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2006/11/7

タモキシフェンに代わる切り札

閉経後乳がんで注目集めるアロマターゼ阻害剤

 ホルモン受容体陽性の閉経後乳がんの治療がタモキシフェンからアロマターゼ阻害剤に代わりつつある。アロマターゼ阻害剤に術後の補助療法でタモキシフェンを上回る再発抑制効果、タモキシフェン治療後の投薬で無治療の場合よりも生存率を高める効果があることなどが分かってきたためだ。


 「アロマターゼ阻害剤はタモキシフェンに代わり閉経後乳がんの標準治療となった」。このほど開催された日本癌治療学会に参加するために来日したドイツKiel大学のWalter Jonat氏は、閉経後乳がん治療の主役交代を明確に語った。

 乳がん全体の7割を占めるとされる、ホルモンの受容体がある乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンの刺激によってがん細胞が増殖すると考えられている。卵巣機能が活発な女性では卵巣がエストロゲンを主に供給する。しかし、閉経を迎えた後になると、卵巣からのエストロゲンの供給はなくなり、副腎皮質から分泌される男性ホルモンをアロマターゼという酵素が変換してエストロゲンが少量生産され、これがホルモン受容体を持つ閉経後乳がんの増殖を促進する。そのため、ホルモン陽性閉経後乳がんの治療には、これまでタモキシフェンを代表とする抗エストロゲン剤が用いられてきた。これが選択的アロマターゼ阻害剤(AI)にとって代わったわけだ。

 タモキシフェンには長期間使用することで子宮がんや血栓症のリスクが高まることが知られてきた上に、5年間服用した場合と10年間服用した場合に再発抑制率に差がないことが明らかになるなど、タモキシフェンに代わるホルモン療法剤、タモキシフェン投薬後のホルモン療法剤が切望されていた。選択的アロマターゼ阻害剤はこの期待に応える薬剤としてクローズアップされてきた。

 9月29日から10月3日に開催された欧州癌治療学会ではAIとタモキシフェンの長期投与の比較を行った結果が発表された。これは、初回術後補助療法として、AIの一つであるレトロゾール(商品名「フェマーラ」)を投与した場合とタモキシフェンを投与した場合を比較する大規模試験約4年間の追跡調査の結果、閉経後のホルモン受容体陽性乳がん患者に対してレトロゾールを投与すると、タモキシフェンよりも遠隔再発転移を抑えることが判明したもの。レトロゾールの投与は、タモキシフェンを投与する場合と比べて再発のリスクを18%減少させていた。

 もう一つ、術後5年間タモキシフェンを服用したあとの再発予防をどうするかに対しても、AIは、タモキシフェン5年終了後に服用すると再発予防に効果があることが最近明らかになっている。5年間のタモキシフェン療法後にレトロゾールを投与した場合と偽薬を投与した場合を比較した大規模試験で、4年無病生存率は偽薬群の89.8%に対し、レトロゾール投与群は94.4%と有意にレトロゾール群の方が高かった。

タモキシフェン後の経過観察の人にも有用
 実際には、タモキシフェン投与終了後、経過観察になっている場合が少なくない。この無投薬期間があっても、再発防止にAIが効果を発揮することも明らかとなっている。

 今年6月に開かれた米国臨床腫瘍学会で、ホルモン依存性乳がん患者で、乳がん手術後に5年間の標準的なタモキシフェン治療を受けた後、30カ月何も補助療法がなくても、その後レトロゾールを投与すると再発リスクを減らせることが発表された。無投与を継続した群に比べて、レトロゾールの投薬を開始した群では24カ月フォローアップしたところ、ハザード比が0.31と低くなることがわかった。全体の生存率でも無投与を継続した群に比べて、ハザード比が0.53と低くなった。

 さらには、タモキシフェンを服用している途中でAIに切り替えると死亡リスクが減ることも米国臨床腫瘍学会では発表されている。 初期の閉経後乳がん患者で、タモキシフェンを2年から3年投与してからAIの一つであるエキセメスタン(商品名「アロマシン」)投与に切り替えた群は、タモキシフェンをそのまま投与し続けた群に比べて死亡のリスクが15%低減することが、56カ月追跡調査した大規模臨床試験の結果、明らかとなった。

 AIと分子標的抗がん剤を組み合わせることで治療効果を高めることもできる。ホルモン受容体とHER2抗原が陽性である閉経後転移性乳がん患者に、抗HER2モノクローナル抗体製剤「ハーセプチン」(一般名トラスツズマブ)とAIの一つアナストロゾール(商品名「アリミデックス」)を併用投与すると、アナストロゾールを単独投与した場合よりも無増悪生存期間が2倍に延長できることが最近報告されている。

 タモキシフェンに比べ有用な面の多いAIだが、骨量を減少させるという問題点がある。骨量を増やすビスフォスフォネート製剤をうまく利用するなどの工夫をしながら、積極的に利用する段階に来ているようだ。


(横山 勇生)

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