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レポート

2006/8/22

患者団体アメリカ訪問記 第7回 −がん診療改革のヒントを探して−

「コールセンター」で患者の悩みを解消

 日本のがん患者団体一行の米国視察旅行に密着取材した。狙いは、米国から日本への教訓を得ること。今回は、米国がん研究所が実施している電話相談窓口(コールセンター)の担当者に話を聞いた。


 前回の連載6では、米国がん研究所(NCI)が、膨大な量のがんに関する情報のコンテンツを作成していることを見た。では、NCIはそれをどのように患者や市民に届けようとしているのだろうか。また、患者・家族からの質問にどう答えているのだろうか。

M.D.アンダーソンがんセンターの患者図書室の一角
M.D.アンダーソンがんセンターの患者図書室の一角

 NCIには「がん情報サービス室」(Office of Cancer Information Service=OCIS)がある。情報を製造するPDQ部門とは異なり、こちらは、必要としている人に情報を届けることが使命だ。まず、OCISは、がん情報に関する多数の冊子を印刷して配布している。これは、米国のがん病院の待合室や患者図書室などで簡単に手に入れることができる。右の写真は、テキサス州ヒューストン市にあるM.D.アンダーソンがんセンターの患者図書室の一角。こうした冊子が多数並んでおり、訪れた患者が気軽に手にとっている。

 「コールセンター(電話相談窓口)」がOCISの最大の役目だ。90人の相談員によって患者・家族・市民からの問合せに応じている。質問に対して、主にNCIのホームページにある情報の中から選択して回答する。OCIS室長のアン・マリー・ブライト氏(右下)は、「このごろの患者さんは、インターネットで勉強したうえで質問してくる人が多いので、かなり上級の質問であることがしばしばで、回答するのは易しいことではない」と、その難しさを語る。

米国がん研究所でコールセンターを担当するアン・マリー・ブライト氏
米国がん研究所でコールセンターを担当するアン・マリー・ブライト氏

 OCISでは、電話だけでなく電子メールでの質問にも答えている。また、ネット上のチャット(リアルタイムの対話)での質問にも対応している。インターネット時代になって、患者が自分でネット画面において調べることも増えた。だから、電子メールでの問合せが増えて、電話は減少傾向にある。さらには、禁煙相談部門もあり、訓練を受けた専門の相談員が配備されている。

データベース・相談窓口・コールセンターが有機的に連携
 米国で患者や家族にどのように情報が提供されているか、もう一度、全体象を眺めてみよう。右下の図を見てほしい。がん情報を提供する主な仕組みとして、(1)がん情報の中央データベース(2)病院での相談窓口(3)コールセンター――の3つが考えられる。

 米国では、(1)として国立の機関であるNCIのPDQが重要な役割を果たしている。同時に「民」が作成しているコンテンツも充実している。主力がんセンターのネットワークである米国包括がんセンターネットワーク(National Comprehensive Cancer Network=NCCN)は、患者向け医療従事者向けのガイドライン集を充実させている。NCCN加盟病院で実施されている臨床試験の検索もできる。

3つの機能を高めることで患者の悩みの解消を目指す
図 3つの機能を高めることで患者の悩みの解消を目指す

 米国がん協会(American Cancer Society=ACS)が持つ情報も豊富だ。がん別情報を検索するページ、「がんについて語る」「治療の準備」「治療時に出会う問題への対処法」などのコーナーが充実している。ここからも、臨床試験の検索ができる。

 (2)に関して、米国の病院の相談窓口で行われているサービスは、ロンバルディ包括がんセンターの現場での様子を連載3と連載4で見たとおりだ。M.D.アンダーソンがんセンターにはアンダーソン・ネットワークという仕組みがあり、1300人のがん経験者の中から話し相手を選んでくれる。ボランティアを巻き込んだサービスが発達しているのだ。

がん患者団体一行が、米国がん研究所・がん情報サービス関連スタッフと記念撮影
がん患者団体一行が、米国がん研究所・がん情報サービス関連スタッフと記念撮影

 (3)のコールセンターに関しては、NCIやACSが基本的・初歩的なサービスを行っている他、がん種類別の相談を多数のがん患者団体が実施している。乳がん患者団体のY-meが運営する電話相談24時間ホットラインや、すい臓がん患者団体PanCANの「患者連携サービス」が有名だ。ゆっくりと相談に乗ったり、そのがんの経験者を紹介したりするのは、がん患者団体ならではのきめ細やかな気配りだ。

 米国の状況から参考になるのは、(1)中央データベースは政府が先行し、医療界や民間が厚みを増す役割をしている(2)病院の相談窓口は多様なサービスを提供していると同時に、ボランティアを有効活用している(3)全国から気軽に相談できるコールセンターが重要な役割を果たしている――といったことだ。また、図の3つの機能が有機的に連携して、信頼できる情報を広く患者に届けるために力を合わせているところもポイントだ。

 日本では、中央データベースに当たるがん対策情報センターが10月に開設される。地域がん診療拠点連携病院に必ず設置することになっている患者支援センターが、病院での相談窓口の中核となる。大規模なコールセンターはまだ存在しないが、設置が必要だろう。日本も3つの機能を持ち、それぞれを高めていくことが大切だ。

(埴岡 健一)

米国がん研究所(NCI)のがん情報サービス(CIS)の歩み
1975年 17カ所のがんセンター病院と、がん情報サービス実施の契約を締結
1976年 コールセンターを開始
1989年 相談員に臨床試験に関する研修を実施し、問合せに対して標準化された検索ツールを使って回答できる体制に
1996年 がん情報サービスを各国に浸透させるために、「国際がん情報サービス・グループ」を設置
1999年 がん情報サービス実施の契約を14カ所で締結・更新
2000年 禁煙相談コールセンターを恒常化
2001年 チャットによる問合せ対応を開始
2004年 累積問合せ電話件数1000万件を突破
2006年 NCIのCISサービス、30周年を迎える

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