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2006/9/26

10月1日オープン、「がん対策情報センター」の“真実”

システム投資優先で後手になる患者向け情報

10月1日オープン、「がん対策情報センター」の“真実”

 国立がんセンター総長の垣添忠生氏は、「私はテレビに出演したときにも、患者向けの情報提供が最も大切で、整備に力を入れると約束してきた。その重要性は認識している」と語る。ただ、情報センター予算のうち、コンテンツ制作費が1%に過ぎないといった概要については、最近まで知らなかった。

 がん対策情報センターの予算は、国立がんセンターが原案を作成して、厚労省の担当部局である医政局国立病院課に要望する形。国立がんセンター総長の名前で提出する予算原案の内容を、総長はよく把握していなかったわけだ。この予算の内容について、国立がんセンターの重要事項を決める運営会議では、審議や報告された記憶がないという。国立がんセンターの関係者によると、運営会議に重要事項が掛からないことは、これまでも皆無ではなかった。

 垣添氏は、2006年度のがん対策情報センターの国立がんセンター予算原案の策定について、「運営局が主導で作ったのだと思うが、詳しい経緯は把握できていない」と語る。ちなみに、国立がんセンターの歴代の運営局長は、厚労省から派遣されている。そして、9月から運営局長となった外山千也氏は、その前は厚労省の国立病院課長だった。外山氏は、「予算原案は、がんセンター総長から国立病院課へ提案される形になっている」と説明する。厚労省において、がん対策を統括するがん対策推進室では、「経緯の詳細は承知していないが、当事者である国立がんセンターと担当の国立病院課が、がん対策情報センターの本来の趣旨を実現できるように作成したと認識している」とのこと。だれのどんな考えでこの予算案が策定されたのか、いまひとつはっきりしない。

 がん対策情報センターの今年の16億円の予算全体が、10月以降の下期執行となっていることもネックとなった。つまり、形式上9月以前には使えないのだ。がん対策情報センターは、患者向けサービスとして、ウエブサイトでの情報提供を拡大するわけだが、その内容(コンテンツ)を作る費用が開設前には用意されていないのだ。また、がん対策情報センターのあり方について意見を述べる「がん対策情報センター運営評議会」の開催会議費も同様だ。がん対策情報センターを「どう作るか」という意見が事前に聴取される機会はなく、「作ってしまってから会議を開く」ことになっている。

 国立がんセンター運営局長の外山氏は、「特別会計を使っている部分があるが、特別会計の執行は通常10月からということが多い。また、がん対策情報センターは、厚労省組織規則の改正を伴うので、省令の改正を待つ必要もあった」と、説明する。コンテンツ作成の日程が、組織改正やコンピューターシステム発注のスケジュールによって、先送りされた格好だが、計画的に、コンテンツの作成を前倒しすることはできなかったのだろうか。

国立ならではのコンテンツが発信できるか
 では肝心の、10月1日開設時の「がん情報対策センター」のコンテンツはどうなっているのか。現在、オープン直前となり、“突貫工事”の最中だ。一般向けの、「各種がんの解説」「看護・支持療法」「生活支援情報」などが拡充される。また、医療関係者向けには、「各種がんのガイドライン(臨床指針)へのリンク集」「クリニカルパス(診療計画)データベース」などが新たに追加された。

 国立がんセンター総長の垣添氏は「これまでに比べると格段の進歩」と胸を張る。運営局長の外山氏も、「説明を受けたが、いろいろなメニューが作られていると感じた」と評価する。

 ただ、全体には、これまでの情報提供の延長線上にあり、内容を一部拡充したとはいえ、米国立の米国がん研究所が提供している情報の広さと深さには及ぶべくもない。国立機関ならではのメニューにも乏しい。

 コンテンツに関して、国立がんセンターはここ半年ほど準備をしてきたが、実際にコンテンツ作成作業を開始したのは6月ごろで、それが本格化したのはここ2カ月ぐらいだ。専任者はなく、当初2人程度の担当者を、最近になって非常勤職員や委託人員を増やしてようやく10人程度とした。実際の執筆は、多忙な国立がんセンター中央病院の医師などに振られている。分担者にはかなりの負荷がかかっており、深夜まで作業することも増えている。

 少し前のことだ。垣添氏が、患者団体のメンバーにがん対策情報センターの進捗状況について説明する機会があった。「関わっている職員は、寝る間もないぐらい頑張っています」。その垣添氏の説明に、患者団体メンバーからは反発の声があがった。「問題は、どんな情報が提供されるかという結果。職員が無理をしなくてもできるようにするのが、経営者の務めではないか」。

 実際のところ、現在のような少額の予算で、少数の兼務者中心の人員が、がんセンター内の職員に作業を振り分けてコンテンツを作るやり方なら、がん対策情報センターが設置されなくても、号令をかけるだけでできる。情報のほとんどは、3年前でもその気になれば作ったり、提供することが可能であったものばかりだ。国立がんセンターは、数年前から、がん対策情報センターのために巨額の予算を要望し、13階のビルを建設するプランも作っていた。コンピューターシステムや情報センターの建物を獲得するために、患者向け情報の製作を手控えたと言われかねないほど、コンテンツ作成のための人・物・金を手当てすることに関心が薄かった。

 日本がん患者団体協議会(JCPC)理事長の山崎文昭氏は、次のように語る。「患者のための情報センターを求めてきたが、その方向で実現させると聞いていた。そのための予算や人員配置がなされていないことが分かったのは、とても残念だ。配分のバランスが悪いという問題もさることながら、その内情を早くから率直に明らかにしてもらえなかったことが悔やまれる。われわれは政府や国立がんセンターと力を合わせて、できるだけいい内容のものを作っていくよう努力したいと思っている。前向きに善後策を考えていくためにも、情報をオープンにし、互いに相談しながら取り組んでいける仕組みを作ってほしい」。

 厚労省のがん対策推進室では、「各方面のご意見を聞いて、がん対策情報センターの所期の目的を達するために不足している事項があるならば、追加的対策を打つように全力を尽くす」と語る。また、来年度予算要求では、がんの予防や治療などに関するパンフレットなどを作成する費用項目を別途立てている。この補助金の行先は未定だが、こうしたコンテンツもがん対策情報センターのウエブサイトに掲載される可能性がある。さらに、必要事項があれば、研究費などの活用も積極的に検討するという。国立がんセンターにもようやく動きが出てきた。運営局長の外山氏は、「さまざまな手段を使って、人員や費用を確保することに取り組んでいる」と強調する。

 国立がんセンター・がん対策情報センターの情報提供は、がん患者の悩みを解消する決め手と期待されている。そして、がん対策情報センターの活躍なしに、日本のがん対策が大きく進展する道筋は見出しにくい。今こそ、国立がんセンターの踏ん張りどころだ。

(埴岡 健一)

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