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レポート

2007/11/20

痛みから解放されるために

痛みの基本を理解しよう

 がんの痛みのほとんどはコントロール可能と専門家はいう。しかし、痛みに苦しむがん患者は後を絶たないのが現状だ。痛みから解放されるために患者自身が知っておくべきこと、また、できることは何だろう。痛み治療の専門家へのインタビューから、探ってみたい。



 「『痛い』という言葉で表現できる症状というのは、いろいろなものが含まれます。症状に合わせて適切な治療薬を投与しなければ、副作用ばかり出て、効果は期待できないのです」というのは、国立がんセンターがん医療情報サービス室長の的場元弘氏。

 「例えば、倦怠感を痛いと表現し、鎮痛薬を処方してもらっても倦怠感は治りません」と的場氏。すなわち、自分を不快にさせる症状を、適切な表現で医療者に伝えなければ、適切な治療は受けられず、不快感から解放されることもないということだ。

 医療者に伝えるべき症状とは、痛みがある、無いだけではない。どこが、どのようなときに、どのように痛むのかまで伝えなければならない。例えば、下の図1のように、自分の痛みの性質やパターンを伝えることができれば、医療者は適切な薬剤の選択がしやすくなる。


図1

 (的場元弘氏提供、編集部で一部改変)

“痛み止めは早めに使う”が原則
 持続的な痛みは、多くのがん患者が経験する痛みだ。持続痛はがん病変が周辺組織を圧迫して生じると考えられている。この痛みは、適切な量の鎮痛薬でコントロールすることができる。


図2

 (的場元弘氏提供、編集部で一部改変)

 鎮痛薬の利用で注意すべき点は、『痛みは早めに取る』ということ。強い痛みを放置すると、神経細胞が過敏になり、普段であれば何ともないような刺激ですらも、激しい痛みとして感じるようになってしまう(右の図2参照)。

 しかも、神経細胞が過敏な状態になってしまうと、通常量の鎮痛薬では効かなくなる。そうなると通常量以上の投与が必要になり、投与量が増えれば、便秘や吐き気、眠気などの副作用も出やすくなる。鎮痛薬は、早めに使えば少量で効くが、痛みを我慢した後には、大量に必要になる薬であることを覚えておいて欲しい。

 すなわち、痛みを放置することは禁物であり、痛みが出た場合には早めに鎮痛薬を利用することが基本中の基本なのだ。

 的場氏によると、早めに使い始めれば、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬のみでも長期間、痛みのコントロールが可能な場合が多いという。また、モルヒネなどのオピオイドが必要になった際でも、通常量で効果が期待できるため、副作用に悩まされることも少ないのだ。

鎮痛薬が効かないときこそ適切な症状の訴えが重要
 ただし、鎮痛薬の投与を受けても痛みが消えない場合がある。その理由として的場氏は、「2つの可能性がある。1つは鎮痛薬の量が足りない場合、もう1つは鎮痛薬が効かない種類の痛みである場合」と説明する。

 例えば、日中は痛みがないにも関わらず、明け方に痛みが生じるといった場合は、明け方に薬の効果が切れてしまっている可能性が考えられる。このような場合は、薬剤の服用時間の工夫や、効果が長持ちするタイプの薬に変更することで対応できるという。

 一方、神経組織が傷ついて生じる痛み(神経障害性疼痛)では、鎮痛薬だけでは十分な効果は期待できない。この痛みは、脳や脊髄、痛覚神経などの神経組織が傷つけられて生じ、抗うつ薬や抗けいれん薬などの鎮痛補助薬が必要になる。

 「神経障害性の痛みは画像診断のデータでは分かりません。診断には患者さんによる症状の訴えが非常に重要なのです」と的場氏は強調する。

 例えば、神経障害性の痛みの感覚には、正座を長時間した後に感じるピリピリ、ヒリヒリする感覚や、発作的に体のある部位に痛みが走るような場合などがある。

 的場氏によると、「持続的なしびれ感は、脊椎が圧迫されて生じている可能性があり、抗うつ剤を併用することで治療できる。発作的な痛みであれば、神経細胞が傷つきショートしている可能性があり、抗けいれん薬が効果的である」――など症状によって用いられる薬剤の種類は異なってくる。

 特に鎮痛薬が効かないときには、自分の痛みをうまく医療者に伝える必要性がより高まるのだ。痛みを適切に伝えられれば、医療者は適切な薬剤を選ぶことができるが、逆に、適切に伝えられなければ、薬の選択もうまくいかないだろう。症状をうまく伝えるためには、共感が得やすい言葉を選ぶことも重要だろう。例えば、正座の後のピリピリ感なのか、歯医者の麻酔の後のような感覚が麻痺したような不快さなのかなど。

 そして、もう1つ覚えておいて欲しい点は、痛みの治療について日本はまだまだ後進国レベルであるという点だ。痛みを訴え、いかに表現しようとも、医療者からの共感と対応が得られないとき、また、痛みをうまくコントロールしてもらえていないと思ったときは、セカンドオピニオンを受けることを検討して欲しい。痛みにおいても、最善の治療を受けるためにセカンドオピニオンを活用することは、患者の権利として保証されているのだ。

(小板橋 律子)

鎮痛薬の使い方の基本
 がんの痛みには、まず、アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の定期的服用で対応する。この方法で十分に痛みが取れない場合は、弱オピオイド剤(コデイン)を併用し、さらに強い痛みがある場合には強オピオイド剤(モルヒネ)を利用する。


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