このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2007/10/23

全がん協施設、病期別の5年生存率を公表

全がん協施設、病期別の5年生存率を公表

全がん協施設、病期別の5年生存率を公表

データの読み方の習得が課題に


 全国がん(成人病)センター協議会に加盟している施設が、4種類のがんについて進行度(病期)別の5年生存率を公表した。施設別の治療成績は、患者からのニーズが最も高い情報。こうした公表の動きが広がっていくのは歓迎されるだろう。だが、5年生存率の数字をどう解釈して自分の治療選択に結びつけるかは、簡単ではない。今回、公表されたデータを様々な角度から眺めながら、5年生存率データの読み方を勉強しよう。

 このほど、全国がん(成人病)センター協議会(以下、全がん協)が、加盟施設のがん5年生存率などの治療成績を公表した(http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/seizonritu/)。厚生労働省の研究班(主任研究者:群馬県立がんセンター手術部長、猿木信裕氏)がデータを集計、分析したもので、病期別の生存率などの詳しい情報を病院名まで明らかにして公表したのは初めて。公表は予定より1年余り遅れたが、がん病院の診療の実態や治療成績を探るうえで、貴重なデータとなっている。

 公表されたのは胃がん、肺がん、乳がん、大腸がんの4つのがんに関するデータ。1999年に初回の入院治療を受けた患者に関する実績だ。ホームページからは、施設別にそれぞれのがんの成績を病期別に見ることができるが、それを4つのがんの種類ごとに表にとりまとめた。

★肺がんの5年生存率表はここ
★乳がんの5年生存率表はここ
★大腸がんの5年生存率表はここ
各表の出典は、全がん協加盟施設の生存率協同調査

 それぞれの表では、まず、がんの病期別に、症例数と生存率がある。つぎに信頼区間がある。これは、この生存率が、統計学的に95%の確率で信頼区間上と信頼区間下の幅の間に入っているということを意味する。2つの施設の信頼区間の上下幅が重なりあわないとき、その2つの施設の成績に差があるといえる(後にグラフを使って例示)。症例数が少ないほど、その生存率の結果が偶然に左右されている可能性があり、信頼区間の幅は大きくなる。生存率が点でなく、幅で示されるものであることをまず頭に入れておきたい。

 それぞれの表の下の段には、「1期/4期比」がある。これは、1期の症例数が80で4期の症例数が20ならば4.0になる。この値が小さいほど、進行した患者をより多く治療しているという参考指標となる。例えば胃がんの表で、国立がんセンター中央病院では1期症例数が381で4期症例数が31なので、1期/4期比率は12.3。茨城県立中央病院では1期症例数が82で4期症例数が37なので、この比率は2.2となる。扱っている患者がかなり違うことが分かる。

 「手術率」も着目したい点だ。これは、全症例のうち手術をした率である。各施設が、手術を受ける患者を中心に受け入れているのか、手術ができない患者への抗がん剤治療や放射線治療も含めて積極的に実施しているのか、そうした点がうかがえる場合がある。ただし、現在は病期別に手術率のデータが表示されていない。将来、これも公表されるようになれば、さらにこうした側面が詳しく分析できるようになる。例えば肺がんの表で、大阪府立成人病センターの手術率は63.5%、一方、北海道がんセンターのそれは18.8%と大きく異なる。1期/4期比も大阪府立成人病センターが3.0と1期が多いのに対して、北海道がんセンターは1.0と4期の比重が高い。手術率と1期/4期比の二つの項目を合わせて観察すると、病院の治療方針や受け入れスタンスを知る参考になりそうだ。

データの持つ限界にも注意を
 平均年齢や男女比は、治療成績を左右する可能性がある。高齢の患者ほど治療成績が下がるので、高齢の患者の比率が高い病院の成績はその分、補正して考える必要がある。ただし、今回のデータでは病院間で大きな平均年齢差は見られなかった。男女比は、がんの治療成績は女性が男性を上回ることが多いので、確認すべき指標だ。特に、肺がんでは女性の成績が男性をかなり上回るので、考慮に入れる必要がある。なお、「全がん協加盟施設における がん患者生存率公表にあたっての指針」(http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/sisin.html)の付表に、がんの種類ごとの年齢層、男女別の治療成績のデータがある。平均年齢と男女比は、治療成績に影響を及ぼす予後因子として計測されている。ただし、予後因子としてはがん以外の合併症(糖尿病や腎臓病など)の有無や全身状態がもっと大きな要因となる可能性がある。現在のデータはこうした側面が計算に入っていないことを忘れてはならない。

 それぞれの施設が提出したデータの質を表すのが、病期判明率や追跡率だ。病期の分類がなされていない比率が高いということはデータ管理の精度が高くない可能性がある。また病期分類がなされていなければ、病期別の生存率が算定できないし、その病院の全体の生存率も評価しづらくなる。追跡率は重要な項目だ。治療成績を調べるには過去に治療した患者のその後の状況を調べる追跡調査が必要だが、手間がかかる。死亡患者の追跡が比較的困難なので、追跡に力を入れずに追跡率が低くなっている病院ほど、死亡者がカウントされずに生存率が高くなる傾向がある。同研究班が全がん協加盟の調査参加病院に追跡率の向上を働きかけてきたこと、また、今回は追跡率が90%以下の病院は公表から省かれたことから、いずれの施設の追跡率も100%に近い数値となっている。一般に、病院が独自で開示している5年生存率では追跡率が低いこともあるので、特に注意が必要だ。

 今回公表されたデータは貴重なデータだが、上記のような限界や特性があることも十分に考慮して解釈することが大切だ。成績公表に際しては、参加施設から様々なコメントが付けられている。福井県立病院は、「地方と都会の施設ではがん患者さんの背景に大きな差異がある」とした。地方の施設が合併症を持つ治療が難しい症例をより多く診療している可能性を示唆した。呉医療センターは、「標準的な治療を目指して治療を行っているが、疾患によっては、その成績に差異が少なからず認められた。施設での症例にも偏りが存在すると思われ、相対生存率(編集部注:自然死亡率で調整した生存率)にての調整にも限界があることも考えられる。また、データの正確性の確保に対し、より努力を重ねる必要性を感じた」と付言している。

 四国がんセンターは、データ登録システムの不備のために成績が本来より悪くなっている可能性があることを指摘した。一方、宮城県立がんセンターは、自施設のデータに関して「不十分な調査による過大な評価がない精度の高い数値である」とした。神奈川県立がんセンターも、「当施設の成績については、院内登録システムによる集積であり、データの集積性や精度は高い」と、データの信頼性の高さをアピールした。

施設間格差を吟味してみよう
 各表の「全体生存率」や「手術生存率」は、異なる病期の症例がまざったデータなので、個別の患者への参考にはなりにくい。施設選択などの参考にするには、それぞれのがんの種類の病期別にデータを見ることが欠かせない。ただし、これにも(1)病院によって手術、抗がん剤治療、放射線治療などの比率がばらばら(2)患者の合併症の有無などの要因が計算に入っていない――などの限界があることを認識しておく必要がある。

 全がん協の成績公表ウエブサイトに開示された病期別データの定義で、施設別の5年生存率に有意差(信頼区間を超える差)が生じているところは、それほど多くはない。胃がんの3期、肺がんの1期、3期、大腸がんの2期などには有意差が見られる。それぞれをグラフにしてみた。

★胃がん3期のグラフはここ
★肺がん1期のグラフはここ
★肺がん3期のグラフはここ
★大腸がん2期のグラフはここ

 まず、胃がん3期のグラフを見よう。棒グラフが生存率を示す。最高の匿名2の生存率56.3%から栃木県がんセンターの17.6%までが順に並ぶ。棒グラフについている上下の線が信頼区間の幅を示している。この幅が重なっていれば有意差はない。もっとも、ここでの信頼区間は「95%信頼区間」を使っている。これは95%の確率で正解(20回選択をして19回が正解で、1回間違う)という意味の幅。95%信頼区間は、医薬品の臨床試験での2つの治療法の有効性判定など科学的な検証の場面で使われるが、患者の治療選択の観点で妥当な尺度かどうかは異論もあるだろう。80%信頼区間(5回選択をして4回が正解で、1回間違う)でかまわないと考える患者がいれば、上下の信頼区間の幅をもっと狭めて考えることになる。そうすると、病院間の差があるとの判定がもっと増える。

 胃がん3期のグラフで今回集計されたデータにおいて差が出るのは、新潟県立がんセンターと栃木県がんセンターの間においてだ。その他は、かなりの差があるように見えても統計学的には誤差の範囲だ。なお、ここで下から4位になっている呉医療センターは、胃がんの成績全般に関して「高齢者および4期症例が多かった。1、2期の生存率の低下は重篤な合併症を有する症例に多かったことや、他病死にて死亡する症例が高率であったことがその要因の一つと考えられる」とコメントしている。

 肺がん1期のグラフでは、上位の大阪府立成人病センターに比べて、下位の兵庫県立がんセンター、新潟県立がんセンター、北海道がんセンター、栃木県がんセンター、匿名2、宮城県立がんセンター、匿名5の7施設の成績が低い。新潟県立がんセンター、宮城県立がんセンター、匿名5は、神奈川県立がんセンターに比べても低い。肺がん3期のグラフにおいては、生存率が最高だった大阪府立成人病センターに対して、下位4施設の成績が劣る可能性がある。また、生存率が2番目だった栃木県がんセンターに対しても、神奈川県立がんセンターの成績は劣後していた恐れがある。

 肺がんの成績について、北海道がんセンターは、「手術症例が少なく、高齢者、重複癌が多いため、5年生存率が悪かった」と説明している。確かに、肺がんの5年生存率表から、北海道がんセンターの手術率が低いことは確認できる。一方、患者年齢の全体平均に関しては全施設のうち中ぐらいである。宮城県がんセンターは、「今回の集計の対象となった1999年の成績は必ずしも、現在の診療レベルを反映していない可能性もある」としたうえで、2004年以降はさまざまな取り組みを進めているため、「さらなる生存率の向上が期待できる状況にあると考えている」と注釈を付けた。栃木県立がんセンターは、「早期の1、2期にも非手術例が含まれている」と、成績が低めに出る要因について言及。また、99年の成績を再調査したところ成績が上がったとすると同時に、データの不備があったことも認めた。

 大腸がん2期では、山形県立中央病院の生存率95.7%や匿名2の93.1%と四国がんセンターの63.6%の間には32.1%ないし29.5%の差がある。有意差とはならないものの、山形と福井県立病院の差は22.4%、山形と宮城県立がんセンターの間は31.4%ある。

患者には生存率を解釈する力が必要
 今回、全がん協加盟施設が開示した5年生存率データは患者に大きな恩恵をもたらす可能性を秘めている。施設別病期別の病院成績は患者のニーズが最も高いデータ。今回のデータはまだ不十分といっても、患者が病院選びの際に参考になる情報が含まれている。こうしたデータを片手に、治療を受けようとしている病院の成績や治療方針を確認するなど、使い方が工夫できるだろう。

 患者支援団体キャンサーネットジャパンの理事長である吉田和彦氏は、「表面的な数字に捉われると大きな誤解を生む可能性がある。あくまで参考資料と考えるのがいい」と勧める。厚労省研究班の班長である猿木氏は、「ホームページ上に掲載した様々な解説を読んで、こうしたデータの意味をよく理解するように努めてほしい」と語る。

 5年生存率の開示に関しては、地域がん診療連携拠点病院が昨年辺りから本格的に取り組み始めた「院内がん登録」という統一ルールによって、数年後には各施設の5年生存率が計算できるようになる見込みだ。現在は、施設ごとにまちまちな方法でそれぞれの施設のホームページなどで開示されており、データの信頼性が低く、患者にとっても比較ができない状況。今回の全がん協の開示データはベストではないとしても、当面のベターな生存率公表のモデルを示したといえる。猿木氏は、「来年はデータの精度もさらに向上し、対象となるがんの種類も追加でき、開示施設数も増える」と展望する。

 本稿の最後に、がんナビの「がんを生きるガイド」の5年生存率に関する記事から「5年生存率を読み解くための10カ条」を引用しておこう。生存率公表時代に患者がどう向き合えばいいか参考になるだろう。

<5年生存率を読み解くための10カ条>
1.施設別5年生存率を知ろう
2.治療を受ける予定の病院の成績を医師に尋ねよう
3.複数の病院を比較するときには、対象期間などを確認し、できるだけ同じ物差しで比べよう
4.病期(ステージ)で得手不得手がある。自分の病期が得意なところはどこかを見よう
5.追跡率も要注意
6.統計上の誤差も理解して数字を読み取ろう
7.他の医師にも病院の成績や比較の仕方を聞いてみよう
8.他の科との連携など治療成績以外の複数の要素も考慮しよう
9.5年生存率は過去の治療の平均的な結果に過ぎないことを理解しよう
10.納得して病院を選んだ後は生存率を忘れよう

(埴岡 健一)

*注 4種類のがんの5年生存率表について:手術数は、症例数合計に手術率を掛けて求めた。表の各施設の症例数の合計と全体の症例数は一致しない。全体には公表精度に達しなかった施設の症例も加えてあるため。
*注 胃がんの5年生存率表について:大阪府立成人病センターと匿名4に関しては、病期分類の仕方が他と異なるので別扱いとなっている。
*注 肺がんの5年生存率表について:2期は症例数が少ないため表示していない。国立がんセンター中央病院のデータは手術率100%なので別扱いとなっている。
*注 乳がんの5年生存率表について:国立がんセンター中央病院のデータは手術率100%なので別扱いとなっている。
*注 大腸がんの5年生存率表について:大阪府立成人病センターと匿名4に関しては、病期分類の仕方が他と異なるので別扱いとなっている。

〔参考サイト〕
全がん協加盟施設の生存率協同調査
厚生労働省がん研究助成金「地域がん専門診療施設のソフト面の整備拡充に関する研究」班(猿木班)
全がん協加盟施設におけるがん患者生存率公表にあたっての指針

〔訂正〕
10月24日に以下の訂正をしました。
○「胃がん5年生存率表」と「肺がん5年生存率表」の小数点表記が不統一でした。修正しました。
○文章に誤りがあり、修正しました。
【誤】確かに、肺がんの5年生存率表から、北海道がんセンターの手術症例が高いことは確認できる。
【正】確かに、肺がんの5年生存率表から、北海道がんセンターの手術率が低いことは確認できる。
以上、お詫びして訂正いたします。

この記事を友達に伝える印刷用ページ