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レポート

2006/7/11

患者団体アメリカ訪問記 第3回 −がん診療改革のヒントを探して−

ソーシャルワーカーが提供する充実のサービス

 5月30日から6月4日まで、日本のがん患者団体の一行3人が米国を旅行した。狙いは、米国から日本への教訓を得ること。今回は、日本とは異なる米国のがん専門ソーシャルワーカーの実態と患者に提供される様々なサービスをご紹介する。


ロンバルディ包括がんセンターの玄関前で
がん専門ソーシャルワーカーのジョアン・アサーソン氏

 米国のがんセンターは、患者1人当たりのソーシャルワーカーの数が日本より格段に多い。例えば、M.D.アンダーソンがんセンター(456床、テキサス州ヒューストン)ではソーシャルワーカーが65人(2003年実績)もいるのに対し、愛知県がんセンターでは1人(同)だけだ。

 前回紹介したロンバルディ包括がんセンター(以下、ロンバルディ)では、外来だけで成人部門3人、小児部門2人の合計5人のソーシャルワーカーを擁している。ロンバルディで10年前からがん専門ソーシャルワーカーとして働いているジョアン・アサーソン氏(写真右)の話を聞くと、日本のソーシャルワーカーとはひと味もふた味も違う。


米国のソーシャルワーカーは積極的に働きかける
 日本では人数が少ないこともあって、ソーシャルワーカーは基本的に患者や家族からのアクションがあってから対応する。だが、ここでは待ちの姿勢ではない。まず、すべての患者にソーシャルワーカーのサービスが必要かどうかを確認する。簡単な1枚の調査票(下図)を渡して、困っていることがないかを尋ねるのだ。何か記入があれば3日以内に患者に連絡することになっている。 

ソーシャルワーカーのサポートが必要かどうか尋ねる際に使う調査

 患者からの自己申告だけではない。医師や看護師の控え室には、「ソーシャルワーカーが提供できるサービスリスト」を掲示している。医療チームの間にソーシャルワーカーの仕事は広く認知されているとはいえ、忙しい日常診療の中では患者の社会的・精神的悩みはつい忘れられがちだ。そこで、「こんなことがあったら、すぐこのソーシャルワーカーを紹介してください」と、常に注意喚起を促しているわけだ。

キャンサーサバイバーツールボックス(がん経験者道具箱)
キャンサー・サバイバー・ツールボックス(がん経験者道具箱)

 アサーソン氏は自分の役割を、次のように説明する。「診断直後、治療初期、再発期など、段階によって患者のニーズは異なるし、がんという病気は患者だけでなく家族にも影響が及ぶ。一人ひとり状況も環境も違うので、用意したプランがそのまま当てはまることはなく、手作りで対応することが必要だ。特に病状や治療が変化したときにケアの連続性の面で問題が起こることが多く、医療チームのメンバーをうまくつないで、そうしたことを丁寧に解決していくことが大切になる」。

 アサーソン氏がお薦めする情報源は、キャンサー・サバイバー・ツール・ボックス(がん経験者道具箱)だ。がん専門ソーシャルワーカー協会が、がん患者団体である全米がん経験者連合と共同で作った、がん患者ガイドだ。インターネットですべて読んだり、聞いたりすることができるし、その内容をCD8枚に入れたセット(写真上)として無償で配布している。


患者に化粧の仕方を教えるサービスも
 ロンバルディのソーシャルワーカーは、「Look Good…Feel Better(お化粧して、気分よくしましょう)」というサービスも提供している。これは米国がん協会と化粧品業界団体が支援しているもので、プロの美容員が女性のがん患者に化粧の仕方を教えるものだ。

 抗がん剤で頭髪が抜けたり、治療の影響で皮膚が影響を受けたりすると、治療による疲労や抑うつ傾向も重なって、何事にも消極的になりがちだ。ところがおしゃれなかつらをして、きれいに化粧をすると気持ちが明るくなり、外出をするなど行動的になれることが多い。「Look Good…Feel Better」のような活動は、米国ではかなり広く浸透している。

自身もアーティストのナンシー・モーガン氏
自身もアーティストのナンシー・モーガン氏

 またロンバルディでは、芸術や工芸分野のアート・セラピーも重視する。ダンス、絵画、作詩、音楽、ビーズ制作などの多様なプログラムが組まれている。作家でもある、人文芸術部長のナンシー・モーガン氏(写真右)は、「がんの治療においては、肉体的なことは何らかの解決策があっても、精神的な問題となると対処法が見つからないことが多い。しかし、アートに患者が参加し、身体や手を動かして主体的に関わることで、厳しい闘病の中でも患者は希望と生活の潤いを得ることができる。アートには癒しの力がある」という。ロンバルディで治療を受けた経験があるたくさんのアーティストが、ボランティアでアート・セラピーの実施に協力してくれている。

 このように米国のがん患者は、看護師やソーシャルワーカーをキーパーソンにして、日本に比べてかなり充実したサービスを提供されている。

(埴岡 健一)

〔参考サイト〕
・お化粧して、気分よくしましょう
 LOOK GOOD…FEEL BETTER

キャンサー・サバイバー・ツール・ボックス(がん経験者道具箱)
・がん専門ソーシャルワーカー協会
 Association of Oncology Social Work (AOSW)

・がん専門看護師協会
 Oncology Nursing Society (ONS)

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