このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2007/11/27

PSA検診は住民検診から外れる?

PSA検診のあり方を巡って厚労省と泌尿器科学会が対立

 前立腺がん検診として普及している前立腺特異抗原(PSA)検診。そのあり方を巡って、専門家の間で大きな対立が生じている。その対立の意味するところは何だろうか? PSA検診を巡る対立に翻弄されないために知っておくべきことをレポートしたい。



 前立腺がん検診として、国内の7割程度の市町村が実施している前立腺特異抗原(PSA)検診のあり方を巡って、今、専門家の間で大きな対立が生じている。

 厚生労働省の「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」斑が、2007年の夏、前立腺特異抗原(PSA)検診は、『早期診断には有用であるが、死亡率を減少させる効果は証明されていないため、公的な費用で行う住民検診として実施することは勧められない』とするガイドライン案「有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン・ドラフト」を発表したことで、この対立の火ぶたが切られた。

 同ガイドライン案は、現在、住民検診として広く普及したPSA検診の現状を真っ向から否定するもの。研究班によると、正式なガイドラインは今年中にも公開されるという。正式なガイドラインが公開されれば、住民検診からPSA検診は除かれていくだろう。ということは、PSA検診は無意味な検査だったのだろうか?

 同ガイドライン案に猛反発している日本泌尿器科学会は、その最大の理由として、「このガイドラインにより、PSA検診は意味がないという誤解が広がり、検診を受ける国民が減少する」と危惧している。そのため、日本泌尿器科学会は、「50歳以上の男性受診希望者にPSA検診を推奨する」とする学会独自のガイドラインを現在作成中だ。

 しかし実は、今回のガイドライン案では、「PSA検診の有効性自体を否定したわけではない」(同研究斑の大阪府立成人病センター調査部疫学課課長の中山富雄氏)。ガイドライン案では、自費でPSA検診を受けることは否定していないのだ。

 公費を使って自治体主導で行うがん検診では、がんの死亡率減少につながるという科学的根拠がなければならない。しかし、PSA検診には、現在までそのようなエビデンスが確立されていないというのが、研究班の結論なのだ。すなわち、PSA検診は、国が費用を負担するほどまでは、検査の有効性が証明されていないという意味。ただし、早期発見に有効であることは証明されており、前立腺がんを早期に見つけたいと考える個人においては、PSA検診が有用な手段であることに変わりない。

受けたい人が受けられる道筋を早急に作るべき
 例えば、米国最大の患者団体である米国がん協会(ACS)は、50歳以上の男性に対してPSA検診を受けることを勧めているが、PSA検診の意味をよく理解した上で受けるべきであり、かつ10年以上の余命が期待できる場合を条件に付けている。また、65歳前に前立腺がんを診断された家族(父親、兄弟、息子)がいる場合は高リスクとなるため、45歳からPSA検診を受けることを推奨している。

 米国における推奨条件として、10年以上の余命が期待できる場合としているのは、前立腺がんの特殊性による。前立腺がんの多く(特に高齢で発症するもの)は、進行のゆっくりしたがんであり、治療が必要ないものであることが多いためだ。

 例えば、80歳代で死亡した男性を解剖したところ、その約4割が前立腺がんを持っていたにも関わらず、その半数は前立腺がん以外の病気で死亡していたという研究がある。そして、そのような高齢者を対象にPSA検診を行い早期発見できた場合、治療そのものが体に負担となり、治療行為により死期を早める危険性が生じるというマイナス面があるのだ。

 実は、研究班も学会も、「PSA検診の利益と不利益を十分に知った上で個人が受けるかどうかを決めるべき」という点では、意見は一致している。

 しかし、これまでの住民検診で、PSA検診の利益と不利益が十分に説明されてはいなかった。また日本泌尿器科学会もこれまで、PSA検診の利益と不利益を国民に知らせる努力を十分に行っていたとは言い難い。PSA検診を巡る混乱の根底には、検査の意味を専門家がきちんと国民に説明してこなかったという経緯があるのだ。

 今、専門家に求められていることは、がんの治療だけでなく検診においても、その利益と不利益を国民が十分に理解できるよう説明義務を果たすこと。

 そして、住民検診からPSA検診が除かれるとしたら、PSA検診を希望する国民が、今後、どのような形で受診できるのか――その答えを明確に示すべきだろう。今後、高価な人間ドック以外に、PSA検診を受けられる場所を検討し、PSA検診を希望する国民に提示すべきなのだ。

(小板橋 律子、末田 聡美)

※「がんナビ通信」(週刊:購読無料)を配信中。購読申込はこちらです。

この記事を友達に伝える印刷用ページ