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レポート

2006/10/24

「悩み」を入力すれば、すぐ「助言」が

静岡がんセンター、患者のQ&Aをウエブ公開

 静岡がんセンターが、がん患者の悩みへの回答集を12月にウエブで公開する。だれでも、どこからでも利用できるので、全国の患者さんや家族には朗報となる。実際に患者さんから寄せられた「悩み」1万件余りへの助言を順次、掲載していく。利用者は、自分の悩みに近いものを検索して読むことができる。また、静岡県内の全市町村を対象に、「がんに関する相談・情報窓口一覧」も作成した。今後、こうしたリスト作りが全国に広がることが期待される。




 10月21日、静岡がんセンター(静岡県長泉町)で厚生労働省研究班による「『がんの社会学』に関する合同班会議」が開催された。ここで、12月に公開される予定の「WEB版がんよろず相談システム(以下、WEBよろず相談)」の概要が紹介された。

 これまでに、同班の研究などで患者からの悩みを約2万5000件収集、それを整理して1万件余りに絞った。その悩みすべてについて、静岡がんセンターと研究班が助言文を作成する。現在、助言作成作業の1割程度が完了した。

●画面1
悩みを文章で入力する。大きな字で見やすくする工夫がされている(画面は試作版)

悩みを文章で入力する。大きな字で見やすくする工夫がされている(画面は試作版:以下同じ

 ウエブで公開される画面は図1、2、3のようになっている(現時点でのイメージで、最終デザインは検討中)。まず、自分の悩みを自由な文章で入力し、検索ボタンを押す(画面1)。すると、データベースから類似の悩みがリストアップされる(画面2)。それぞれの悩みに付けられた「助言」ボタンを押すと、助言の文章が出てくる(画面3)。また、この回答を見た人が参照した他の悩みのリストも表示されるので、さらに関連する項目を読んで悩み解消へのヒントを得ることができる。

 WEBよろず相談は、厚労省の研究費、静岡県の補助金、読売新聞社系列の正力厚生会からの助成金によって実現した。また、検索ソフトは静岡がんセンターが明電ソフトウエアと共同開発した。

 現在でも、静岡がんセンターが順次作成している“悩み助言集”は、同センターのウエブサイトに冊子の形で掲載されており、活用可能だ。「がんよろず相談Q&A集」としてこれまでに「医療費・経済・就労編」と「肝細胞がん編」がある。

●画面2
類似の悩みがリストアップされる。そこから悩みを選んで、助言ボタンを押す
類似の悩みがリストアップされる。そこから悩みを選んで、助言ボタンを押す

 また、「学びの広場 小冊子」として、「医療情報をもっと知りたいとき」「在宅でも受けられる医療・介護サービス」など5種類が掲載されている。

 WEBよろず相談は、今後、継続して作業を進め、1万件余りのすべての悩みへの助言を完成させる意向だが、作業量や費用が相当大きくなるため、人員と予算の確保が課題となっている。

地域サービス「ワン・ストップ化」狙う
 一方、班会議の席上で、静岡県の「がんに関する相談・情報窓口一覧」がほぼ完成したことも報告された。これは、静岡県内の42市町すべてに関して、がんの治療、在宅療養、医療費などの66項目について、担当窓口と連絡先をリストアップしたもの。ひとつの市町の情報が1枚の紙にコンパクトにまとめられる。

●画面3
助言を読む。この回答を見た他の人が参照した助言のリストも出る
助言を読む。この回答を見た他の人が参照した助言のリストも出る

 こうした一覧表を作成したのはなぜか。現在、全国179カ所の地域がん診療連携拠点病院で、地域の患者や家族からの相談を受け付ける「相談支援センター」の整備が進められている。しかし、まだ相談支援センターの知名度が低いため、住民との接点が多いそれぞれの行政窓口でがん患者が利用できるサービスについての情報提供をしたり、がん拠点病院の相談支援センターが活用できることを知らせたりする機能は必要だ。

 また、このリストを「ワン・ストップ化」に役立てる。市町では組織が縦割りで、多様なサービスがあるのに、内部で知識が十分に共有されておらず、部署間の連携が弱いことも少なくない。例えば、治療の悩み相談は保健センターで、介護保険の相談は介護保険課で、国民健康保険の高額医療費貸付制度は国保年金課といったように担当が分かれるが、他のセクションが実施しているサービスについては、患者・住民に十分な案内がなされないことも多い。

 ところがこのリスト1枚を役所の各セクションにおけば、職員の理解も進み、患者・地域住民へのサービスが高まることが予想できる。利用者は、役所の1カ所(ワン・ストップ)でサービスの全体を把握することができる。また、市町の広報紙などと共に地域住民に全戸配布されることも期待されている。

 研究班では、42市町の回答を「静岡県内市町のがん医療資源調査報告書」にまとめたが、これを全国約1800の市町村に配布し、「がんに関する相談・情報窓口一覧」の作成が全国に波及することを促したいとしている。

 この日の会議には、全国のがん拠点病院から約50カ所が参加。相談支援センターの担当者あるいは管理者の立場の参加者も40人程度含まれた。相談支援センターで実際に相談に乗る担当者にとってみれば、この日発表された「WEBよろず相談」や「がんに関する相談・情報窓口一覧」は大きな助っ人だ。寄せられる悩みに助言するには、事例集、模範解答集、紹介情報集といった資料が充実していることが不可欠だからだ。国立がんセンターの「がん情報サービス」が10月1日にスタートしたが、まだ悩み相談助言集や地域の支援サービス窓口リストなどの情報はない。

患者会から改善への提案やアイデアが多数出る
 会議には約20の患者会・患者支援団体も参加し、この日発表された2つのサービスや患者が求める情報について、活発に意見を述べた。主な意見は下記の通りだ。

参加した患者会から順次、意見を聞いた

参加した患者会から順次、意見を聞いた

・「患者会で電話相談をしているが『良い病院を教えて』『どの治療選択が正しいのか』という質問が多い。医師別の実績などの情報がほしい」(子宮・卵巣がんのサポートグループ あいあい)

・「患者にとっては初回治療の病院選びが重要。乳がんでは乳房温存率、センチネルリンパ節生検の実施率、抗がん剤が使える腫瘍内科医の有無が重要なので、私たちはそうしたデータを含む病院リストを作成した。患者が病院を選ぶポイントとなる情報を提供してほしい。また、治験や健康食品など関心が高い事項に関して、患者が科学的根拠などの見方を学ぶことができる学習機会を提供してほしい」(イデアフォー)

・「相談支援センターの窓口を病院の各部門がサポートする体制が重要とのことだが、患者会もそのサポートに参加させてほしい。がん経験者と話す機会を提供することは重要だ」(声を聴き合う患者たち&ネットワーク 「VOL-Net」)

・「WEBよろず相談の利用者に、役に立ったかどうか尋ねるボタンをつければいい。また、患者会がその内容を定期的にチェックして意見を述べて、改善に役立てるようにしてはどうか。また、相談支援センターの業務を評価する仕組み作りも必要だ」(女性特有のガンのサポートグループ オレンジティ)

・「相談支援センターのサービスに期待するが、患者会の悩み相談にはがん経験者と共感をもって話せるという利点がある。静岡がんセンターは患者対応担当者として患者会メンバーから適任者を採用してはどうか」(支えあう会「α」)

・「相談支援センターに患者会の代表が参加することを検討してほしい」(リンパの会)

・「がん治療の情報と同時に、治療できる場所に関する情報もいっしょに提供してほしい。乳がんに関して、標準治療でない害のある治療がたくさんなされているとの調査があったが、がん診療全体の実態を調査すべき。病院の診療レベルを調査し活用する機関を設置することが望まれる」(癌と共に生きる会)

・「患者が知りたい情報と、患者に知らせるべき情報の両方があることに注意して情報提供をしてほしい。知識がないと不安が増長される。心の悩みに答える前提として、知識となる情報を充実させておくことが大切だ。ボランティアや民間で多くの患者支援が提供されている。そうした情報やリストも掲載すると役に立つ」(グループ・ネクサス)

・「在宅ケアを選ぶときには、気管切開をしている患者にも対応できるかどうかといった個別具体的な情報が決め手になる。患者や家族がケアの選択を考えるとき、本当に必要な情報が提供できるようにすることが重要だ」(千葉・在宅ケア市民ネットワーク ピュア)

・「いつでも、どこからでも電話で相談できるコールセンターの設置が必要だ。また、医療機関によって除痛率などに大きな格差があるが、そうしたさまざまな成績を、がん拠点病院別に開示してほしい」(ブーゲンビリア)

 国立がんセンターからは、がん対策情報センター長補佐の若尾文彦氏が出席した。「こちらでは、すでに患者さんの悩みを収集し、分析し、助言を記述して蓄積し、またウエブで開示する準備も整っている。一方、がん対策情報センターではそうした領域の整備が遅れているが、今後、こうした動きが全国に広がるようお手伝いをしていきたい。作業をするためのワーキング・グループを設置したり、各地で意見を聞くタウン・ミーティングも実施して、患者会や一般の意見も取り入れながら、よりよい情報提供をしていけるようにしたい」と抱負を述べた。

(埴岡 健一)

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