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レポート

2006/7/4

患者団体アメリカ訪問記 第2回 −がん診療改革のヒントを探して−

ワシントンDCのがんセンターが行う患者中心の医療

 5月30日から6月4日まで、日本のがん患者団体の一行3人が米国を旅行した。狙いは、米国から日本への教訓を得ること。最初の訪問先は、ワシントンDCにあるジョージタウン大学の「ロンバルディ包括がんセンター(Lombardi Comprehensive Cancer Center)」である。


ロンバルディ包括がんセンターの玄関前で
ロンバルディ包括がんセンターの玄関前で(左から、山崎文昭氏、ツアーガイドのポーラ・キム氏、内田絵子氏、海辺陽子氏)

 ロンバルディ包括がんセンター(以下、ロンバルディ)は、一言でいうと上級がんセンター(写真右)だ。米国の認定がん病院(米国外科学会のがん委員会が認定)は約1500カ所あるが、そのうち、国立の米国がん研究所が指定する包括がんセンターは全米にわずか39カ所しかない。一般の診療のみならず、基礎的研究、臨床試験、地域のがん検診やがん予防普及啓発活動などを行うことが指定要件となっている。ロンバルディの年間の新患数は約3500人と、それほど規模は大きくない。


3種の専門医が90分かけて“ワンストップ診療”
 ロンバルディには乳がんセンターがある。部長で臨床腫瘍内科専門医のロバート・ウォーレン氏(写真右:上から2つ目)がその概要を説明してくれた。乳がんの診断と治療方針の決定は、ここでは乳腺外科医、腫瘍内科医、放射線腫瘍医の3人の専門医によって行われる。3人は診察日の前日に、病理標本やマンモグラフィー(乳房レントゲン撮影)の画像、エコー(超音波診断装置)の記録などを見て診断をつけた上で、治療と患者への説明の方針を決めておく。

乳がんセンターの臨床腫瘍内科専門医師のロバード・ウォーレン氏
乳がんセンターの臨床腫瘍内科専門医のロバード・ウォーレン氏

 診察日にも3人が同時に患者に会う。3人のうち1人が問診と診察をした上で、3人が順番に合計45分ぐらいかけて治療方針を説明し、情報を提供する。そして、それから30分ぐらいは患者からの質問に受け答えをする。こうして最初の診察の際に、1人の患者に3人の医師が接する時間は通常、総計60分から90分にもなる。

  米国では、がん患者が最初の治療方針を決める前に、外科、内科、放射線の3人の医師の意見を聞くのは常識となっているが、まだ、3つの診療科を別々に訪問する場合も多い。ロンバルディが実施するような「3種の専門医によるワンストップ診療」は、患者にとっての労力を格段に少なくするし、その場で患者が別の立場の医師の意見を比較対照できるという大きなメリットがある。こうした“多職種ワンストップ診療”は、米国の主要がんセンターではすでにかなり広く浸透している。

 3人の医師が同時に診察するのはコスト高だが、がんセンター側にもメリットがある。他の医師や病院からの紹介事例では、そうした患者のうち25%がロンバルディに移ってすべての治療を受ける。また、40%は一部の治療をロンバルディで受ける。患者誘致効果を考えると、3人の医師によるワンストップサービスは病院にとってもプラスになっている。


看護師やソーシャルワーカーなど複数の職種が同じオフィスに
乳がんセンターの待合室。予約制なので、ホテルロビーのようにゆったりしている
乳がんセンターの待合室。予約制なので、ホテルロビーのようにゆったりしている

 外来診療部門部長で、がん専門看護師のジャニス・オッペンハイマー氏は、患者が受ける総合的サービスを説明する。「ここでは専門医、専門看護師、ソーシャルワーカーなどのスタッフが同じオフィスに同居しています」。複数の職種がチームとして働いて、患者の状況などの細かな情報も共有されるため、最適な医療やケアが提供されやすい環境となっている。

 がんと診断された患者には、丁寧な情報提供が行われる。医師と看護師から病気、治療選択などに関する説明があり、各種の冊子や案内書も渡される。ソーシャルワーカー、サイコオンコロジスト(精神腫瘍科医師)などのサービスが受けられることも伝えられる。また週に2度は新規患者のための「病院入門クラス」を開催している。施設内見学をしてもらうことで治療を受ける前の不安を減らす狙いからだ。

病院玄関脇のリソース(資料)コーナー。患者は様々な冊子を手に取ることができる
病院玄関脇のリソース(資料)コーナー。患者は様々な冊子を手に取ることができる

 オッペンハイマー氏は、「患者に提供できるサービスはさまざまあるが、患者によってニーズも適性も異なる。だから、看護師やソーシャルワーカーが、ボランティアサポートグループやチャプレン(病院内牧師)など、その患者に必要なサービスにつないでいく」と語る。米国では看護師やソーシャルワーカーが患者のためのコーディネーターの役割を果たしているわけだ。 (第3回に続く)

(埴岡 健一)

 

 

〔参考サイト〕
ロンバルディ包括がんセンター
米国がん研究所が指定する包括がんセンター
ロンバルディ包括がんセンター(乳がんセンター)
ロンバルディ包括がんセンター(多職種のチーム医療を提供)
ロンバルディ包括がんセンター(提供している各種の患者サービス)
ロンバルディ包括がんセンター(紹介している患者サポートグループなど)
米国臨床腫瘍学会、専門医検索ページ
米国臨床放射線腫瘍学会、専門医検索

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