このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2006/9/5

白血病・リンパ腫から固形がんにも適応広がる

最適な治療に向けニーズ高まる遺伝子検査

 白血病を中心に、がんの染色体検査、遺伝子検査の件数が増加している。治療薬の効果予測・判定だけでなく、より早期に別の治療薬、治療法を選択することにも利用され始めている。がんの早期診断に向けた開発も進んでいる。


 このほど公表された日本衛生検査所協会のアンケート調査によると、細胞の染色体の形を調べる染色体検査の実施数は、前回調査した2001年は13万738件だったのに対し、2004年は16万6809件と、約3万件増加した。ほとんどが白血病の検査だという。血液や組織から核酸(DNAやRNA)を取り出して調べる遺伝子検査も、白血病・リンパ腫関係の件数が3万4721件から4万3818件へと着実に増加していた。

 アンケート調査の結果を日本遺伝子診療学会で報告したエスアールエルの堤正好氏は、「慢性骨髄性白血病治療薬の『グリベック』(一般名イマチニブ)など分子標的薬の登場で、診断の確定や治療効果のモニタリングのニーズが高まっていることが、件数の受託増につながっているようだ」という。

 慢性骨髄性白血病は、異なる染色体同士が転座(染色体の一部がちぎれて他の染色体に結合すること)により融合してBCR−ABLチロシンキナーゼという酵素が作られ、この酵素が異常な細胞を増殖させるために発病する。グリベックは、BCR−ABLチロシンキナーゼを特異的に抑えることで抗腫瘍効果を発揮する。そのため、BCR−ABLチロシンキナーゼを作り出す染色体・遺伝子の有無や量を調べる検査が、グリベック投与の効果を予測・判定するために行われている。

 また、グリベックは、効果が不十分あるいは投与を続けるうちに効果が弱くなってくることがある。

 臨床検査受託会社のビー・エム・エル(BML)は、グリベックが効かなくなることに関与する主要な遺伝子の変異を一括して調べるサービスを、今年の4月から正式に開始した。BCR−ABLチロシンキナーゼの中のABLリン酸化酵素の部分に突然変異が起こると、グリベックに抵抗性が生じる場合があることが報告されている。BMLが提供するサービスはABLリン酸化酵素に生じる25種類の点突然変異を検出するものだ。これによって、より早期に別の治療薬、治療法を選択することが可能となる。

 白血病には多くの種類がある。現在はフローサイトメトリーや染色体検査などいろいろな検査を組み合わせて種類を決定し、治療方針が決められる。ロシュ・ダイアグノスティクスは、遺伝子検査を用いて白血病の種類を早く簡単に見極める検査の開発に取り組んでいる。より早期に適切な治療を行うことが期待できる検査だ。特に応用が期待されているのは骨髄異形成(MDS)。この疾患は、分類が難しい白血病が一くくりにされているため、適切な治療が必ずしも行われていない。そのため、このMDS患者を遺伝子検査で詳細に分類できれば、その患者に合った治療を行える可能性がある。

 その他、血液がんでは、BMLは、B細胞リンパ腫に対する分子標的治療薬「リツキサン」に効果があるかどうかを判定する遺伝子検査の受託を5〜6年前から開始している。特定の染色体の転座が起きていると、リツキサンが効きやすいという知見に基づいた検査だ。

固形がんに対する遺伝子検査の応用にも期待
 白血病、リンパ腫など血液がんに続いて、固形がんにも遺伝子検査の応用が期待されている。固形がんに対する遺伝子検査は、乳がん治療薬の「ハーセプチン」(一般名トラスツズマブ)の投与に際して効果のある患者の選択に利用されている例があるが、件数としてはそれほど多くはない。

 しかし、BMLは、薬の効果と遺伝子の関係を調べる検査が固形がんの分野でも将来は広がると期待している。例えば肺がんの治療薬として使われている「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)。この薬は上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する医薬品の一つだが、それらのEGFR阻害剤は、EGFRに存在する変異と効果との関連が指摘されている。そこで、BMLは、EGFRで報告されている8カ所の変異を調べる検査の受託をこの秋には開始する予定だという。今はまだ研究目的だが、今後、効果と変異との関係が実証されれば、EGFRにどういう変異を持った患者であるか調べることによって、治療法が変わることもありえそうだ。

 また、財団法人癌研究会(癌研)有明病院などのグループは、ヒトの遺伝子の塩基配列が一つだけ異なる一塩基多型を基に、抗がん剤の副作用を予測するシステムを開発し、既に有明病院内で抗がん剤投与の際に用いている。

 一方ロシュは、固形がんの早期診断の開発に取り組んでいる。「がんの一番の特効薬は早く見つけて外科的にとってしまうこと」(ロシュ・ダイアグノスティクスMD事業部長の田澤義明氏)というわけだ。同社は、血液、尿から、がんで特異的に発現している遺伝子マーカーの探索を進めている。そして、大腸がんと肝がんについて、感度良く特異性の高いマーカーを選びつつある段階だという。2〜3個の遺伝子の発現変化を調べることで、90%から95%の感度で特異性の高いマーカーを見つけ出し、臨床試験を2〜3年以内に始めたいとしている。

 なかなか普及が進んでこなかったがん分野での遺伝子検査の利用だが、技術の進歩と新薬の登場とが結びついて、利用が本格化しつつある。がんと戦う有力なツールがまた増えることになりそうだ。

(横山 勇生)

※「がんナビ通信」(週刊:購読無料)を配信中。購読申込はこちらです。

この記事を友達に伝える印刷用ページ