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レポート

2007/4/24

治療を受ける患者は増えているが……

放射線治療の地域間格差は約2倍

 2005年に新しく放射線治療を受けたがん患者数は約16万2000人との推定値が報告された。2003年の新規放射線治療患者数に比べて、2年間で1万人以上増加したことになる。また、継続して放射線治療を受けている患者も含めると、2005年には約19万8000人が放射線治療を受けていたと推定された。

 これは、「日本放射線腫瘍学会(JASTRO)2005年定期構造調査」として、大阪大学大学院医学系研究科医用物理工学講座教授の手島昭樹氏が、全国で放射線治療を行っている医療施設を対象に調査した結果だ。

 手島氏らは、全国の医療機関を対象にアンケート調査を行い、国内で2005年に放射線治療を行ったと推測される735施設のうち、712施設(96.9%)からの回答を得て今回の推定値をまとめた。結果はJASTROのWebサイトに掲載されている。

 原発巣別の新規患者数は、乳がんが最も多い3万261人(全体の19.6%)であり、肺がん2万5392人(全体の16.4%)、頭頸部腫瘍(甲状腺腫瘍も含む)1万6373人、前立腺がん1万3218人(全体の8.6%)が後に続いていた。

都道府県別で患者の割合に約2倍の差

都道
府県
推定率(※1)
認定医数(※2)
認定医数上位10(○)、下位10(▲)
東京
32.6
4.9
北海道
28.4
4.4
鳥取
27.7
1.6
石川
27.4
2.6
 
広島
27.4
6.3
宮城
26.9
2.5
 
群馬
26.8
8.4
栃木
26.2
2.5
 
静岡
25.7
2.6
 
福岡
24.9
3.4
 
兵庫
24.7
3.9
 
奈良
24.6
5.6
大阪
23.4
3.3
 
神奈川
23.1
3.6
 
宮崎
22.9
1.7
秋田
22.4
1.7
富山
22.4
3.6
 
徳島
21.9
2.5
 
大分
21.7
1.7
和歌山
21.5
3.9
 
新潟
21.5
2.5
 
熊本
21.3
2.2
 
千葉
21.2
4.0
 
岡山
21.1
4.1
山梨
21
3.4
 
愛媛
20.9
3.4
 
島根
20.8
2.7
 
愛知
20.8
3.8
 
長崎
20.7
2.7
 
京都
20.6
4.2
高知
20.5
3.8
 
山口
20.3
2.7
 
福井
19.9
4.9
岩手
19.7
1.4
山形
19.4
1.6
長野
19.4
2.3
 
岐阜
19.3
1.4
香川
19
6.9
佐賀
18.6
1.2
鹿児島
18.6
1.7
 
三重
17.8
2.7
 
青森
17.8
4.2
沖縄
17.8
1.5
滋賀
17.7
2.2
 
福島
17.4
1.0
茨城
17.3
2.0
 
埼玉
15.5
2.1
 
※1根本氏の試算データより
※2 JASTRO2005年定期構造調査解析結果を元に編集部が人口100万人当たりの日本放射線腫瘍学会認定医数を計算

 放射線治療は、頭頸部腫瘍や前立腺がんなどでは高い治療成績が得られており、体の器官を失いたくないという思いで希望する患者は少なくない。また、乳がんや肺がんでは、手術後の再発予防や再発治療に欠かせない。高齢者や心臓病の患者など、手術ができない患者には、手術の代わりとして行われている。

 しかし、「同じ日本国内でも、地域により放射線治療を受けている患者に大きなばらつきが存在していることが明らかになった。がん治療均てん化のためにも、この地域間格差は改善する必要がある」というのは、山形大学医学部がん臨床センターセンター長の根本健二氏。

 根本氏は、手島氏による「日本放射線腫瘍学会(JASTRO)2005年定期構造調査」の結果を元に、都道府県別に放射線治療を受けているがん患者の割合を試算(※)。その結果、放射線治療を受けているがん患者の割合は、都道府県により約2倍の差があることを明らかにした(右表参照)。

 これまでも、日本放射線腫瘍学会の認定医数に大きな地域間格差があることは知られていたが、実際に放射線治療を受けた患者の割合に地域間格差があることが示されたのは、今回が初めて。

 根本氏の試算によると、日本放射線腫瘍学会の認定医数が多い都道府県ほど、放射線治療を受ける患者の割合が高い傾向が示された。ただし、認定医数が多くても放射線治療を受ける患者の割合が低い都道府県(香川県、青森県など)も存在していること。また逆に、認定医が少なくても、放射線治療を受ける患者の割合が高い都道府県(鳥取県、宮崎県など)も存在することが明らかになった。

 例えば、放射線治療を受けている患者の割合では第3位に入った鳥取県には、認定医は1人しかいなかった。また、宮崎県、秋田県、大分県にも、それぞれ2人の認定医しか存在しなかった(2005年調査当時)。これらの県では、認定医以外による放射線治療の件数が多かった可能性がある。

 今回の調査では、治療成績は調査対象に入っていない。そのため、都道府県別で治療成績や有害事象の発生率に差があるかどうかは分からない。今後、認定医に比して治療件数が多い場合に、治療成績や有害事象と相関があるかは調査すべき課題といえるだろう。

 放射線治療を受ける患者の割合は、欧米では5割から6割程度といわれている。日本で最も放射線治療を受ける患者の割合が高い東京都でも、その数字は32.6%止まり。全国的に放射線治療の件数を増やすことは日本のがん治療の課題といわれて久しいが、同時に地域間格差の解消、実際に行われている治療の質も考える必要がありそうだ。

(小板橋 律子)

※根本氏による放射線治療を受けた患者の割合の試算は、都道府県別の放射線治療患者数と、都道府県別のがん罹患者数を元に算出されている。都道府県別のがん罹患者数は、がん登録が存在する都道府県では、実際の患者数を、がん登録が存在しない都道府県では推計のがん罹患者数を用いている。

〔参考サイト〕
最新の日本放射線腫瘍学会認定医の名簿は日本放射線腫瘍学会のWebサイトに掲載されている。

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