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2007/9/26

がんサバイバーの本音

「絶対に主人公を死なせない、ウソのない"病気モノ"の映画になりました」

大原まゆ(映画「Mayu-ココロの星-」の原作者)

大原 まゆ
大原 まゆ
21歳で乳がんを発症。その経験を書籍「おっぱいの詩 21歳の私が、どうして乳がんに?」として執筆。その本を原作とした映画「Mayu-ココロの星-」が、9月29日から全国ロードショー

 映画化をOKする条件として、「絶対に生きることを描いてください!」とお願いしました。これまでの"病気モノ"の映画は主人公の死で終わるものが多く、「どうして主人公は死ななきゃ終わらないの?」という疑問があったためです。

 そのため、この映画では主人公は死なず、ドラマチックなことはなにも無い日常的な話になりました。しかし、映画の制作で監督さんを始めとして皆さんが、リアリティーのある作品を作ること、ウソをつかないことを目標にしてくれました。患者の気持ちに寄り添う姿勢をとってくれた。そのため、内容は、患者がたどる過程に忠実すぎるほど忠実です。こうゆう"病気モノ"の映画もあるんだなぁと思ってもらえたらいいですね。

 制作にあたって、押しつけの映画はイヤとはいいました。教育的な映画ではなく、「こうゆう病気があるよ」という投げかけというか、何かのきっかけになるような映画にして欲しかったからです。

 乳がん検診を受けるも受けないも自由、受け止め方も自由だと思うんです。でも、この映画を観た人が、それぞれ自分の置かれた状況で、誰かのことを思ったり、自分のことを改めて考えたり、病気だけでなく、生きることを考えるきっかけになればと。受け取る側次第で、いろいろな二次的なものが生まれるといいなと思っています。

 映画の中にも出てきますが、10年生存率75%などと言われても、どんな形でも、今、生きていれば生存率は100%。死んじゃう可能性はあるけど、そのなかで生きていかなければならない。葛藤あり、悩みあり、気づけることもあり、ありがたいと思えることもあり、これを主人公のMayuが見つけていく映画になりました。

 どんな人に観てもらいたいかというと、自分は原作者ではなく当事者として映画の制作に関わりました。なので、当事者の人からの感想は気になります。自分もそうでしたが、「病気モノって、、、」と思っている当事者の人がどう思ってくれるのか、、、。

 乳がん:知らない=怖い、乳がん検診:知らない=怖いという人に見てもらえたら、そして、怖いけど、でも(検診を)受けてみようかと思ってもらったらいいですね。だから、検診を受ける可能性のある女性と、そのパートナーに見て欲しいです。

 パートナーの理解はとても重要だと思うんです。映画にも出てきましたが、主人公が乳がんになったために、きれいに去っていく男性もいれば、そうゆう子でも守りたいという男性もいる。どちらも特別ではなくて、普通にいると思う。あと、父親の立場、弟の立場でも観られる映画だと思う。

「Mayu-ココロの星-」のワンシーン。Mayu役は女優の平山あや氏が演じた。
「Mayu-ココロの星-」のワンシーン。Mayu役は女優の平山あや氏が演じた。(C)2007「Mayu−ココロの星−」製作委員会

 映画同様、我が家には私が告知を受けたときに、既にがん患者がいました。私の母親が先輩がん患者だったんです。母の病気は生活の一部になっていました。がんになったらどうゆうことが起こるか、どうゆうことを調べなくちゃいけないかなど、勉強したのではなく、環境から身についていました。

 でも、自分が我が家でがん患者一人目だったら、こうはいかなかったでしょうね。先輩がん患者の母がいたから、告知を受けたときに、普通だったら陥る最初の困難を2段階ぐらい飛ばすことができました。

 母は私の病気に対して影で泣いていたかもしれないけど、患者がどうされたら負担に思うか、かわいそうということが本人にとって本当にいいことか分からないことも分かっていた。だから、私に対して普通に接してくれました。

 母自身、自分が凛としていなくてはならない、自分が頑張る!と思っていたと思います。

 母は病院にいるときは治療に専念して、家にいるときは自分に手をかけて、眉も描いて、かかとの高い靴を履いて、買い物に一緒にいきました。毎日、二人で出かけて、カフェでお茶もした。母は、この日常のために、治療を頑張るという感じでメリハリを付けていたようです。

 患者になってみて初めて、そんな母の行動はすごいことに気付きました。患者っていう自分に支配されない母。母が自暴自棄になったところは見たことがない。半端じゃなく、すごいですよ。普通にすること自体とてもたいへんなはずなのに。それを子供に見せない。努力したのだと思います。でも、そんな母親も、患者の家族という立場になって、初めてパパの気持ちが分かったとも言っていました。

 母がいたために、ハードルを高くされたというのはありますね。家族の前で泣けなかった。どうやってもママの方がたいへんと、どこかで思いとどまるんです。かなり鍛え上げられましたね。自分は悪態つくし周りを振り回しもします。まだまだ弱いのかもしれません。

  今の自分を動かしている言葉は先輩乳がん患者さんからの言葉
  「いいことは、しっかり心に刻み込む。悪いことには、慣れる!」

 家族環境、医療者に恵まれたというバックグラウンドがあったけど、最後の一押しをしてくれたのは、先輩乳がん患者さんからもらった言葉「いいことは、しっかり心に刻み込む。悪いことには、慣れる!」でした。この言葉がなかったら、いつ立ち直れたか分からない。この言葉が、今の自分を動かしていると思います。この言葉がなければ、いまの自分もない。この映画もなかったのではと思っています。

 今は、気軽なランチ会をやっています。1人での闘病は寂しい、でも患者会に入った後のイベントが苦手という人もいるんです。私も実を言うと、もともとはそうなんです。そんな人達のためのランチ会です。このランチ会は、病気の縛りもなく、立場の縛りもない、お互いが理解できればそれでいいじゃん、というものです。

 病院を出たら、どの病気でも向き合うことは同じだと思うんです。治療と生活をどう両立するか、治療費をどう工面するかとか。また、社会全体が病気への理解を深めてくれて、治療を終えて社会に戻ろうとしている人達を、ちゃんと迎え入れてくれるようになってほしい。"病気持ち"であることがウィークポイントにならない社会に変わっていってほしいなって思いますよね。

 乳がんに関しては、ピンクリボンキャンペーンなどの大きな啓蒙キャンペーンがあるけど、他のがんや病気ではどうでしょう。乳がんだけがたいへんな訳はないと思う。だから、乳がんじゃなくても、みんな一緒だから、乳がん以外の病気も含めて、みんなで引っ張り合って、将来への不安を分け合ったり、社会に病気を理解してもらうとか、いろいろやれたらいいと思っています。乳がんはピンク、他のがんでもテーマ色がありますから、まとめてレインボーとか名前をつけちゃってもいいかもしれないですね。

(聞き手:小板橋 律子)

「Mayu-ココロの星-」の公式サイト☆北海道先行公開中☆9月29日より新宿バルト9他全国ロードショー

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