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レポート

2006/12/4

早期から、在宅でも、緩和ケア(下)

注目集める「広島県緩和ケア支援センター」

 「ホスピスと呼ばれる施設での終末期ケア」との印象が強い緩和ケア。だが最近、治療早期から、さらには在宅でも切れ目なくケアを提供しようというのが、世界的な流れになっている。このトレンドをお伝えするシリーズの最終回は、日本で地域における緩和ケア推進の拠点として全国に先駆けて設置された「広島県緩和ケア支援センター」を紹介する。


 県立広島病院内の一角にある「広島県緩和ケア支援センター」は、2004年9月、地域における緩和ケア推進の拠点として全国に先駆けて設置された。「緩和ケア科(外来・病棟)」と「緩和ケア支援室」の2つの機能を持ち、患者・家族が希望する場所で安心して継続的なケアを受けられるよう支援している(表1)。

在宅患者のQOL向上目指す

●表1 広島県緩和ケア支援センターの概要
◆緩和ケア支援室
・情報提供:ホームページ、情報収集室(図書室)、オープンデイ(見学会)
・総合相談:緩和ケアダイヤル
・専門研修:医師研修、ナース育成研修、福祉関係者研修
・地域連携支援:デイホスピス、アドバイザー派遣
◆緩和ケア科
・緩和ケア外来
・緩和ケア病棟

 同センターの大きな特徴と言えるのが、「緩和ケア支援室」の取り組みだ。支援室では、(1)情報提供 (2)総合相談 (3)専門研修 (4)地域連携支援――の4つの事業を行っているが、とりわけ注目を集めているのが(4)の一環として行っている「デイホスピス」。

 前回紹介した英国のデイホスピスと同様、在宅療養中の患者や入院患者を対象に週2回、音楽療法やマッサージ、絵画などのプログラムを催し、専門職による心身のケアを提供している。デイホスピスは患者にとって癒しや交流の場となるだけでなく、家族・介護者に休養・休息の時間を提供する場としても重要な意味を持つ。

 緩和ケア支援室長を務める看護師の阿部まゆみ氏は、英国の緩和ケア専門看護師の資格を持ち、セントクリストファーホスピスでの勤務経験もあるスペシャリスト。「ホスピス・緩和ケアの役割は“看取りのケア”だけではない」と指摘する阿部氏は、「症状マネジメントを行い、患者さんのQOLを向上させることこそが緩和ケアの目指すところだ」と続ける。

写真:1 患者・家族のための情報収集室

 だが現状では、十分な症状マネジメントが受けられぬまま退院し、不安を抱えながら在宅療養を余儀なくされている患者も少なくない。主治医や訪問看護師などと連携しながら、病棟から在宅までシームレスな緩和ケアの提供体制を整えることに、緩和ケア支援センター設立の目的がある。

 そのため、同センターでは診療やデイホスピスのほかにも、ホームページや情報収集室(図書室)を開設し、患者・家族に積極的な情報提供を行っている(写真1)。情報収集室では専門書から一般書、ビデオまで、緩和ケア、がん関連の資料を自由に閲覧できる。また、電話や面談による相談窓口も開いており、患者・家族からの療養についての悩みや不安に対応している。

 さらに、患者・家族だけでなく、医療関係者からの専門的な相談も受け付けるほか、医師や看護師、福祉関係者向けの研修や、県内各地域で緩和ケアを推進している関係機関へのアドバイザー派遣など、地域における活動支援も同センターの重要な役割となっている。

患者自らの問い合わせが増加

写真:2 緩和ケア支援センター長の本家好文氏(左)と緩和ケア支援室長の阿部まゆみ氏(右)

 緩和ケア支援センターがオープンして2年。その取り組みは着実に地域に根付きつつある。例えば同センターでは一般の人や医療関係者などを対象に院内見学会を開催しているが、「以前は家族が患者さんに内緒で見学に来ていたが、最近は患者さんが自ら訪れるようになった。この2年で大きく変わった」と阿部氏。数人だった情報収集室の利用者も今では1カ月に100人を超えるという。

 現在、国は各地域にこうしたセンターの整備を求めている。広島県での取り組みをモデルに、今後はわが国でも在宅緩和ケア中心の“英国型緩和ケア”の概念が広がっていくだろう。

 広島県緩和ケア支援センター長を務める緩和ケア科部長の本家好文氏は、「地域支援といっても、現状ではベッドを用意したり教育・アドバイスができるのみ。実際に地域に出て行くことはできず、後方支援的な役割にとどまっているというジレンマは正直ある」と本音を漏らしつつも、「まずは『緩和ケア=病棟』のイメージ払拭に務めるべく、センターの取り組みを通じて地域の啓発活動を地道にやっていきたい」と話す。

(井田 恭子)

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