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レポート

2006/8/29

患者団体アメリカ訪問記 第8回 −がん診療改革のヒントを探して−

患者団体との交流を重視する米国がん研究所

 日本のがん患者団体一行の米国視察旅行に密着取材した。狙いは、米国から日本への教訓を得ること。今回は、米国がん研究所が実施している「がん患者団体との交流」についてリポートする。



患者団体との関係作りを使命とするバーバラ・ゲスト氏(左)とジェームス・ハドレー氏
患者団体との関係作りを使命とするバーバラ・ゲスト氏(左)とジェームス・ハドレー氏

 米国がん研究所(National Cancer Institute=NCI)は、「がん患者団体や医療消費者を大切にする」という考えを、組織作りや行動で実践している。1997年には、所長・消費者連携グループ(Director's Consumer Liaison Group=DCLG)を設置した。15人の患者代表が年に3、4回集まって、NCIに対してさまざまな意見を述べる。DCLGグループ事務局スタッフのバーバラ・ゲスト氏(写真:左)は、「がん患者、医療消費者の観点からの声を出してもらうのが趣旨」と説明する。

 メンバーはがん患者団体の代表が多いが、自分の出身母体の関心事を述べるのではない。「特定の団体や特定のがんの利害ではなく、あらゆるがんのあらゆるがん患者団体を含む、がん全般の視点から問題を指摘してもらう」とゲスト氏は語る。

 この患者団体とNCIトップをつなぐ組織の活動は、さまざまな成果を生んだ。例えば、患者代表が医療技術関連の委員会などの相互評価(ピア・レビュー)に参加したときに役立つ知識を集めたガイドブックが生まれた。また、社会との対話を促進するためのワーキンググループを作り、それが「NCIの傾聴と学び」というウエブサイトの設置につながった。ここで、一般から意見、苦情、提案などを受け付けるのだ。このように、DCLGは、NCIとがん患者の間の対話や相互理解を促進する提案をたくさん行っている。

ウェブサイトで一般からの意見を募集
 DCLGから誕生した「NCIの傾聴と学び」は、患者団体などとの対話サイト。100以上のがん患者団体と400人以上の一般メンバーが参加する。2カ月ごとにテーマを決めて意見募集をする。それに対するNCIの見解や対処策は、後に公表される。このサイトには患者団体リストも掲載されている。

 NCIには患者団体支援担当者がいる。その任に当たるジェームス・ハドレー氏(写真:右)は、「がん診療環境の進歩のために前線で戦ってくれているのは患者団体。そこに役立つ情報を提供することは非常に大切だ」と、その業務の意味を語る。登録された約200の患者団体に、情報提供などの援助をしている。

 そのために多様な仕組みも作っている。まず月に2回の患者団体向けニューズレターを発行し、高度に専門的な技術のことから患者支援に関することまで、幅広いトピックについて知識を届ける。また月に一回、特定のテーマを選んで、NCIの幹部が出席する電話会議も実施、ここからも患者団体からの質問に答える。患者団体からNCI幹部への面談依頼にも、積極的に応じている。

 6月19日と20日には、NCIの主催で第1回の「全国がん患者団体サミット」というイベントが開催された。テーマは「共に聴き学ぶ〜信頼を築く」。内容は、NCI各部門の詳しい解説、施設見学、患者団体活動の好事例紹介などで、質疑応答の時間もたっぷりとった。全国から約300人が参加。ハドレー氏は、「知識と経験を身につけて、より熟練したがん支援者になってもらうことが狙い」と説明する。

 NCIはこのように、がん患者団体のNCI内部への参加、患者団体からの恒常的な意見聴取、患者団体への支援活動、患者団体へのNCIの広報活動などを実施している。いずれも日本の国立がんセンターではまだ実施されていないことばかりだ。

 がん患者団体ツアー一行リーダーの山崎文昭氏(日本がん患者団体協議会理事長)は、ハドレー氏に「患者団体を教育・支援するメリットは何ですか」と尋ねた。その答えは、「患者一人ひとりに呼びかけるより、患者団体にアプローチした方が、格段に効果が大きくなる」だった。

連載5で触れたように、NCIには「NCIの代弁者として、がん研究の重要さを社会に訴えてくれるのが患者団体」という認識がある。さらに、「社会に理解してもらわなければ、自分たちの業務の発展・拡大はない」との考えが基礎にある。だから、このように戦略的に患者団体との関係作りに取り組んでいるのだ。日本の国立がんセンターも、NCIのこのような姿勢から学ぶべきものがあるだろう。

(埴岡 健一)

〔参考サイト/動画:RealPlayer形式〕
米国がん研究所「全国がん患者団体サミット」(共に聴き学ぶ〜信頼を築く)
・ パート1(3時間23分)
 http://www.videocast.nih.gov/ram/dclg061906.ram
・ パート2(2時間1分)
 http://www.videocast.nih.gov/ram/dclg_balcony062006.ram
・ パート3(6時間25分)
 http://www.videocast.nih.gov/ram/dclg_main062006.ram

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