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レポート

2006/10/31

地元国会議員と地方議会に「患者の声」伝える時代に

「全国がん患者ロビイングデー」を開催

 10月30日、第1回の全国がん患者ロビイングデーが開催され、各地から20団体28人が参加、がん対策の推進を国会議員に陳情した。これまでのがん患者団体のロビイング(陳情)は、少数の熱心なメンバーによる有力議員への働きかけが中心だったが、これからは、各地の患者団体による地元選出議員や地方議会への要請活動も高まることになりそうだ。



国会議員事務所を参加者で訪問
写真1:国会議員事務所を参加者で訪問

 日本がん患者団体協議会(JCPC。理事長、山崎文昭氏)の呼びかけで、10月30日、第1回の「全国がん患者ロビイングデー」が、衆議院第2議員会館(千代田区永田町)を中心に、衆議院、参議院両院の議員会館で繰り広げられた(写真1)。高知県、島根県、和歌山県など遠方からの患者団体も参加、地元選出議員などへの陳情活動をいっせいに繰り広げた。

 JCPCの山崎氏は、(1)日本のがん医療がかかえる問題点を国会議員へ伝え、深刻な問題であるという認識を持ってもらい、現状の改善を訴える(2)地方の患者会のメンバーが上京して地元の問題を伝えることで、国会議員にがん対策が自分に関係した問題であると知ってもらう(3)全国の患者会同士の交流と協働を進める――の3点を狙ってこのイベントを企画した。

 朝10時から11時は、患者会によるミーティングを開催。国立がんセンターに10月1日に新設された「がん対策情報センター」の機能強化に関して、20団体連名(当日参加患者会以外も参加)で作成した、厚生労働大臣の柳沢伯夫氏と国立がんセンター総長の垣添忠生氏宛ての要望書の内容を、参加者で確認した。

 意見のとりまとめを行った参議院議員の山本孝史氏は、がん対策をとりまく環境と展望について説明した上で、「がん対策情報センターの運営評議会が開催され、がん患者団体選出委員も2人参加できるようになったのは大きな進歩だが、意見を集約してぶつけていかないと、なかなか具体的な進展は得られない。来年4月1日にはがん対策基本法が施行され、がん対策推進協議会も始まるが、前倒しでそれまでに議論のレベルを高めていく必要がある」と参加者に強く訴えた。

厚生労働省と国立がんセンターから7人が会場に訪れて、がん対策の状況を説明。マイクに向かっているのが厚労省がん対策推進室室長補佐の佐々木健氏

写真2:厚生労働省と国立がんセンターから7人が会場に訪れて、がん対策の状況を説明。マイクに向かっているのが厚労省がん対策推進室室長補佐の佐々木健氏

 11時から12時半は、厚生労働省との懇話会(写真2)が、行政と患者会の意見交換の場として開かれた。厚労省と国立がんセンターから7人が出席、まず、厚労省がん対策推進室室長補佐の佐々木健氏が、がん対策基本法、来年度がん対策関係予算、がん対策に関する意見交換会と意見募集(参考記事:厚労省「がん対策の推進に関する意見交換会」設置、患者代表2人選ばれる)、がん対策情報センターの内容など、昨今のトピックの概要を説明した。続いて、参加メンバーから先の要望書が、佐々木氏と国立がんセンターがん対策情報センター室長の加藤抱一氏に手渡された。その後、質疑応答が行われた。

 山梨まんまくらぶの若尾直子氏は、「県ごとにがん対策の計画を立てることになっているが、その取り組みには県によって大きな格差がある。国レベルでは患者も検討の場に入れるようになってきたが、県レベルでは遅れている。国から県に対して、対策の促進や政策立案への患者参加を進めるよう、指導してもらえないか」と尋ねた。

 それに対して、厚労省の佐々木氏は「厚労省の部課長会議の場で各県の担当者に伝える」とした上で、地元の患者会の活動への期待を表明した。「これから県ごとのがん対策が本格的に作成されるようになるが、その際、患者も議論に参加させてほしいと県に働きかけるとよい。また、県レベルでがん患者会を組織していくのもいいのではないか。例えば、地域がん診療連携拠点病院(がん拠点病院)のレベルも、まだ一定していない。みなさんが現場の病院に対して、一種の監視役を果たすこともできるだろう。本当に患者相談窓口が機能しているのか、緩和ケアチームが動いているのか、がん登録が実行されているのか、注視していってほしい。がん拠点病院を育てていくにも、患者さんからの声は大切だ」。

 また、佐々木氏は、各がん拠点病院の情報開示について、現在、がん拠点病院の現況調査を行っており、そこでは、相談窓口での人員や対応件数、使用している診療ガイドラインの名前など、詳細な内容が調査項目に含まれていることを説明。こうして集めたデータは、国立がんセンターがん対策情報センターが実施するがん情報サービスのウエブサイトで公開することを明らかにした。

●患者団体メンバーが地元議員に陳情

まず、議員会館玄関での入館許可の取り方を仲間に教える(右端は癌と共に生きる会事務局長代行で、今回、厚労省「がん対策に関する意見交換会」のメンバーに選ばれた海辺陽子氏)
写真3:まず、議員会館玄関での入館許可の取り方を仲間に教える(右端は癌と共に生きる会事務局長代行で、今回、厚労省「がん対策に関する意見交換会」のメンバーに選ばれた海辺陽子氏)

 会議が終わると、参加者は議員会館地下の食堂で昼食をとり、それからロビイング活動を開始した。活動は二つある。ひとつは、国会議員が会場に挨拶に来ることに応対すること。もう一つは、それぞれの患者会の地元選出国会議員の事務所を訪問し、がん対策強化への賛同を得ることだ。

 ロビイングデーの開催を各議員に通知していたことから、この日、5人の国会議員と議員の代理である秘書10人がこの会場を訪問した。議員が来ると、10分ずつ程度のスピーチと質疑応答があり、ときには、議員を取り囲んで歓談や写真撮影が行われる。

 会場を訪れた民主党・衆議院議員の仙谷由人氏は、来年4月の統一地方選挙(任期を終えた知事、市町村長、地方議会議員などの選挙をまとめて行う)や、7月の参議院選挙などの選挙日程を踏まえた活動を助言した。

 「がん診療の地域格差は大きい。各政党が、がん対策をマニフェスト(政策綱領)として掲げるようになっているが、がん対策を推進できない政党は票を失うことは必至だ。また、地方選挙ほど、こうした政策によってはっきりと票が左右される。各地のがん対策に力を入れてもらうために県庁を揺さぶるには、県議会に働きかけるのが一番で、県議会ならば数人の議員がその気になれば動く。統一地方選挙を控えた今は、患者団体が地元で声を上げるチャンス。中央のロビイングも重要だが、並行して地方議会でもやると効果的だ」 。

 また、仙谷氏は、民主党の徳島県版のマニフェストに、がん検診受診率50%達成、がん対策推進条例の制定、がん相談窓口の設置などを盛り込んだことも紹介。各地の各政党にがん対策の強化を選挙公約に盛り込んでもらう作戦があることを伝授した。また、島根県でがん対策推進条例が成立しているが、こうした好事例を全国に広げる視点も重要だと指摘した。

その後、各県の参加者が地元議員の事務所を巡回。癌と共に生きる会理事長の石橋健太郎氏は、地元広島県選出の衆議院議員で元衆議院厚生労働委員長の岸田文雄氏(自由民主党)の事務所を訪問した

写真4:その後、各県の参加者が地元議員の事務所を巡回。癌と共に生きる会理事長の石橋健太郎氏は、地元広島県選出の衆議院議員で元衆議院厚生労働委員長の岸田文雄氏(自由民主党)の事務所を訪問した

 一方、議員訪問を受け付けながら、適宜、各メンバーが地元選出議員の事務所周りをした。国会議員会館は国会議事堂の隣接地にあり、衆議院第一議員会館、衆議院第二議員会館、参議院議員会館のそれぞれ7階建ての3つのビルに、国会議員約700人の事務所がある。

 がん患者団体一行は、まず、議員会館の入り口での面会証の記入の仕方を練習するところから始め(写真3)、最初は陳情経験者といっしょに議員事務所を訪問(冒頭の写真1)、それから県別に分かれて地元議員事務所巡りをした(写真4)。多くは議員秘書による対応だったが、議員に面会できたケースもあった。

 今回のイベントに参加した患者会メンバーの反応は上々だった。「オンライン乳がん患者グループGT4」の代表である河野一子氏は、「議員会館に足を踏み入れたのも、議員に会うのも初めての経験で、少し緊張した。でも、各地の患者会の熱心さに感心した。自分たちももっと意識を高めなければと刺激になった。これからはもっと積極的に取り組みたい」と感想を語る。

 大阪赤十字病院の乳がん患者サポートグループ「のぞみの会」の会長である垣本志津枝氏は、「自分たちだけでは陳情などなかなかできないと思っていた。参加してみて、こうしてやるのかと、とても勉強になった。患者会で月例会を開いているので、そこでみんなにも報告したい」と語った。

「全国がん患者ロビイングデー」の当日の活動に参加した患者会
オレンジティ
オンライン乳がん患者グループGT4
がん情報サロン
癌と共に生きる会
高知がん患者会「一喜会」
終末期医療を見つめるリフォレスト
千葉・在宅ケア市民ネットワーク ピュア
どんぐりの会
日本がん患者団体協議会
日本すい臓がん患者会
脳腫瘍ネットワーク
のぞみの会
ひまわりの会
びわの葉の会
ブーゲンビリア
山梨まんまくらぶ
森の会−筑波メディカル・ピンクリボンの会

 大阪府にある乳がん患者会、「ひまわりの会」の中村弘子氏は、「議員や行政に向けて実際に自分たちの意見を言えて、それを聞いてもらえて、しかも、『できることは対処を考えてみます』と回答されたのには、びっくりした」と、感動した様子だった。

 JCPCの山崎氏は、「参加者が、国を動かすシステムに関する理解を深めた。この経験を地方でも活かして、県レベルで身近な医療の向上に自分も参加しようという機運が高まった」と、今回のイベントの成果を説明する。

 同様のロビイングデーは今後とも定期的に開催していく予定。イベントの終わりが近づいたころ、参加者から今回の反省点を集約した。「もっと細かく段取りを考えておこう」「地元議員との面談約束が入れられるよう、もっと早く日程時間割を決めよう」「重点的に回る議員を、事前にリストアップしておこう」など、建設的な意見が出ていた。山崎氏は、「今日はイベント・プログラムを詰め込み過ぎたので、実際に個別議員にロビイングする時間配分が少なくなってしまったのも反省点」と語る。

 米国の患者会は確かに洗練された強力なロビイング活動をしている(参照:「米国乳がん連合」の整然としたロビイング活動)。しかし、これは長年の活動で発展させてきたもの。まず、日本で、第1回の全国がん患者ロビイングデーが実現した意義は大きい。今後、日本のがん患者団体が、国会や地方議会へのロビイング力を急速に高めるのは間違いないだろう。


(埴岡 健一)


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