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レポート

2006/9/26

10月1日オープン、「がん対策情報センター」の“真実”

システム投資優先で後手になる患者向け情報

10月1日オープン、「がん対策情報センター」の“真実”

 10月1日、国立がんセンターの「がん対策情報センター」がオープンする。これまでに比べて、ウエブサイトにがん患者・家族向けの情報メニューが増える。だが本当に「患者のための情報提供」に全力が出せる体制が敷かれているのだろうか。実際のところは、予算のほとんどが医療関係者向けコンピューターシステムに使われているのだ。




 8月30日、元厚生労働大臣の尾辻秀久氏が東京都中央区築地の国立がんセンターを訪問し、オープンまで1カ月に迫った「がん対策情報センター」開設準備の進捗ぶりを視察した。

 尾辻氏といえば、2004年9月から2005年10月まで、厚労大臣を務め、任期中にひときわがん対策に力を入れた人物。前の大臣の坂口力氏(公明党)から、がん診療の「均てん化(全国的に質の高い医療を実現する)」のテーマを引き継ぎ、2005年5月には「がん対策推進本部」を設置した。現在、与党・自由民主党の「患者中心のがん医療を推進する議員の会」の会長でもあり、今年6月に成立した「がん対策基本法」の立役者の一人でもある。何より、2005年8月に「がん対策情報センター」予算の骨格が決まった当時の現職大臣だった。

 ところが、国立がんセンター幹部から説明を受けた尾辻氏は、「これは私が考えていた内容とずいぶん違う」と、その幹部たちを前に長時間の“お説教”をすることになった。「患者のための情報提供ということにかこつけて、自分たちがやりたいことをやっているのではないか」と、叱咤したのだ。

 それはなぜか。尾辻氏は、「私は社会に向けて、がん患者向けの情報提供を充実させると約束してきた。ところが、実際にやられていることは、私のイメージとずいぶん異なる。もっと、患者に向き合い、患者へのサービスになることに力を入れてほしかった」と、気持ちを語る。

 尾辻氏だけではない。参議院議員(民主党)の山本孝史氏は、5月22日の参議院本会議で、自らががんであることを告白してがん対策基本法の早期成立を訴え、それまで成立が微妙であると見られていたこの法律の実現に強力な後押しをした。その山本氏も、自らのホームページで、がん対策情報センターの内容に疑問を呈する文章を掲載している。民主党としても、問題視している。さらに、がん対策にかねてから力を入れている与党・公明党も、がん対策情報センターの内情に関心を深めている。がん対策情報センターの実態に関しては、国会でも議論になりそうな雲行きだ。

 がん対策に関しては、各政党が超党派で応援し、がん対策基本法の成立や政府予算の拡大に取り組んできた。その“応援団”から大きな疑問符を突きつけられているのは、応援してきた人々の意図と、国立がんセンターの取り組みに大きなずれがあるからだ。支援してきた側は、患者向けと医療従事者向けのサービスの両方が必要であるとしても、まず、患者に役立つ情報の充実が優先であると考える。一方の国立がんセンターは専門家集団であるため、自分たちの得意分野に関心が行きがちだ。

 具体的に、どこが、どのようにずれているのか。予算の面から見てみよう。下の表をご覧いただきたい。「がん対策情報センター」予算約16億円のうち、患者向けなどのコンテンツ制作費(黄色部分)はわずか1522万円で、全体の1%に過ぎない。これを圧して5億8458万円の「がん情報関係システム」、5億2531万円の「がん診療総合支援システム」、1億5582万円の「テレビ会議システム(維持管理含む)」などが並ぶ。

表 がん対策情報センターの予算内容
項目 平成18年度予算
(千円)
平成19年度概算要求(千円) 伸び率
(%)
合計 
1,581,760
1,759,556
11.2
人件費
158,468
332,435
109.8
情報関係システム経費
1,370,419
1,402,786
2.4
  がん情報関係システム運用経費
584,585
489,818
-16.2
   ア 情報関係システム導入費
449,680
170,000
-62.2
   イ 機器リース料
36,595
193,947
430.0
   ウ 機器等保守経費
26,490
119,471
351.0
   エ その他
71,820
5,400
-92.5
  がんネット(TV会議システム)経費
84,000
120,005
42.9
  TV会議システム維持管理経費
71,820
71,820
0.0
  がん医療情報提供コンテンツ作成経費
15,225
15,225
0.0
  がん医療情報等処理委託経費
60,638
128,625
112.1
  がん診療総合支援システム経費
525,310
525,310
0.0
  回線使用料
*区分なし
50,400
 
  その他
1,390
1,583
13.9
運営評議会経費
1,483
2,475
66.9
多施設共同臨床試験支援経費
*研究費計上
21,860
 

 このうち、「がん診療総合支援システム」は、がんセンター内の病院や研究所などをつないでいるネットワークなどのことで、従来からあるもの。これまでの「ナショナルセンター特別会計」という区分から、一般財源に振り替えられた。そういう意味ではがん対策情報センター予算16億円はこの分がかさ上げされており、実際は、10億円程度なのだ。また、「テレビ会議システム」は1995年に導入していたもの。2000年に第1回更新をしたが、次の更新が必要な時期になっているため、この機会にシステムの入れ替えと設置・接続地点の増加を行う。

新システムの大部分は医療者向け
 表中の 「がん情報関係システム」が、今回新たに構築されるシステムだ。厚生労働省の考えるがん対策情報センターは下図のとおり。ここにある(1)がん医療情報提供〔患者関係者・医療関係者への情報提供〕(2)がん診療支援〔医療機関対象の遠隔画像診断など〕(3)多施設臨床試験〔抗がん剤などの臨床試験データを参加施設から集計管理〕(4)がんサーベイランス〔がんの発生・治療状況に関するがん登録システム〕(5)がん研究企画支援〔国立がんセンターが配分する約50億円の研究費の申請審査を処理〕――の5つの機能を実現・支援するシステムを寄せ集めたのが、この「がん情報関連システム」だ。


厚生労働省と国立がんセンターが考える「がん対策情報センター」の概要(図の下の部分)
厚生労働省と国立がんセンターが考える「がん対策情報センター」の概要

 システム開発として規模が比較的大きいのは、(2)(3)(4)。患者が活用する(1)のシステムに関しては、基本的には情報コンテンツを置くサーバーが中心となるので、それほど大きなシステムを開発することは必須ではない。

 「がん情報関係システム」の入札説明会は9月20日に実施され13社が参加した。入札期限は10月27日で、11月10日に落札会社が決まる。このシステムの開発は2年間の予定。今年度の開発費は4億4968万円だが、来年度も1億7000万円が計画されている。維持管理のための機器リースと保守の費用は、システムが一部しか稼動しない今年度は6308万円だが、来年度は3億1341万円。その後も、かなりの維持費がかかることになる。

 それぞれのシステムの必要性や費用対効果の吟味が必要であることもさることながら、ポイントは、患者・家族のために提供する情報を作るための投資のバランスが、非常に小さいことだ。

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