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レポート

2007/12/18

「たった一人で手術も救急対応も化学療法もやらざるを得ない」

外科医の置かれた厳しい実態が浮き彫りに

 11月末に横浜で開催された日本臨床外科学会総会において、「化学療法」をテーマにしたセッションが幾つか開かれた。医師の数が多い大都市圏を除けば、多くの外科医が内視鏡検査に手術、救急外来、さらには化学療法まで、たった一人で手掛けざるを得ないという非常に苦しい状況が明らかになった。

 がん患者に対する抗がん剤治療、すなわち「化学療法」は、本来は腫瘍内科医が手掛けるべきとの声が強まっている。しかし、現実には化学療法の専門家である腫瘍内科医自体の数が少ないこともあり、多くの医療機関で外科医が中心となって化学療法が行われている。「外科医が主体のスタンダード大腸がん化学療法」と題したシンポジウムでは、こうした実態が詳しく報告された。司会を務めたのは、名古屋大学社会生命科学教授の坂本純一氏と大阪医療センター外科医長の三嶋秀行氏。

外科医に情報が届かない
 「腫瘍内科医がいないので、外科医が化学療法をやらざるを得ない。治療レベルを維持し、患者の安全性を確保する面からも、外科医が標準的な化学療法についてしっかり理解しておくことは必須」。報告者のほとんどが、こうした認識を持っている。

 これは、近年、大腸がん領域で使用できる抗がん剤の種類が増え、手術の前後に行う補助化学療法の有効性が、徐々に外科医にも理解されてきたためと言えるだろう。「一昔前には、同じ病院内であっても“オレ流が最良”と考える外科医一人ひとりで指示する抗がん剤の量が微妙に異なり、薬剤部を混乱させたこともあった」と、自戒を込めて振り返る声もあった。

 しかしながら、外科医だけが努力しても限界がある。「外科医が多忙な状況下で一生懸命化学療法に取り組んでいるのに、製薬企業からは何の情報提供も無く、独自に情報収集を進めなければならない」と、製薬企業に対する不満を訴える声が上がった。外科医と接触するネットワークが無いためではないかと推測されるが、製薬企業には、化学療法の裾野を広げるため、より積極的な情報提供が求められていると言えそうだ。

 さらに、「標準治療のみに携わっていては、なかなか外科医にまで新薬の情報は回ってこない。かなりの労力が必要ではあるが、臨床試験に参加することで、新薬の詳しい情報を入手することにつながる」と積極的な姿勢も示された。また、「臨床試験を通して腫瘍内科医の知り合いが増えて、個々の化学療法の“勘所”を教えてもらうこともできる。実地診療に即した内容を知ることは非常に勉強になる」との声も上がった。

 その一方で「通常の診療業務に加えて、治験への参加までは手順が煩雑すぎて、とても手が回らない」と、人手不足による限界も指摘された。

他のスタッフとの協力体制が不可欠
 最近増加している大腸がんの外来化学療法に関しては、「外来化学療法」をテーマにしたサージカルフォーラムが開催された。

 「スタッフの数が少ないので、入院患者に化学療法を行うのは難しいと考えた」という病院から、「新たな患者アピールの手段として取り組み始めた」という病院まで、外来化学療法を始めた理由はさまざま。いずれも、外科医が複数の業務の合間に化学療法を行うためには、院内でのチーム医療体制の構築がカギとなるという意見だった。

 チーム医療体制をうまく進めるために「院内統一クリニカルパスや手順書を作り、周知徹底を図った」「他の診療科の医師に協力してもらい、全診療科での交代制をお願いした」「情報共有をどうするかが最も難しかったが、密にミーティングを開くことで対応している」――といった工夫が紹介された。

 同時に、「人がいない、場所がない、という理由で救急外来の一部を間借りして外来化学療法を始めたが、患者が予想以上に増加し、そろそろ対応しきれなくなってきた」「病院経営的にもプラスになるかと思ったが、入院患者数が減って、かえってマイナスとなっている」「静脈注射のできる看護師やがん化学療法看護認定看護師を養成したいが、費用負担をどうするかが課題となっている」など、新たな悩みや課題も浮き彫りになった。

 シンポジウム会場のフロアからは最後に「外科医は、患者の全身状態を正確に把握することに最も長けている。他の診療科とも連携しながら、今後もがん診療における総合的なリーダーとしての役割を果たすべきだ」とする発言もあった。

 10月に開催された日本癌治療学会総会では、化学療法を行っている外科医のほとんどが内科医の関与を望んでいるというアンケート結果が発表されている。外科医が手術から化学療法まで主体となってこなす孤軍奮闘の日々が、できるだけ早く終結してほしいものだ。(小又 理恵子)

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