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2006/9/19

話題の新しい治療法の実力は?

乳がんを切らずに治す

 乳房にメスを入れない新しい乳がん治療が登場した。日本ではラジオ波熱凝固療法、集束超音波療法の2つが実施されている。切除手術に抵抗感の強い患者が、自由診療で選択するケースも増えている。



 乳房の全切除から、腫瘍を小さく切り出す乳房温存術へと、乳がん治療は、手術による肉体的な負担や手術痕をより小さくする方向へ進歩してきた。さらに最近、乳房にメスを入れずに、腫瘍のがん細胞を高温で死滅させる新しい治療法が登場している。

 海外ではマイクロ波や超低温を使う治療法も試みられているが、日本で実施されているのは「ラジオ波熱凝固療法(Radio Frequency Ablation:RFA)」と、「集束超音波療法(Focused Ultrasonic Surgery:FUS)」だ。いずれもまだ厚生労働省から保険の承認がなされておらず、臨床試験や自由診療の形で行われている(RFAによる肝臓がんの治療は保健適用となっている)。

 RFAやFUSによる乳がん治療が受けられる患者の条件は温存術の場合とほぼ同じ。ただし腫瘍径は温存術の「3cm以内」に対して、2cm以内に限定されている。それでもマンモグラフィーを使った乳がん検診で小さな腫瘍が発見されるケースが増えているため、治療が受けられる条件を満たす患者は少なくない。

ラジオ波熱凝固療法の実施例は200件超に

ラジオ波熱凝固療法で腫瘍に差し込むニードル(写真提供:尾浦氏)。1本針タイプと、複数針タイプがある
ラジオ波熱凝固療法で腫瘍に差し込むニードル(写真提供:尾浦氏)
1本針タイプと、複数針タイプがある


  ラジオ波熱凝固療法(RFA)は、ラジオ波を発生するジェネレーター、ラジオ波による熱を腫瘍に伝えるニードル(写真上)、ニードルの刺入をモニターする超音波診断装置(エコー)を使って実施される。全身麻酔下で、医師がエコーでモニターしながらニードルを腫瘍の中心に刺入。約15分間、ラジオ波を流すとニードルの周囲が90℃まで上昇し、がん細胞が死滅する(写真下)。治療時間は準備を含めても30分程度だ。自由診療の医療費は施設によって様々だが、1泊2日の場合、50万円ほどに設定されているところが多いようだ。


ラジオ波熱凝固療法による乳がん治療の術中、術後のエコー像(写真提供:尾浦氏)。乳房中の腫瘍にニードルを差し込みラジオ波で焼灼(左)。9カ月後、熱凝固した腫瘍は吸収された(右の写真で黒く映っているのは液状化した部分でがんではない)
ラジオ波熱凝固療法による乳がん治療の術中、術後のエコー像(写真提供:尾浦氏)
乳房中の腫瘍にニードルを差し込みラジオ波で焼灼(左)。9カ月後、熱凝固した腫瘍は吸収された(右の写真で黒く映っているのは液状化した部分でがんではない)。


 乳がんのRFA治療を日本で始めたのは、金沢大付属病院乳腺科臨床教授の野口昌邦氏と女性クリニックWe富山ブレストケアセンター(富山市)代表の江嵐充治氏だ。

 まず2002年から17例を対象に予備試験を開始。乳房温存術を選択した乳がん患者の同意を得て、RFAを実施した後に温存術で腫瘍を取り出した。検査によって、取り出した腫瘍のがん細胞が全例で死滅していることが確認できた。少なくともこの17例については、腫瘍を切り出すことと、RFAを実施することの治療効果が同じであることが示されたわけだ。

 そこで野口氏と江嵐氏はRFAのみの実施に踏み切った。患者には、温存術も選択できること、RFAはまだ新しい治療法なので再発リスクの大きさが完全には分かっていないことなどを説明した上で、どの治療を受けるかは患者自身で判断してもらう。「乳房が小さい場合には温存術でも変形が避けられない。そのため乳房に少しでも傷をつけたくないという患者が、この治療を選択している」(野口氏)という。

 現在、国内でRFAを行った経験がある医療機関は12施設ほどで、実施例は200件を超えたところ。最も多く治療を手がけているのは和歌山県立医大外科学第一講座助教授の尾浦正二氏だ。尾浦氏は原発性乳がんの112例にRFAを実施してきており、手術後の日数の中央値が12カ月(最も長い患者で手術後3年)となった現時点で、再発例はないという。

麻酔不要で実施できる収束超音波療法
 一方の集束超音波療法(FUS)は、体外から超音波を照射し、腫瘍に集束させがん細胞を焼灼する治療法。熱を伝えるニードルを乳房に刺入する必要はなく、鎮静剤の投与のみで実施できる。日帰り治療も可能だ。FUSは子宮筋腫の治療で既に実績があり、最近になって、数施設で乳がん治療も行われるようになった。

 ブレストピアなんば病院(宮崎市)副院長の古澤秀実氏は、2004年以来、臨床試験と自由診療で約40人の乳がん患者にFUSを実施してきた。「FUSは1回当たりの照射範囲が狭いので、時間はかかるがきめ細かく焼灼できる」(古澤氏)と言う。

 この治療の難点はFUSの装置が高価であるため、医療費も自由診療で約150万円と高額になることだ。また、実施例の蓄積ではRFAの方が先行している。

 美容面を重視する患者にとって、FRFAやFUSは温存術と並ぶ、乳がん治療の有力な選択肢になる可能性がある。ただし治療効果に関しては温存術を超えるものではないし、同等であるかどうかもまだ検証されていないことに注意が必要だ。

乳がんは、治療後20年間に渡って再発のリスクがある。しかしRFAやFUSには、現時点で、手術後3年までのデータしかない。今後、時間をかけて再発リスクが評価され、治療法として完成していくことになる。

(小田 修司)


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