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2007/9/11

がんサバイバーの本音

「エビデンスがなくても言っちゃってほしい」

宮崎 ますみ(女優)

宮崎ますみ氏
みやざき ますみ氏
1968年愛知県生まれ。84年クラリオンガールに選ばれ、翌年、映画「Be-Bop High school」に出演。2005年秋、乳がんを発病するも克服。公共広告機構の乳がんの早期発見の啓蒙広告にも出演。

 2005年の10月に乳がんを宣告されました。そのときはハワイに住んでいて、たまたま日本に帰ったときに乳腺の専門のところに行ってみたんです。実は、その2年前くらいに自分でしこりに気づいて、2回検査をしているんですけれども、触診とエコーだけで、マンモグラフィーは撮っていなかった。ドクターからたぶんこれは悪性ではないだろうと言われたので。

 がんが見付かった3度目のときは、マンモグラフィーをやりました。しかし、マンモを見ても、先生は最初は「たぶん大丈夫だろう」と言っていました。「念のために細胞診しておきますか」と聞かれて、「100%すっきりしたいので、お願いします」と頼んだのです。結果は、私が電話して聞く日が決まっていました。ところが、その前の晩に先生から夜遅くに直々に携帯に電話がかかってきた。声のトーンも低いし、何かおかしいなと思ったら、「悪性でした」という報告でした。

 私の場合、このように「絶対、大丈夫」という気持ちで受けた細胞診で、がんだと分かったんです。でも、そのとき見過ごしていたら、さらに腫瘍は大きくなったのかなと思うと、ぞっとしますよね。

 がんの宣告は、冷静に受け止められました。その2年ぐらいの間に身内や友達でがんで亡くなった人が結構いたので、がんというものに対する“心の免疫”があったのだと思います。短い期間に凝縮して、人の生き死にというものを見せられたので、自分にそういうものが与えられたときの心構えが何となくできていたんでしょうね。

 がんになるというのは、もちろんすごくショッキングな出来事だし、大変な病気ではあるけれども、それによってその人たちがまた「生きる」というか、再生していくことでもある。人生全体を見たときに、一つの大きなターニングポイントになる。私自身、ちょうど日本に帰国して仕事に復帰しようと思っていたときだったので、そういう意味では、大きなリセットを与えられたかなというふうに考えたのです。

 聖路加国際病院で治療したのですが、先生方の対応には大変満足しています。私の場合、腫瘍は1.5cmくらいで非浸潤性だったので、乳房温存法で手術した後に放射線治療を行うのが標準治療だと説明を受けました。決して押し付けず、「もしうちで手術をするのならば、早めに予約した方がいい」と言われたので、取りあえず予約を入れました。そうしたら、先生の方から「セカンドオピニオン、どうされますか」とおっしゃってくださって、がんセンターぐらいしか思い浮かばなかったので、がんセンターへ行ってみて意見を伺いました。がんセンターの先生が太鼓判を押してくれたので、安心して手術を受けられました。

 手術は問題なかったのですが、その後のホルモン治療には参りました。抗がん剤ほど副作用がないと聞いていたのですが、どんどん体が壊れていくという感覚でした。首と肩の凝りががっときて、疲れが激しくなって衰弱して、本当に病院に行くのがやっとという状態。母親ですから、家族の料理を作るんですが、キッチンに1時間も立っていられない。これを、5年続ける必要があるというので、つらかった。

 先生に相談すると、きちんと再発リスクについて説明してくれました。私のがんのタイプと大きさからすると、60%の人は無治療でも10年間再発しない。ホルモン治療すると再発しない確率が70%に増える、と。それを聞いて「たかが10%のために、私はこんな苦しい治療を5年間続けるの」と思いました。

「がんの宣告は、冷静に受け止められました。がんというものに対する“心の免疫”があったのだと思います」という宮崎さん
「がんの宣告は、冷静に受け止められました。がんというものに対する“心の免疫”があったのだと思います」という宮崎さん

 そのとき、ひょっとしたら来年再発するかもしれないけど、自分らしく生きようと決断しました。ただ長く生きるということにフォーカスするのではなく、今すべきことをしっかりやって生きていこうと決めたのです。

 だから、ホルモン治療は8カ月でやめてしまいました。今は西洋医学的には無治療の状態ですね。

 私は、理想的な医師と患者の関係は、結局、生身の人間同士の関係になれることではないかと思っています。役者という職業柄、そう考えるのかもしれないですが、人間というのは、人生の中である役柄を演じている部分がある。私は、今、女優としてここにいる。先生方も医師という役柄を演じている。その役柄を演じながらも、自分の内側の顔みたいなものを見せてくださると、心がほぐれ、信頼関係が生まれる。

 例えば、私が最初出会った先生は私より年下の若い女医さんでした。初めて診察したときは、「えー、アメリカで暮らしているんですか」みたいな感じで、病気の話は全然しなかった。「いいですね、私も、家庭、持ちたいなぁ」なんて、先生がフレンドリーにしゃべっている。私もそれに乗っかって、くだらない話をして…。私自身が皆さんに対してそうしたいと思っているのですが、医師が対人間として患者に接してくれるのが、患者にとっては一番ではないかと思います。

 「医師の言葉に傷つけられた」といった話もよく聞きますが、そういう人は医師に対する期待が大き過ぎるのだと思います。「とにかく、お願いします」という受け身の状態を自分から作っているところがある。そうではなく、お互いそれぞれの役割を持って生きているという視点が、患者にも必要だと思います。

 それと、西洋医学の先生と話していていると、エビデンスがないことは言わないように、言わないようしているな、と感じます。確かにデータ的な裏づけがないことを軽々しく言っちゃいけないというのは分かります。しかし、この前、先生が初めて「あなたは大丈夫だよ」と言ってくれたんです。「そんなエビデンスがないこと言っていいの?」と思いながら、その言葉一つがどれほど勇気になったか。それがハートから来ていた言葉だったから、ものすごく楽になった、楽にしていただいた。

 だから、言ってほしいんですよね、患者としては。エビデンスなくても言っちゃってほしいんですよね。

(聞き手:日経メディカル オンライン 風間 浩)

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