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レポート

2006/12/18

超音波でしこりの硬さを画像化

エラストグラフィで乳がん検診の精度向上

 乳腺が発達している40歳以下の女性には、マンモグラフィは適さない。超音波検査が向いているといわれているが、画像読影が難しく、正確な読影は医師や技師の経験に頼る部分が大きい。この欠点を補うのがエラストグラフィだ。



 エラストグラフィ(Ultra Sound Elastography:超音波組織弾性映像法)とは、組織の硬さをリアルタイムで画像化する技術。良性病変に比べてがん組織が"より硬い"ことを利用してがんを検出する(写真1)。エラストグラフィを使用することで、超音波による乳がん検診の精度が大幅に向上することが、臨床研究により実証され始めた。

エラストグラフィでは硬さが色で表される(柔らかいと赤、硬いほど青)。ゆがんだ青色の円として浮き彫りになっている粘液がん(左)と、通常の超音波像(右)

写真1 エラストグラフィでは硬さが色で表される(柔らかいと赤、硬いほど青)。ゆがんだ青色の円として浮き彫りになっている粘液がん(左)と、通常の超音波像(右)

 日立総合病院外科の伊藤吾子氏は、エラストグラフィを導入した乳がんの超音波検診により、要精査率が大幅に減少する研究成果を、乳癌検診学会で11月18日に発表した。臨床データに基づいたエラストグラフィの評価は、これが初めてのもの。

 乳がんでは、早期発見、早期治療が死亡率を下げることが証明されており、検診はとても重要だ。乳がん検診といえばマンモグラフィが有名だが、マンモグラフィは乳腺が発達している40歳以下の女性には適さない。そのため、この年齢層には超音波検査が向いているといわれている。ただし、超音波検査での画像読影は難しく、正確な読影は医師や技師の経験に頼る部分が大きい。そのためか、超音波を用いた乳がん検診では、要精査(精密検査が必要)率が高いという傾向がある。すなわち、乳がんではないのに、乳がんを疑われる擬陽性の多さが問題となっているのだ。

 改良の余地が大きい超音波を用いた乳がん検診。この精度向上の大役を担って登場したのがエラストグラフィだ。エラストグラフィの装置(下:写真2)は日立メディコが、筑波大学電子・情報工学系教授の椎名毅氏と同大学臨床医学系助教授の植野映氏との共同研究で実用化した。2003年末から販売されており、これまで国内で約200台、欧州を中心とした海外で200台が納入されている。エラストグラフィの装置は、日立製の超音波装置に追加可能なユニットからなっている。

 「これまでもエラストグラフィを導入することで、要精査率を減らせるという手応えを各医療機関は感じていたようだ」と、日立メディコ超音波マーケティング本部総括部長の元木満氏はいう。ただし、エラストグラフィの導入が実際にどのような意味を持つかという、科学的なデータは取られていなかった。

エラストグラフィ導入で要精査率が半減、がん発見率は向上

エラストグラフィ装置。日立製の超音波装置に追加することで、エラストグラフィが可能になる

写真2 エラストグラフィ装置。日立製の超音波装置に追加することで、エラストグラフィが可能になる

 今回の発表は、日立総合病院の日立総合検診センターにおいて、2006年2月から10月までにエラストグラフィによる乳がん検診を受けた1850人を対象に、エラストグラフィ導入による要精査率を解析したものだ。

 その結果、導入前では3.59パーセントであった要精査率は、導入により1.51パーセントまで減少していることが明らかになった。分かりやすくするために検査を受けた人数を1000人とすると、通常の超音波検査では36人が要精査、エラストグラフィ導入で15人となる。エラストグラフィ導入により、21人があらぬ疑いを免れたという訳だ。

 擬陽性の減少とともに乳がん発見率も減ってしまえば意味がないが、導入後の乳がん発見率は0.38パーセントとなり、導入前の乳がん発見率の0.20パーセントを上回っていた。すなわち、エラストグラフィ導入により、擬陽性を下げ、かつ、これまで見逃していた乳がんを発見できる可能性が見えてきたのだ。

 ただし、今回の解析には、検査対象者が少ないという弱点がある。検査対象者数を増やしても要検査率、乳がん発見率で同様な結果が得られるかどうか、研究は続行中だ。今後、要精査率が低下し、乳がん発見率が逆に高まるという科学的なエビデンスの蓄積が進めば、エラストグラフィの普及が進むと考えられる。

海外でもエラストグラフィの評価が始まる
 日本の企業と日本人研究者が実用化させたエラストグラフィだが、この技術は、国際的にも注目を集めている。「他の医療機器メーカーも追随のため、研究開発を進めているようだ」と元木氏。

 今年11月27日に開催された北米放射線学会(RSNA)で、米Northeastern Ohio大学医学部の研究グループは、エラストグラフィによるがん組織の検出に関する研究を発表した。この研究では日立メディコのエラストグラフィは用いられていないが、同様の技術が利用されているようだ。

 研究では、99人の患者を対象に、生検が予定されている166の病変部位を、エラストグラフィと通常の超音波で検査した。生検は、80人の患者の123病変で行われた。生検の結果から、エラストグラフィは17のがん病変を検出し、106中105の良性病変を検出できたという。

 研究の代表者であるRichard G. Barr氏は、「エラストグラフィの導入により、無駄な生検を減らし、かつ病変が良性の場合、良性である確信を増すことが可能になる」と語っている。

 日本人では、30代後半から乳がん患者が急増する。40歳以下の若い女性において乳がんの早期発見をどう進めるか。自己検診の重要性は言及するまでもないが、新しい検査技術がその有効性を示すエビデンスを蓄積しつつあることを知っていて損はないだろう。

(小板橋 律子)

〔参考サイト〕
エラストグラフィ導入施設一覧(日立メディコ)
日本超音波医学会


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