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レポート

2006/10/17

患者団体アメリカ訪問記 第13回 −がん診療改革のヒントを探して−

米国の学会は「患者団体を大切にする」

 日本のがん患者団体一行の米国視察旅行に密着取材した。狙いは米国から日本への教訓を得ること。ジョージア州アトランタで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)には多くのがん患者団体が集まっていた。患者団体が交流し勉強する機会を、学会が提供しているのだ。



 ASCO年次学術大会の会場で、日本がん患者団体協議会理事長の山崎文昭氏は、何度も「患者団体が本当に大切にされているなあ」と感嘆の声を漏らした。

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 学会場の一番便利なところに広い患者団体サロン(写真1)が設けられている。常に飲み物や軽食が取れるようになっており、応接セットもある。自然発生的に、患者団体同士の対話や交流がはじまる。また、掲示板があり自分たちの活動を紹介することもできる。事務員が常駐しており、会場の案内もしてくれる。

 さらに、「会いたい専門医」とのミーティングもセットしてくれる。例えば、肺がん患者をサポートする患者団体なら、肺がん分野で有名な医師や、その年に話題となる発表をする専門家の話を聞きたくなるだろう。それなら、このサロンの係員に申し出れば、100%実現する保証はないものの、会談の約束を取り付けるように努力してくれる。

 また広大な展示場に足を踏み入れて、まず目立つのが患者団体共同ブース(写真2)だ。まさに、会場のどまんなかの一等地におかれ20団体が出展している。共同ブースでは、比較的財力が弱い団体などが、学会の補助を受けて展示することができるのだ。一方、ランス・アームストロング財団、米国乳がん連合、スーザン・G・コーメン乳がん財団など財力がある団体は、医薬品メーカーなどと同様に独自ブースを構えている。全体として、患者関係者がたくさん出席し、しかも、それが目立つ学会となっている。

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患者団体表彰もメーンイベントのひとつ
 毎年、患者団体表彰もある。今年は2つの患者団体が対象となった。まず、「患者支援者賞」を受けたのが、多発性骨髄腫研究財団(MMRF)と多発性骨髄腫研究連合(MMRC)を創設したキャシー・ジウスティ氏(写真3の左)である。

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 ジウスティ氏は1996年、37歳のときに多発性骨髄腫と診断されてから、それまでの仕事を辞めて、多発性骨髄腫の患者支援を本業とした。98年には多発性骨髄腫研究財団(MMRF)を設立、医薬品業界で働いた経験と、経営学修士号(MBA)をもつ経営手腕を活かして、財団を急発展させた。事業の焦点を、多発性骨髄腫の新薬開発への研究助成に絞り、チャリティー・イベントを開催するなどして寄付を集めては、医薬品開発と臨床研究支援に投入してきた。これまでに集めた資金は約6億5000万円。同財団は、現在25種類の新薬および併用療法の研究に助成金を出している。

 ジウスティ氏は2004年になって、多発性骨髄腫研究連合(MMRC)を設置。有力な科学者を集めて新薬開発のためにがん細胞の遺伝子解析を進めた。また、多発性骨髄腫の細胞バンクを研究機関と共同で設置し、遺伝子解析が大きく進展する環境を整備した。

 乳がんや肺がんなど注目を浴びやすいがんに関しては、米国がん研究所(NCI)が多くの研究費を提供し、メーカーも大きな資金を用意するため、新薬の開発が進む。しかし、多発性骨髄腫はまれながんであるため、研究者も少なく、メーカーもあまり開発のための投資ができない状況がある。ジウスティ氏の活動の意義は、NCIやメーカーの代わりに新薬開発の活性化に役割を果たしたことにある。ジウスティ氏が取り組むのは、高度に専門的な領域。経営もアマチュア的でなく、とてもプロフェッショナルだ。

 もう1人表彰を受けたのは、ランス・アームストロング氏(写真4)だ。自転車競技ツール・ド・フランスで7回優勝を果たした世界的に有名なスポーツ選手。現在、連邦政府の対がん戦略をアドバイスする、大統領がん諮問委員会のメンバーでもある。

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 ASCOが評価したのは、がん臨床試験の支援と、サバイバーシップ(がん経験者対処法)に関する普及啓発などに関しての力強い活動。サバイバーシップとこう丸がんの研究に約16億円を助成、60種類以上のサバイバーシップ教育・普及啓発活動に約1億8000万円を支援、毎月500人のがん経験者や家族にソーシャルワーカーなどによる相談を提供――など、活発な患者や専門家へのサポートを繰り広げる。がんサポートのシンボルとなっている手首につける「イエローバンド」は、世界中で数千万人が着用したという。

多様で幅広い米国の患者会活動
 米国では患者団体の影響力が大きい。がん政策に関しても大きな発言力を持っているから、学会としても、患者団体を大いに尊重する。 でみたように、患者団体が連邦政府議会に「声」を届けることで、政策が動いたり、政府予算が増えたりするという実態もある。

 米国には多数の患者団体がある。個別団体か連合体か、特定の疾患だけを関心事とするかがん全般を対象とするか。また、患者支援、情報提供、助成金補助、研究開発支援、提言要望活動――といった活動領域のどこに重点を置くか。いろんな面で多様性がある。

 下図は、米国の患者団体の状況を示したもの。がん一般を対象とした患者団体の連合体をうたう組織もあれば、乳がんなど特定の疾患を対象とした患者団体の連合体を標榜するところもある。また、特定の疾患を対象とする個別の団体も大小さまざまだ。さらには、小さなコミュニティだけで活動する草の根団体も数知れない。米国の患者団体が日本と大きく異なるのは、多額の寄付を集める力を持って、専門的ノウハウも備えた多数の常勤事務局員を擁している組織が、たくさんあることだ。

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 ASCOの年次学術大会には全国の患者団体が集まるので、日本からの患者団体一行は、下記のようなたくさんの患者団体と出会うことができた。

米国がん協会(American Cancer Society、ACS)
〔がん一般。患者支援、情報提供、助成金補助、研究開発支援、提言要望活動など〕
米国がん経験者連合(National Coalition for Cancer Survivorship、NCCS)
〔がん一般。情報提供、提言要望活動など〕
がんリーダーシップ協議会(Cancer Leadership Council、CLC)
〔がん一般。提言要望活動など〕
全米乳がん連合(National Breast Cancer Coalition、NBCC)
〔乳がん。提言要望活動など〕
Y-ME全米乳がん団体(Y-ME National Breast Cancer Organization)
〔乳がん。患者支援、情報提供など〕
すい臓がん行動ネットワーク(Pancreatic Cancer Action Network、PanCAN)
〔すい臓がん。患者支援、研究開発支援、提言要望活動など〕
ウェルネス・コミュニティー(The Wellness Community、TWC)
〔がん一般。患者支援など〕

 ――対象とする疾患や活動領域など、それぞれの個性を持っている。次回から、こうした団体のいくつかの活動を紹介していこう。

(埴岡 健一)

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