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レポート

2007/12/25

増加する小児がんサバイバー

待ち望まれていた晩期障害への対応策が動き始めた

 現在、国内の小児がん経験者は3万人に達すると推計され、小児がん治療技術の向上とともに増加し続けている。これら小児がん経験者の多くは治癒後なんらかの体調不良(晩期障害)を抱えており、対応する医療体制の整備が待望されていた。12月14〜16日に仙台市で開催された日本小児血液学会、日本小児がん学会などの合同シンポジウム「小児がん経験者の長期フォローアップシステムの構築」では、小児がん経験者の晩期障害に対応するための長期フォローアップ体制整備の現状が報告された。



 「大学病院では、風邪ぐらいで大学病院に来るなと言われ、近医では、昔がんになったことがあるのなら、うちでは薬は出せないといわれた」――これは長く厳しい闘病に打ち勝った小児がん経験者が、病気を克服した後に置かれている悲しい現実だ。

 「がんの子供を守る会」ソーシャルワーカーの樋口明子氏が、今回のシンポジウムにおいて、「小児がん経験者が長期フォローアップ外来に求めること」と題した講演の中で、小児がん経験者の生の声として紹介した。

 小児がんの治療技術は向上し、現在、小児がんの約7〜8割が治癒するといわれている。ただし、成長期に抗がん剤や放射線治療を受けた影響から、治療終了後も治療の副作用が長期間残り、体調不良を起こしやすい。しかも、これまで日本では小児がん経験者を受け入れる医療者側の体制整備ができておらず、小児がん経験者は晩期障害への適切な診療を受けにくい環境に置かれていた。樋口氏は講演を通じて、その現状を改めて訴えた。


小児がんの晩期障害に対応する拠点病院整備が進展
 このような小児がん経験者の需要に応えるため、国内で進展し始めた晩期障害への医療側の対応の現状が今回のシンポジウムでは報告された。最も注目されているのは、今年度(2007年度)から開始された拠点病院の整備だ。

 晩期障害の拠点病院整備は、国立生育医療センター研究所の藤本純一郎氏を中心に進められている。2007年度の厚生労働科学研究費補助金(がん臨床研究事業)を活用している。

 藤本氏によると、同事業の支援を受け、小児がん経験者の晩期障害に対応するための長期フォローアップ外来が全国で6施設開設されたという。来年には4施設が追加される予定だ。

 これまでに長期フォローアップ外来を開設した病院は、三重大学医学部付属病院、日本医科大学付属病院、東北大学病院、静岡県立こども病院、名古屋医療センター、国立病院機構九州がんセンターの6施設(文末資料参照)。加えて、久留米大学病院、大阪府立母子保健総合医療センター、大阪市立総合医療センター、新潟県立がんセンターの4施設が、2008年中に開設を予定しているという。

 これら6施設の長期フォローアップ外来は全て、他の医療機関で治療を受けた小児がん経験者も受け入れる方針だ。もちろん、長期フォローアップを受けていない状況にある小児がん経験者も受診できる。こども病院であるため年齢制限がある静岡県立こども病院以外は、年齢制限もない。小児外来で予約する必要がある場合でも、小児科とは別途の診療時間枠が確保されており、成人に達している場合でも躊躇なく診察を受けられるようになっている。

 また、内分泌科や婦人科、泌尿器科などとの連携の下、晩期障害の内容に合わせて適切な診療が受けられるようになっている。身体の不具合だけでなく、心理的な問題にも対応するため精神科医や心理療法士などの人員確保を進めている病院も多い。そのため、複数の外来をたらい回しにされることなく、適切な診療を受けられると期待できる。

 また、現時点では年齢制限を設けている静岡県立こども病院も、成人に達した後の小児がん経験者に対して、今後、他の病院と連携しつつ長期フォローアップを提供できる体制整備を検討中という。

 現在、開設が進んでいる長期フォローアップ外来には、地域的な偏りがあることは否めず、通院可能な地域に外来が存在しない小児がん経験者も多数存在するだろう。そのため、今後、地域的な偏りを修正することは大きな課題といえる。しかし、小児がん経験者を受け入れる施設が整備され始めたことは大きな第一歩だ。


治療サマリーを手に入れよう
 一方、小児がん経験者の長期フォローアップを支えるための、ソフト面の検討も行われている。

 小児がんの晩期障害としてどのような症状が生じるかは、当初の治療内容を強く反映している。そのため、適切な診療を受けるためには、どのような手術を受け、どのような抗がん剤投与や放射線治療を受けたかという治療情報は欠かせない。また、晩期障害がない場合でも、適切な健康管理を行う上で治療情報は不可欠。

 しかし現実には、自分自身や我が子の診療録を入手するのは困難な場合が多い。特に治療終了後、長年が経過していればなおさらだ。また、治療内容の記載方法に関して、これまで決まったフォーマットが無かったため、長期フォローアップに必要十分な治療情報が得られるかは当時の担当医次第という状況であった。

 これらの状況を改善するため、治療内容を医師と患者が共有しやすくするためのフォーマット作りを、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)長期フォローアップ委員会が進めている。題して『治療サマリー』。名称の通り、どのような治療を受けたかの概要だ。治療サマリー作成の進捗状況は、久留米大学小児科の大園秀一氏が、同シンポジウムで発表した。

 治療サマリーには、患者基本情報、抗がん治療概要、化学療法、手術、その他の治療、放射線療法、造血幹細胞移植、輸血療法、治療終了後の合併症、通院基本フォロー項目、長期フォローアップ計画などが記載できるようになっている。多忙な医師を助けるため、入力方法の簡便化も工夫されている。

 この治療サマリーは2種類作成が進んでおり、治療が終了し長期フォローアップに移行する段階の小児がん経験者向けのものと、長期フォローアップ中の小児がん経験者用の短縮版がある。来年早々にもJPLSGから公開され、一般の医師も利用できるようになるという。大園氏は、「是非とも患者さん側から『治療サマリー』をくださいと要望して欲しい」と語る。

 治療情報は、小児がんを克服したという卒業証書であり、続いて適切な健康管理を行うために無くてはならない指南書と理解するといいだろう。また、治療終了後長年が経過している小児がん経験者も治療サマリーを入手しておいて欲しい。治療情報は、健康管理のために一生必要な情報であり、また、開設が増えてきた長期フォローアップ外来を受診し、活用する上でも必要な情報なのだ。

(小板橋 律子)

【小児がん経験者の長期フォローアップ外来の概要(2007年12月現在)】

三重大学医学部付属病院
外来名:血液腫瘍フォローアップ外来
診療日:水曜午後
概要:受診者の制限無く、血液がん以外の小児がん経験者も受け入れる。小児外来を介して要予約。可能な範囲で治療歴の持参が必要。

日本医科大学付属病院
外来名:血液フォローアップ外来
診療日:月2回、金曜日の午後(13:00〜)
概要:受診者の制限は無く、血液がん以外のがん経験者も受け入れる。小児外来を介して要予約。

東北大学病院
外来名:長期フォロー外来
診療日:月2回、第1、第3火曜日の午後(14:00〜17:00)
概要:受診者の制限無し。小児外来を介して要予約。

静岡県立こども病院
外来名:小児がん長期フォローアップ外来
診療日:第4水曜日の午後(今後、診療日を増やすことも検討中)
概要;こども病院の性格上、年齢は23歳頃まで。血液腫瘍科を介して要予約。

名古屋医療センター
外来名:長期フォローアップ外来
診療日:第1、第3月曜日の午後
概要:受診者の制限なし。小児外来を介して要予約。同センター以外で治療を受けた患者も受け入れるが、治療歴が必要であるため、主治医の紹介状を持参する必要がある。

国立病院機構九州がんセンター
外来名:長期フォローアップ外来
診療日:第1、第3水曜日の午後
概要:受診者の制限なし。小児外来を介して要予約。

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