このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2007/12/4

あなたが住む県は、がんの死亡率が高いですか?

県別の“死亡率ランキング”に注目しよう

 2007年は、4月に「がん対策基本法」が施行され“がん対策元”年とでもいう年になった。6月15日には、「がん対策推進基本計画」が策定され、「がん死亡の20%削減(75歳未満)」を今後10年間の日本のがん対策の全体目標として掲げた。そして、2008年3月末までに、各都道府県がその実施計画としての「都道府県がん対策推進計画」を作ることになっている。各県ではちょうど今この計画作りが佳境に入っている。

 ただ、県によって計画の仕上がり、やる気、実効性には大きな差が出そうだ。あたなが住む県の計画策定状況はどうだろうか。ここで知っておくべきなのは、県によってがんの死亡率に大きな格差があることだ。がんの死亡率が日本の平均より高い県こそ、ひときわがん対策に力を入れて当然だ。あなたの県のがん死亡率が全国47都道府県のうち何位であるか知っていますか。



 2007年6月15日に閣議決定された「がん対策推進基本計画(以下、基本計画)では、「がんの死亡率(75歳未満)の20%減少」と「すべてのがん患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上」を、今後10年間で達成することが全体目標とされた。

 「がんの死亡率(75歳未満)の20%減少」とは具体的に言えばどういうことだろうか。2005年の日本のがん死亡者数(75歳未満)は16万4553人だった。その2割とは、3万2911人を意味する。男女別に分けると、男10万6575人の死亡者の2割は2万1315人、女5万7978人の2割は1万1596人である。これだけの死亡者数をこれから、削減していくわけだ。

 では、これを県別に計算すると何人になるだろう。県別のがんの死亡者数(75歳未満)と、その2割に該当する人数を計算した。


 この数字は、それぞれの県の年齢層別人口のバランスによって調整をしていない数字だが、各県の目標としておおよその目安にはなる。東京都で男性2000人、女性1000人程度、広島県では男性500人、女性250人程度を減少させることに該当する。大づかみに、そう覚えておきたい。

 ただ、県別の目標を設定する場合、各県が現状の死亡者数を単純に一律2割減らせばいいかというと、そうではなかろう。実は、現在、県別の死亡率には大きな格差があるのだ。平均より死亡率が高いところは、それを挽回すべく、20%以上減らすように努力すべきだろう。そうでなければ全国水準に追いつかない。

 県別にがん対策を立てようとしている今、県別のがん死亡率の状況を把握しておくことは不可欠だ。特に自分が住んでいる地域の水準を知っておくことは大切だろう。2005年の県別の死亡率(75歳未満、年齢調整済)を見てみよう。あなたの住んでいる地域の成績はどうか。

 男性のがん死亡率ワースト10と、ベスト5は以下の表のとおりだ。

●男性のがん死亡率ワースト10●男性のがん死亡率ベスト5
順位
県名
死亡率
順位
県名
死亡率
1
青森県
144.8
2
長野県
97.3
2
佐賀県
141.4
2
福井県
107.2
3
福岡県
138.2
3
熊本県
107.6
4
長崎県
136.7
4
山形県
108.2
5
大阪府
135.6
5
沖縄県
108.9
6
秋田県
135.1
7
和歌山県
134.0
     
8
鳥取県
133.2
     
9
山口県
132.5
     
10
北海道
132.2
人口10万人対比、75歳未満、年齢調整済


 2005年の男性の死亡率(人口10万人対比、75歳未満、年齢調整済)の全国平均は122.1だ。上下に2割ぐらい値が違う。

 女性のがん死亡率ワースト10と、ベスト5は以下の表のとおり。

●女性のがん死亡率ワースト10●女性のがん死亡率ベスト5
順位
県名
死亡率
順位
県名
死亡率
1
大阪府
70.8
1
岡山県
55.8
2
佐賀県
70.2
2
長野県
56.4
3
福岡県
69.7
3
山梨県
57.1
4
北海道
69.2
4
大分県
57.2
5
東京都
68.9
5
富山県
59.0
6
青森県
68.7
7
茨城県
68.7
     
8
埼玉県
68.0
     
9
鳥取県
67.9
     
10
和歌山県
67.8
人口10万人対比、75歳未満、年齢調整済


 この全国平均死亡率(人口10万人対比、75歳未満、年齢調整済)は65.6、女性においても上下に1割程度は、県の成績格差がある。


 がん死亡の20%削減という基本計画の目標が果たして実現できるのか疑問に感じる向きもあるかも知れないが、日本全国が男性で長野県並み、女性で岡山県並みになったとしたら、かなり目標達成に近づくことになる。長野県、岡山県でやれていることが、なぜ他の県でできないのかと考えることもできる。

平均以下であるために失われている命
 県別の死亡率の格差は大きい。もし今、全国平均以下の県が平均並みであったらどれだけ死亡者数が減るだろうか。各県の男女別年齢層別の死亡率を見て、全国平均より高いときには、それが全国平均になると仮定して、どれだけ死亡者数が減るか計算してみた。

 男性のがんにおいて、全国平均になることで現状の死亡者のうち救命できる患者の比率が高い順にワースト10を並べる。

●男性の死亡者のうち救命できる
患者 の比率が高い順にワースト10
●女性の死亡者のうち救命できる
患者の比率が高い順にワースト10
順位
県名
比率
順位
県名
比率
1
青森県
15.3%
1
鳥取県
8.4%
2
佐賀県
14.2%
2
大阪府
7.9%
3
福岡県
12.2%
3
福岡県
7.4%
4
鳥取県
11.8%
4
佐賀県
6.9%
5
大阪府
10.5%
5
東京都
5.8%
6
和歌山県
10.3%
6
長崎県
5.7%
7
長崎県
9.7%
7
和歌山県
5.5%
8
高知県
9.4%
8
福井県
5.3%
9
山口県
8.5%
9
奈良県
5.1%
10
秋田県
8.1%
10
北海道
5.1%


 これらの人々は、もしその県のがん対策が充実しており、死亡率が全国並みであれば、死ななくてよかったはずの人々だ。


 次に、この「全国平均を上回っているがん死亡」を人数ベースで表示する。男性、及び女性に関するワースト10は下記のようになる。

●男性●女性
順位
県名
人数
順位
県名
人数
1
大阪府
878人
1
大阪府
348人
2
福岡県
541人
2
東京都
330人
3
兵庫県
392人
3
福岡県
182人
4
北海道
371人
4
北海道
146人
5
青森県
224人
5
埼玉県
142人
6
東京都
162人
6
兵庫県
94人
7
長崎県
132人
7
神奈川県
87人
8
山口県
125人
8
愛知県
76人
9
佐賀県
115人
9
茨城県
56人
10
和歌山県
105人
10
長崎県
41人




 地方でがんの死亡率が高い地域もあるが、注目すべきは人口が多い都市部でがん死亡率が高い地域があることだ。大阪府、東京都、福岡県などで、多数の「避けられるかも知れないがん死亡者」が生じていることに注意が必要だ。

まったく死亡率改善が見られない県も
 がん死亡に関する県の成績を見る際に、死亡率のレベルだけでなく、死亡率の改善度合いも重要な指標である。1995年の死亡率(年齢調整済)と2005年の死亡率の間の改善率を計算した。

●男性死亡率改善のベスト5●女性死亡率改善のベスト5
順位
県名
改善率
順位
県名
改善率
1
鳥取県
23.0%
1
山梨県
22.2%
2
大阪府
22.0%
2
島根県
20.6%
3
岡山県
21.6%
3
長崎県
20.4%
4
山形県
21.4%
4
岡山県
19.8%
5
石川県
21.1%
5
岐阜県
19.3%


 過去10年間にがんの死亡率を20%以上改善させた県もあることから、全国で今後10年で20%下げることも荒唐無稽な目標ではないことが理解できる。大阪府は先に見たように死亡率は高いが、改善度も大きい。山形県や岡山県は死亡率が低い上に、改善率は高い。この傾向が続くならば、ますます死亡率が低い模範的な地域になりえる。

 男性、および女性のワースト10は下表のとおり。

●男性の改善率ワースト10●女性の改善率ワースト10
順位
県名
改善率
順位
県名
改善率
1
高知県
7.0%
1
和歌山県
0.0%
2
鹿児島県
10.9%
2
鳥取県
0.8%
3
青森県
12.1%
3
福島県
2.3%
4
島根県
12.3%
4
高知県
2.7%
5
岩手県
12.3%
5
愛媛県
3.0%
6
秋田県
12.3%
6
福井県
3.3%
7
群馬県
12.7%
7
栃木県
4.0%
8
北海道
13.8%
8
茨城県
5.2%
9
新潟県
14.2%
9
岩手県
5.2%
10
山梨県
14.3%
10
山口県
6.2%


 青森県は、男性のがんの死亡率が高い上に、改善率が低い。女性のがんに関して、和歌山県はまったく改善していない。鳥取県も、ほとんど改善していない。和歌山県、鳥取県は女性の死亡率が高い上に、改善が遅れている。このままでは、こうした県はさらに平均水準との間に水をあけられることになる。


秋田県は4割減、大阪府は3500人減が必要
 では最後に、各県の死亡率の水準を考慮した死亡削減目標を掲げておこう。現在の全国平均死亡率の2割下の水準を目標と設置し、各県の死亡率がそこまで下がった際の「死亡率の減少率」と「死亡人数の減少数」を計算した。いま死亡率が高いところは、たくさん減少させる必要がある。なお、この数字は年齢層の構成配分によって調整していないため、精密な計算と1割ぐらいはずれる場合があることをお断りしておく。

 全国平均の2割減のレベルまでに死亡率を下げなければならない率は、下表のとおり。

●男性の改善率ワースト10●女性の改善率ワースト10
順位
県名
必要削減比率
順位
県名
必要削減比率
1
秋田県
38.2%
1
山口県
30.8%
2
青森県
36.6%
2
青森県
30.5%
3
和歌山県
36.0%
3
秋田県
29.5%
4
山口県
35.6%
4
高知県
29.2%
5
島根県
35.1%
5
鳥取県
28.8%
6
高知県
33.8%
6
和歌山県
27.9%
7
長崎県
31.7%
7
北海道
27.5%
8
佐賀県
31.6%
8
佐賀県
26.9%
9
北海道
29.8%
9
岩手県
26.8%
10
大阪府
29.4%
10
山形県
26.1%
こうした県は、がんの死亡率20%削減でなく、3割減、4割減を目標に掲げなければならない。 やはりこうした県では3割減を目標とする必要がある。


 同じことを人数ベースで計算してみた。全国目標レベルの水準まで死亡率を下げるために減らさなければならないがん死亡者数である。

●男性●女性
順位
県名
人数
順位
県名
人数
1
大阪府
2468人
1
東京都
1191人
2
北海道
1543人
2
大阪府
1094人
3
東京都
1442人
3
北海道
793人
4
兵庫県
1378人
4
福岡県
591人
5
福岡県
1169人
5
埼玉県
557人
6
埼玉県
851人
6
神奈川県
556人
7
千葉県
769人
7
兵庫県
542人
8
愛知県
691人
8
愛知県
426人
9
神奈川県
566人
9
千葉県
416人
10
新潟県
565人
10
茨城県
268人

 男女計では次(左下表)のようになる。

●男女計
順位
県名
必要削減人数
1
大阪府
3562人
2
東京都
2633人
3
北海道
2336人
4
兵庫県
1920人
5
福岡県
1760人
6
埼玉県
1408人
7
千葉県
1184人
8
神奈川県
1122人
9
愛知県
1116人
10
新潟県
817人



 こうしてみると、首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)、大阪府、愛知県、兵庫県、福岡県など都市部の動向が、基本計画の目標達成の鍵を握っていることが分かる。人口が多くてがん死亡率が比較的高い県が、しっかりと成果を出すことが欠かせないのだ。こうした県では、特に充実した県がん対策推進計画が作られることが必須だ。

 自分の地域のがん計画の策定状況を確認してみよう。会議の開催状況や、県庁担当者電話連絡先は、国立がんセンターがん情報サービスにある「都道府県がん対策推進計画の策定状況について」の一覧表にある。各県のがん死亡率やがん対策の現状に関する問い合わせや、会議資料の請求にも応じてくれるはずだ。会議の傍聴も原則、可能なはず。県計画の原案ができた時点でパブリック・コメント(住民への意見聴取)の手続きを取る県も多いので、意見を伝える機会が得られるかも知れない。地元のがん対策の策定状況に関心を持ちたいものだ。10年後に、がん死亡率ワースト10に入っているような地域にならないためにも。

(埴岡 健一)

[訂正]12月5日に以下の訂正をしました。
・「女性のがん死亡率ベスト5」の数字が誤っていました。正しい数字に修正しました。


※「がんナビ通信」(週刊:購読無料)を配信中。 購読申込はこちらです。

この記事を友達に伝える印刷用ページ