このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2008/2/12

がんサバイバーの本音

小児がんサバイバーが住みやすい社会とは?

1歳8カ月で白血病になった福井紫耀君と母の郁子さん

 看護師・保健師として仕事をした後、大学院の修士課程に入学。在籍中に出産しました。そろそろ研究に復帰しようと思っていた矢先に、子供が白血病の診断を受けました。がんについて、私もなにかしなくてはという思いから、修士課程の研究を小児がんサバイバーの社会復帰に急きょ変更、彼らがどうやって社会に適応しているのかを調べました。




 白血病の診断は、突然やってきました。

 子供が1歳8カ月の頃、発熱が数日続きました。風邪かなと様子を見ているうちに、5日目ぐらいで、体に出血斑が出てきてしまったのです。これは大変と、まず、近所の開業医に連れていきました。そこで、大きな病院に紹介され、その紹介先から、再度、他の病院の紹介を受けました。一日のうちに3つの病院に診てもらい、最終的に白血病の診断を受けました。とてもあわただしい、そして世界がガラリと変わった一日でした。

幼稚園からの帰り道、広場を走り回っている紫耀君
幼稚園からの帰り道、広場を走り回っている紫耀君

 子供の入院は約1年間続きました。自宅に近いところにがん診療ではとても有名な都立病院があったのは非常にありがたかったです。ただ、この病院は、小児病棟が一般病棟と一緒になっていて、感染症で入院している人も近くにいました。抗がん剤治療で免疫力が下がりますから感染症は非常に心配だったので、早めに通院に切り替えさせてもらったぐらいです。

 診断時、子供はまだ小さく、そもそも生命力が非常にあるのでしょうね。抗がん剤治療もあまり目立った副作用もなく乗り越えてくれました。髄液中に抗がん剤を注入する(髄注)も、何度か受けましたが、具合が悪くなるのも一日程度で、すぐに回復しました。

 抗がん剤の量は、「えっ、こんなに入れちゃうの?」と思うほど多いのです。初めの2カ月は毎日数種類の抗がん剤を組み合わせて点滴するので、大人だったら、とても受けられない気がします。何も分からない間に治療が進むため、恐怖心も抱かずに済んだのは、とても小さいときに発症したためでしょう。治療ではかわいそうなことがたくさんありましたが、本人がケロッとしていてくれたのはとても助かりました。

 無菌室にも入りましたが、通路を通る他の患者さんに対して小さな窓の向こうから私と息子が手を振っている姿を、夫は動物園みたいだなんて言っていました。

 退院後、1年間は大変だよと言われていました。実際、直ぐに風邪をひいてしまうんです。肺炎にもなりましたし、中耳炎がなかなか治らなくて困りもしました。

 でも、今はとても元気で、普通に幼稚園に通っています。治療の副作用も見られません。再発はだいたい5年以内にあると聞いていますので、この5年間が無事に済んでくれればと願っています。

学業と小児がんの子供の母親という狭間で
 大学の修士課程に在籍できる期間は決まっているため、子供がまだ入院中に、大学に復帰しないと卒業できない状態になってしまいました。周りからは、大学はあきらめた方がいいのではともいわれ、自分でもどうしていいのかわからず、ちょっとノイローゼっぽくなってしまいました。

母親の郁子さんと仲良くピースの紫耀君
母親の郁子さん(左)と仲良くピースの紫耀君(右)

 同じ境遇の親と無性に話がしたくなりました。治療を受けた病院に小児がん患者さんが少なかったこともあり、小児がんの子供を持つ親は、周囲にあまりいなかったんです。そのため、患者会やサポートグループを捜して回りました。そして、いろんな患者会やサポートグループの会に参加するなかで、自分を取り戻すことができるようになりました。

 また、自分は、“がん”をテーマに研究をした方がいいのではとも思うようになりました。そこで、かなり無理をして、修士課程の研究テーマを、小児がんサバイバーに関するものに変えました。小児がんサバイバーがどうやって社会に適応しているのか、調べてみたいと思ったのです。

 調べてみると、様々な資格を取って、自分の体調管理に気を遣いながらも社会に適応している小児がんサバイバーが多数いることが明らかになりました。今は、このデータをより深く分析していきたいと思っているところです。また、今までの経験を生かせるように、現在は医療コーディネーターとして働いています。

社会の中で生き抜く強さを得て欲しいと思いつつ過保護になりがちな親
 あんなたいへんな闘病を乗り越えたという気持ちがあるからでしょうか、親は、小児がんだった子供に過保護になりがちな気がします。でも、その一方で、社会の中でちゃんと生きていける強い人間に育てたいとも思うのです。こんな矛盾する感情のなかで、どうやって子供を育てていったらいいのか、私自身、考えます。また、他の両親も悩む方が多いのではないでしょうか。

 最近、小児がん患者の兄弟姉妹の支援などの話が出始め、検討されるようにもなってきています。それ自身、とてもすばらしいことと思いますが、親に対する教育に関しても検討されていいのではないかと思います。病気を経験した子供本人よりも親の方が心的外傷後ストレス障害(PTSD)が高いと報告されていますから。私自身も、小児がんを持つ親へのサポート方法を探っていけたらいいなと考えています。

(まとめ:小板橋 律子)

※「がんナビ通信」(週刊:購読無料)を配信中。 購読申込はこちらです。

この記事を友達に伝える印刷用ページ