度ワーキンググループ」が結成されました。
 
このワーキンググループで具体的な制度について議論してきたのですが、認定医の方向性を決めるポイントとなったのが、2006年1月の患者団体との討論会です。患者団体20以上とディスカッションしましたが、患者さんががん診療に関する情報を強く欲していることを実感しました。

 患者さんは、インターネットや雑誌などでさまざまな情報を収集しますが、その病院が本当に自分の望む病院なのか分からず、戸惑いを感じているようです。緩和ケアについて知りたい、リンパ浮腫の相談窓口がない、痛みを取ることに熱心になって欲しい、放射線治療をいつ受けたらよいのかわからない、担当医は外科の話はするが抗がん剤の話はしてくれないとか、内科の先生は手術を勧めないとか、さまざまな状況に患者さんが置かれていることに改めて気付かされました。

 手術や化学療法に長けた医師を求めるのはもちろんでしょうが、いろいろな知識を持っていて、どうしたらよいか方向性を指し示してくれるような医師を求めていることが分かりました。

 この患者団体との討論会には、日本医学会の会長である高久史麿先生も参加し、先生自ら改めてがん治療認定医の必要性を実感され、やるべきだと後押し下さいました。これには我々も勇気づけられましたね。以来、毎月会合を持ち、2006年12月に日本がん治療認定医機構の設立に至りました。これは、患者ニーズに応えるための組織だと思っています。

 機構は、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、全国がん(成人病)センター協議会の4つの団体から理事を計9人選出し、他は事務員2人だけとシンプルな構成となっています。4団体から300万円ずつお借りして、事務員と事務所を確保しましたが、あとは各自、手弁当で行っているのが正直なところです。しかし、いろいろな方の後押し、サポートを受けているものですから、我々は志を高く持ち、まただからこそここまでこられたと思っています。

──新しい認定医を立ち上げるにあたり苦労されたことも多かったと思いますが。

今井 これまで、がん診療にかかわる医師が参加しているさまざまな学会の理事会に、「がん治療認定医とはどういうものか」ということを何度も説明してきました。最初は、がん治療認定医とはいったい何者なのか、がん診療にかかわる各種専門医と競合するのではないか、などといろいろな疑問をぶつけられましたが、何度も説明してきた結果、だいぶ理解が進んできたと感じています。

 実際、1月の教育セミナーと試験に、5000人もの申請があったのは、多くの医師にこのがん治療認定医というものが必要であると感じていただけたことの表れだと思います。予想以上の申請数だったので、今年は2回に分けて試験をすることになりましたが。

──そのがん治療認定医の位置づけを改めてお聞かせ下さい。

今井 このがん治療認定医が他の学会の専門医と違うところは、患者さんのニーズが真っ先にあることです。学会の専門医は、医師がその分野で実績を積んでいき、積み上げていったものを専門医という形で示すわけです。

 一方、がん治療認定医は、診療の選択肢が増えてきている状況で、患者さんに幅広い視点で相談に乗れる医師です。患者さんは現在、インターネットや新聞雑誌などで情報を探していますが、それは時に古い情報だったり、誤った情報だったりします。治療の選択肢も増えてきて、診療の際に“交通整理”が必要でしょう。そのため、がん診療にかかわるさまざまなことを知っている医師、つまりがん治療認定医が必要です。得意とする臓器におけるがんの診療だけでなく、他の臓器におけるがん診療の知識、放射線治療、緩和などさまざまなことを知っている医師を認定します。ここが他の専門医や認定医制度と異なるところだと思います。

 がん治療認定医は、ある分野のエキスパートであることを否定しているわけではありません。がんに関するゼネラリスト(総合医)としての自分も持ちなさいということです。専門的な部分が2階だとしたら、このがん治療認定医は1階として、土台を固めるものです。これまでがん治療に関わってきた医師は、この全般的な知識が不足しているところがあったのだと思います。

──がん治療認定医を数万人誕生させたいということですが。

今井 毎年3000〜4000人の認定医が誕生する予定です。がん患者さんが150万人以上いるといわれる中で、100人の認定医を作っても不足であると思っています。私の試算では数万人のがん治療認定医が必要で、それが均てん化の必須条件になるのではないでしょうか。

 この認定医制度が普及すれば、日本のがん診療の底上げができると思っています。がん対策基本法ができて、がん診療の均てん化を進めていくということは、都市部だけでなく全国各地に、患者さんに対してがん診療の方針を指し示す医師がいるという意味もあると思っています。また全国に、統一された知識を持っている医師がいて、それが標榜されていることで患者さんはどこに行けばいいかのか分かるようになります。標榜は医師側にもインセンティブになりますし、病院にとっても重要でしょう。標榜ができるように働きかけていきたいと思っています。(まとめ:加藤 勇治)

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