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レポート

2007/6/12

ついに日本でも販売開始

カプセル内視鏡の実力は?

 朝9時20分。日本医大病院の病室で、ピカピカ点滅するビタミン剤のようなカプセルをしげしげと見つめるAさん。コップ一杯の水で一気に飲み込む。「カプセルが早く下に落ちるように、しばらく歩き回った方がいいですよ。夕方には検査は終わるのでそれまで自由に過ごしていてください」。同大消化器内科助教の藤森俊二氏はこう説明した。Aさんは以前から血便と鉄欠乏性貧血があった。他院で胃と大腸の内視鏡検査を行ったものの出血源が見付からず、小腸からの出血が疑われていた。




検査の対象は原因不明の消化管出血

カプセル内視鏡は長さ26mm×径11mmで、重さ3.45g
●写真1:カプセル内視鏡は長さ26mm×径11mmで、重さ3.45g

 医師が操作しなくても、患者が飲み込むだけで自然に消化管内を進み、小腸全域の様子を映してくれるカプセル内視鏡(写真1)が5月30日、日本でも発売された。

 従来の内視鏡のイメージを大きく覆すこの検査の対象となるのは「原因不明の消化管出血」。Aさんのように下血、血便、鉄欠乏性貧血などの出血の証拠があるものの、胃と大腸の消化管内視鏡検査を行っても出血源が見付からない場合、カプセル内視鏡で小腸を探索することになる。

 今まで、内視鏡では小腸全域を直接見ることは難しく、「小腸が疑わしいとなっても原因は迷宮入りで『原因不明の出血』とされていた。カプセル内視鏡によって出血源の診断が付くケースが非常に多くなってきた」。2004年から約200件のカプセル内視鏡検査を行っているNTT東日本関東病院消化器内科部長の松橋信行氏はこう話す。

 検査はいたって簡単だ。検査を受ける人は8〜12時間前から絶食するだけで、麻酔や造影剤は必要ない。カプセルを飲んで4時間後には食事もとれる。小型カメラを内蔵したカプセル内視鏡は、1秒間に2枚ずつ写真を撮りながら腸の蠕動運動に合わせて消化管内を進み、最後は便と一緒に排出される。もちろん使い捨てだが、排出されたカプセルを回収するキットも付属する予定だ。撮影できるのは8時間程度で、その間に自然な状態の小腸全域を観察できるとされている。

 ただし、カプセル内視鏡は観察しかできないため、病変を発見してその後詳しい検査や治療が必要な場合には、同じく小腸を直接見ることのできるダブルバルーン内視鏡やシングルバルーン内視鏡という検査が必要になる。これらも最近開発された内視鏡で、大腸の内視鏡と同じような形をしており、口と肛門どちらからでも挿入可能で治療も行える。 ダブルバルーンやシングルバルーン内視鏡も、口と肛門の両方向から検査を行うことで小腸全域が観察できるが、検査が長時間にわたるなど患者への負担が非常に大きいため、通常は病変の場所がある程度確定した段階で検査を行う。

 なお、カプセル内視鏡は、腸管の狭窄などがあるとそこに引っかかるリスクもある。その場合はダブルバルーン内視鏡などで回収することになる。

価格は1個10万円

カプセル内視鏡で見つかった小腸ポリープ
●写真2:カプセル内視鏡で見つかった小腸ポリープ(獨協医大光学医療センター内視鏡部門長・准教授の中村哲也氏による)

 では、カプセル内視鏡で小腸のどのような病変が見付かるのだろうか。カプセル内視鏡研究会が2004年から行った多施設共同研究(9施設)では、原因不明の消化管出血患者135人のうち、カプセル内視鏡の所見またはその後の検査で確定診断が付いたのは70人。潰瘍やびらんが最も多く(34%)、その他にAngiodysplasia(血管異形成)やクローン病、小腸ポリープ(写真2)、小腸がんなどの腫瘍性病変などが見付かっている。「小腸がんはカプセル内視鏡によって少しずつ見付かってきているが頻度は少なく、大腸癌に比べると頻度は1〜2%といわれている」(藤森氏)。

 カプセル内視鏡は01年に欧米で発売されて以来、約60カ国で50万件以上の検査が行われており、「米国ではクリニックにまで普及している州もある」(製造・輸入しているギブン・イメージングによる)。

 だが、日本において日常診療で行うにはまだハードルは高い。カプセル内視鏡の販売価格は1個10万円(定価、税別)。胃や大腸の内視鏡検査が他国よりも低い価格で受けられ、がんのスクリーニング検査としての普及も進んでいる日本においては、カプセル内視鏡には割高感がある。ギブン・イメージングは、現在厚生労働省に保険適用申請中だが、保険適用になるまでは保険外併用療養費制度の対象となるため、カプセルの実費を患者から徴収するケースが増えることが予想される。

 最後に付け加えると、今回承認されたカプセル内視鏡はあくまで小腸観察用であり、がんの診断における従来の内視鏡検査の重要性は変わらないと言える。

(末田 聡美)




カプセル内視鏡検査のしくみ
 カプセル内視鏡は1秒間に2回静止画を撮りながら蠕動に合わせて消化管内を進み、8時間で約5万5000枚の画像を撮影する。これらの画像を患者の腹部に貼り付けたセンサアレイが受信し、カプセルの位置情報とともにデータレコーダに記録する(写真下)。記録した画像はワークステーションにダウンロードしてから読影する。ちなみにデータレコーダは1セット140万円、ワークステーションは503万円。

●写真下:腹部にセンサアレイを貼り、データレコーダをセットしたベルトを装着する

腹部にセンサアレイを貼り、データレコーダをセットしたベルトを装着する

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