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2006/10/3

患者が頼れる「相談支援センター」へ

相談員向けの研修をスタート

 がん患者や家族は、その病院にかかっていなくても、だれでも、がん拠点病院に設置された「相談支援センター」を無料で使うことができるようになった。だが、全国の窓口で、質が高い相談サービスを提供できているところは、まだごく一部だ。応対の質を上げるために、相談員の育成が急務となっているわけだが、このほどそのための研修会が始まった。



 9月20日、第1回の「相談支援センター 相談員講習会」が開かれた。対象は、全国179カ所のがん拠点病院(都道府県がん診療連携拠点病院と地域がん診療連携拠点病院)の窓口担当者と幹部。全国の病院から278人が参加した。

相談支援センターの役割
(1)地域の医療機関や医療従事者の紹介
・診療機能、入院・外来の待ち時間、訪問看護師を派遣した患者数等を紹介する。
・地域の医療従事者に関する情報を提供する。
(2)セカンドオピニオン医師の紹介
・がん診療連携拠点病院等の医師だけではなく、その地域においてセカンドオピニオンを提供している医師を紹介する。
(3)患者の療養上の相談
・患者の療養上の相談を受け、各患者のニーズに合った医療サービス等に関する情報を提供し、支援する。
(4)各地域の患者及び医療従事者のニーズや満足度の把握
・患者、地域医療機関、かかりつけ医(特に紹介元、紹介先)のアンケート調査結果の紹介等を行う。
(5)各地域・各医療機関における連携事例の紹介
・各地域・各医療機関におけるがん診療連携拠点病院等やかかりつけ医との連携事例に関して情報を収集し、紹介する。

 まず、厚生労働省がん対策推進室の室長補佐である佐々木健氏が、相談支援センター(以下、相談センター)の具体的な業務について説明した。表1のように、(1)地域の医療機関や医療従事者の紹介(2)セカンドオピニオン医師の紹介(3)患者の療法上の相談(4)各地域の患者及び医療従事者のニーズや満足度の把握(5)各地域・各医療機関における連携事例の紹介−−といった主に5つの役割を果たすことになっている。

 がんと闘病する患者やその家族は、治療上の問題から心の悩みまで様々な疑問を抱くものだが、そうした患者や家族に対し、それぞれの状況に応じて具体的な情報を提供し、サポートを行うのが、相談センターである。その病院にかかっている患者に限らず、誰でも利用できることになっているのが大きな特徴だ。

 その窓口はどこにあるのか。全国に179病院(9月末現在)あるがん拠点病院で、すでに患者相談が実施されているはずだ。現状で、相談センターが開設されているかどうかは、国立がんセンター・がん対策情報センターの「がん情報サービス」にある「がん拠点病院リスト」から各施設のページを開き、「相談支援センター」の項に「○」があるかをチェックすればいい。

 ただし、実際の事情は次のように少し複雑だ。今年8月に新たに指定を受けた44病院では、規定上、相談センターがすでに稼動していなければならない。このときから適用された新指定条件で、その設置が義務付けられているからだ。一方で、それ以前に拠点病院となった135病院については、当時の指定条件では「医療相談室を設置すること」とあったものの業務内容は明確でなく、病院にかかっていない人を対象にするという位置付けもされていなかった。こうした旧指定病院は、規則上は来年10月末までに相談支援センターを整備すればよいことになっている。がん拠点病院でも相談センターがあるかどうかは、まちまちで、しかもそのサービス内容にも大きなばらつきがあるのが実態なのだ。

がん診療連携拠点病院の整備に関する指針
○相談支援機能を有する部門(相談支援センター等)を設置すること
(1)専任者が1人以上配置されていること。
(2)病院内外の医療従事者の協力を得て、病院内外の患者、家族及び地域の医療機関等からの相談等に対応する体制を整備すること。

 ところが、厚労省の佐々木氏は会場で、「旧指定病院についても、来年10月までに整備すればよいというのではなく、できるところから早急に始めていただきたい」と、注目すべき発言をした。新指定の病院でも相談センターで充実したサービスができているところはごく一部、ましてや旧指定病院では、まだまだ体制がしっかりしていないのが実情だ。しかし厚労省として、全国のがん拠点病院でできるだけ早く相談センターが確立されるよう、ここで強く要請したわけだ。

 背景には、がん拠点病院への公的補助金が増えたこともある。かつては指定時に一度、200万円の補助があっただけだった。それが、金額が700万円(都道府県拠点は1200万円)に上がり、しかも毎年入ることになった。来年度の予算では2倍ぐらいに上がる見込みだ。この補助金は「相談支援センター」の経費の意味合いもある。だからこそ、補助金を受け取って相談センターが機能しないことは許されないわけだ。

近くの相談センターを使ってみよう
 講習会では、「がん患者から頼られる相談支援センターとは?」と題して、がん患者の相談支援に力を入れている5病院が実例報告を行った。

講習会風景。全国から約300人が集まった

講習会風景。全国から約300人が集まった

 国立病院機構四国がんセンター(松山市)の外来部長である谷水正人氏は、医療連携室やよろず相談室など、院内に複数あった患者サポート機能を統合し、今年4月に「がん相談支援・情報センター」を立ち上げたことを紹介。その経験から、「政府の要件では、相談支援の部門に専任者が1人以上配置とあるが、明らかにそれでは不足する。患者何名につき何名の専任者といった形で適正人数を規定することが必要ではないか。また、同センターは患者の不満やクレームのはけ口ではなく、解決を提供するための窓口。そのためには院内の診療部門などの他部門の協力が不可欠だ」との見解を示した。 

 特色ある相談を行っているのは、広島県立病院(広島市)内の緩和ケア支援センターだ。電話と面談形式で患者や家族の相談に乗っている緩和ケア支援室長の阿部まゆみ氏は、「がんが発見されたときから、患者さんは心のケアサポートを必要としている。また、退院した後に十分にサポートを受けられず、混沌とした状況で孤立した状態の患者も多い」と指摘。そして、患者のニーズに応えるサポート体制を構築するためにも、緩和ケアに精通しコミュニケーションスキルの高いスタッフの養成が必要であることを強調した。

 さらに講習会では、「相談支援センターのあるべき姿」のパートで、相談センターのモデルとされている静岡がんセンターの石川睦弓氏が、2002年から開設している「よろず相談窓口」の経験を披露。そして、国立がんセンター中央病院の大松重宏氏が、相談センターが備えるべき体制、相談員のノウハウや心がけなどについて具体的に解説した。

 相談センターを含む「がん情報提供ネットワーク」構想は、患者団体の要望もあって構想が練られた経緯がある。このネットワークの中で、実際に患者に情報を提供する相談センターに対する患者側の期待は大きい。

 だが、講習会の最終パートのディスカッションと質疑応答では、病院内の患者サポート窓口を一本化する意味、窓口を置く具体的な場所、スタッフの集め方など、サービスの提供以前の初歩的な質問が相次ぎ、相談センターのあり方をまだ模索している病院が少なくないことを印象づけた。病院側からは、患者や地域住民のニーズに応えたくても、今のところ相談センター整備が組織として位置づけられていないため、他部門から集めた兼務者で業務を行っている実情も明らかにされた。

 一方で、全国の相談センターをバックアップする国立がんセンターのがん対策情報センターが、10月1日にオープンし「がん情報サービス」を始めた。「がん情報サービス」の情報の充実が進まないと、相談センターのサービスレベルも上がらない。相談センターは、がん情報サービスに蓄積される情報も活用して、応対をするからだ。患者をサポートするがん情報提供ネットワークの要として、将来的には、各拠点病院のがん種別の症例数や得意分野などまで提供していくことも計画している。だが、この講習会の席上、同センター室長の加藤抱氏が「本格稼動するのは来年度以降」と明言するなど、患者向け情報の提供体制には立ち遅れが目立つ。

 次回の相談センター講習会は、来年2月ごろを予定している。「県内の病院に相談支援センターができたが、敷居が高い。相談しても、本当にほしい情報は得られなかった」。そんなことにならないため、各相談センターのさらなる努力が不可欠なのはもちろんだが、患者にもできることがある。県内の相談センターを積極的に使い、感想や意見を述べてみよう。がん情報サービスも使ってみて、ほしい情報をリクエストしてみよう。「相談センターやがん情報サービスを含む、がん情報提供ネットワークを育てるのは、患者や家族である」。そんな側面もあることを忘れないようにしたいものだ。

(福島 安紀)

〔参考サイト〕
相談支援センター相談員講習会(当日プログラムと発表資料)
がん対策推進アクションプラン2005
がん情報提供ネットワークの概要
国立がんセンター・がん対策情報センター・がん情報サービス

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