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レポート

2007/3/27

国立がんセンター、患者相談員の研修実施

「悩みを解決できる相談員」は、患者が育てる

 がん拠点病院(都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院)に、がんに関することなら誰でも電話や窓口で相談ができる「相談支援センター」(以下、相談センター)の設置が指示されてから約1年が経過した。しかし、もともと相談機能が充実していたごく一部の施設を除き、患者や家族のニーズにどう応えるかを試行錯誤している段階の相談センターがほとんどだ。
 そうした相談センターのレベルアップを図るため、相談支援センター相談員講習会が、3月21日、東京築地の国立がんセンターで開かれた。参加したのは、全国286カ所のがん拠点病院のうち106施設の担当者で、がん相談の現場で抱えている悩みなどを話し合った。




●がん相談の原則と基本方針10カ条
1
クライアント(患者、家族、患者会、地域)にとって良い治療へのアクセスを保護、促進する
2
担当医との関係を改善、強化する
3
クライアントの情報の整理を助ける
4
行動に結びつく決定を促す
5
面談、電話、電子メールなどの各相談スタイルの特性と限界を認識する
6
クライアントの情緒的なサポートを行う
7
クライアントを他部門や他機関に依頼する際に、その依頼を円滑にする
8
組織としての相談窓口を保護し、改善する
9
継続的なアクセスを保障する
10
データを蓄積・分析しながら、相談業務の改善に役立てる

 同講習会では、最初に、国立がんセンター中央病院相談支援センターのソーシャルワーカー、大松重宏氏が、「相談支援センターの原則と実際」をテーマに講演した。大松氏は、「がん相談の原則と基本方針」(右表)を示し、患者・家族あるいは病院にとって望ましい相談の乗り方について、例を挙げながら説明。「相談支援センターは、国民のニーズから出てきた制度だ。各相談支援センターは、地域の患者さんや家族のニーズを拾いながら、うまく使ってもらえるようなシステムを作る必要がある」と強調した。

 次に、がんの患者や家族を対象にした相談を行っている日本対がん協会・相談ホットラインの柳澤ハシヱ氏(看護師)、東大和病院・相談支援センターの加藤麻樹子氏(看護師)、がんの子供を守る会の樋口明子氏(ソーシャルワーカー)の三氏が、それぞれの相談機関の紹介を行うとともに、現場で抱えている課題を提示した。

 昨年6月に、1人でがん相談支援センターを立ち上げた東大和病院の加藤氏は、「月平均で18.6件の相談があった。内容としては、化学療法の際の経済的負担の心配、再発・転移への不安、代替療法に関する相談が目立った。総じて、疑問を解決したいというより“話を聞いて欲しい”と感じている患者さんが多い」と話した。

グループに分かれて現状や悩みを話し合った
グループに分かれて現状や悩みを話し合った

 そうした現状報告を踏まえて、後半には地域ごとに16のグループに分かれ、2時間に渡る討議が展開された(写真)。多くのグループで、実際の相談業務を担当している看護師やソーシャルワーカーが、「在宅療養を支援してくれる地域の診療所、自分の病院ではみていないがんの治療をやっている病院など、患者さんが求めている情報をどう収集したらよいのか分からない」「相談支援センターのことをどう広報したらよいだろうか」「医師への相談と思われる医療相談をどこまで相談支援センターで受けるか、どの段階でセカンドオピニオン外来に引き継ぐがかの線引きが難しい」――などといった相談現場での悩みが吐露されていた。

 なかには、通常の看護業務などとの兼任で仕事量が増えたために、バーンアウト(燃え尽き)寸前の人もいた。また、勤務するがん拠点病院の中でいまだに相談員の仕事が十分に認知されていないことから、「研修を受けた相談員には認定証が欲しい。そうすれば、病院の中で遠慮することなく研修会にも参加できる」といった声もあった。

 相談センターの大きな役割の一つに、「地域の医療機関や医療従事者の紹介」があるが、現段階では、その情報をどうやって集めたり提供したりするのか困っている病院も多い。このグループ討議をきっかけに、同じ県、あるいは同じ地方の拠点病院の担当者が、地域の医療機関の情報収集のために、まずは、近隣のがん拠点病院同士でネットワークを構築する動きが進んだ点は評価できる。

 しかし、残念なことは、相談スキルを上げるために肝心な実戦的研修は行われず、単に、それぞれが抱える悩みや課題を分かち合う場で終わってしまったことだ。各施設が抱える問題点へのアドバイスや提案といったものもほとんどなく、講習会を企画した側も試行錯誤している姿が目立った。また、定員が100人(施設)に限られていたため、研修を受けたくても受けられなかった拠点病院もあった。

グループ討議での話し合い内容を発表する受講者
グループ討議での話し合い内容を発表する受講者

 大松氏も指摘したように、相談センターは、“がん難民”を減らし、日本中どこにいてもその時点で最良の医療を受けるために、本当に患者や家族が欲しい情報を得たいという患者の声から生まれた制度だ。がん拠点病院にかかっている患者に限らず、広く地域住民のがん相談を引き受ける窓口として機能を充実させるために、2006年度は1施設700万円(都道府県拠点病院は1200万円)の公的な補助金がつぎこまれている。ところが、各相談センターを支援すべき国や地方自治体による取り組みは遅々としており、相談の質向上に直接役立つ実戦的な研修は、まだ一度も行われていない。このままでは、もともと相談機能の充実に力を入れていた一部の病院とそれ以外のところでは、相談センターの質の格差が開く一方だ。

 現状では、近くのがん拠点病院の相談センターに電話一本かければ欲しい情報が得られるようになっていくために、患者や家族が、どういった情報を求めているのか、どうサポートしてほしいのか、声を出していくしかないのかも知れない。患者は自分のことで精一杯なのは当然のことで、電話をかけるだけでも気が引けるという人も多いとは思うが、悩みを解決するために少し勇気を出して、どんどん相談センターを活用してみよう。日本全国286カ所の相談センターがあると考えれば、近所の拠点病院に電話をして、必要な情報が得られなかったとしても落ち込まずに、別のところにかけ直せばよいわけだ。

 実際には、相談センターの機能を持つ窓口の名称は、病院によってさまざまだ。国立がんセンターの運営するがん情報サービスの「相談支援センターについて」のページから、自分の住んでいる県あるいは地方の項をクリックすれば、各病院の相談部署名と電話番号、対応時間などを見ることができる。相談窓口の場所が分かりにくい、相談員に話しかけにくい、欲しい情報が得られなかったなど、利用しにくい面は、病院側に改善を求めていくとよいだろう。

(福島 安紀)

〔参考サイト〕
平成18年度第1回相談支援センター相談員講習会(2006年9月20日開催分)
国立がんセンターがん対策情報センター「がん情報サービス」「相談支援センターについて」
日本対がん協会・がん相談


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