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2007/8/28

未承認薬へのアクセスに第3の道、人道的供給が日本でも制度化へ

 国内未承認の薬剤を利用する方法としては、これまで日本では治験への参加、医師による個人輸入の2つの方法しかなかった。そんな日本において、とうとう治験でも個人輸入でもない、第3の道が制度化されることとなった。ただし、詳細な内容が決まっていない現状では朗報とは言い切れない点が要注意だ。




 ソラフェニブ(商品名「NEXAVAR」)1本(200mg)5700米ドル、エルロチニブ(商品名「Tarceva」)1本(150mg)2950米ドル、セツキシマブ(商品名「Erbitux」)1本(100mg)480米ドル――。これは、未承認薬の輸入代行を行っている企業の取り扱い商品リストだ。薬剤の価格は、手数料を含めて欧米の卸売り値の1.3倍となっているという。

 この高額な薬剤費を負担し続けられる患者がどれだけいるのか――。医師による個人輸入に頼って未承認薬を利用する患者は増えてきているとはいえ、経済的な問題から断念している患者数の方が多いことは間違いないだろう。また、患者の要望を受けて個人輸入するかどうかは医師の考え方や医療機関の方針によるため、個人輸入に協力する医師や医療機関は今でも限定されているのが現状だ。

 欧米に比べて新薬の承認に時間がかかる日本では、欧米で高い評価が得られた医薬品へのアクセスが難しいことが問題となっている。この現状を変えるため、厚生労働省では承認プロセスを見直し、画期的な薬剤は迅速に承認する方針を示してはいるが、抜本的な解決には至っていない。そのようななか、未承認薬にアクセスするための新しい道が開かれることとなった。

厚労省の検討会がコンパッショネート・ユースの制度化を求める報告書 7月27日、厚生労働省の検討会「厚生労働省の有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」が、未承認薬のコンパッショネート・ユース(CU)を制度化すべきという方針を盛り込んだ報告書をとりまとめたのだ。

 CUとは人道的供給もしくは倫理供給などといわれるもので、重篤な疾患で代替治療薬がない場合などのやむを得ない場合に、未承認薬を患者が利用できるとする制度だ。米国では、がん治療薬分野でのCU利用が多く、既に1万人以上がこの制度を利用して未承認薬の供給を受けているという。

 実は、日本でも、海外の制度に従ったプログラムという形で、未承認薬の供給は不可能ではなく、行われている。その代表的なものとして、非小細胞肺がんの治療に利用されている分子標的薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)がある。イレッサが、全世界で未承認の時期に、海外のCU制度に参加する形で、国内で200人弱の患者がイレッサの投与を受けたことがあるのだ。このとき、イレッサは無料でアストラゼネカから供給された。

 そのため、日本にCU制度が無い現時点でも、薬剤の投与を切望する患者に対する製薬企業の善意(社会的責任)としてCUを行うことは可能であり、実績もあるのだ。

 しかし、国としてCU制度が無い状態では、社会的責任としてCUを行うかどうかは製薬企業の考え方次第。多くの製薬企業は、問題が生じたときの悪評や、その薬剤の承認申請に悪影響が生じることなどを恐れて、CUを行うことに二の足を踏んでいるのが現状だ。加えて、CU制度は欧米にしかない制度であるため、日本でもCUとして未承認薬を供給できることを知らない製薬企業担当者も少なくない。

 そのため、日本にもCU制度が確立し定着すれば、患者は未承認薬にアクセスしやすくなる可能性がでてくる。品質が担保された薬剤の供給を迅速に受けることも可能になるだろう。ただし、ここで注意が必要なのは、CU制度の中身次第では、CU制度ができたとしても、結局、未承認薬をほとんど利用できないことにもなりかねない点だ。

日本版コンパッショネート・ユース制度、その内容は?
 今回の報告書では、さらなる検討が必要としながらも、CU制度が利用できるのは、「重篤な疾病を対象とするもので他に代替治療法がなく、また、その治験の第III相試験(フェーズ3臨床試験)の対象外、もしくは、治験が終了してから承認までの間」と、限定的な範囲となっている。これでは国内で臨床試験が行われていない薬剤では、CUによる供給は不可能だ。

 また、気になるコストであるが、同報告書では「治療に係る費用負担を製薬企業に求めることは適当でないと考えられる」となっている。この一文のみでは、患者がどれほどの費用を負担することになるかは未定ではあるものの、もしも、欧米の販売価格と同じ値段を患者が負担するということになれば、個人輸入した場合とさほど変わらない薬剤費を負担する必要が出てくる。

 加えて、CU制度下で受けた薬剤による副作用などの被害は、「副作用被害救済制度などの対象外とせざるを得ない」と報告書には書かれており、これも個人輸入した場合と同じ。

 厚生労働省の担当者は、「今回の報告書は『CU制度を導入しましょう』というところまで。今後、海外の状況などを調査した上で、詳しい内容は検討する」と、具体的な内容は白紙に近い状態であるとしている。今後、日本のCU制度が、未承認薬の利用がどうしても必要な患者にとって本当に人道的・倫理的な制度となるよう、しっかり見守っていく必要がありそうだ。

(小板橋 律子)

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