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レポート

2006/7/11

乳がん脳転移例の治療の実態は?

脳転移のスクリーニングや放射線治療の方針に変化

 乳がんの脳転移例に対する治療について、わが国の実態を把握する研究が進んでいる。研究に取り組んでいるのは、日本乳癌学会が2005年に設置した班研究「乳癌脳転移の最適な診断及び治療法の確立に関する研究」のメンバー。7月7日から8日に金沢市で開催された日本乳癌学会で、班長を務める京都大学の光森通英氏が中間報告を行った。

 班研究が設置されたのは、乳がんの脳転移をめぐる診断や治療に変化が現われているためだ。これまで脳転移は、神経症状を伴う多発転移として発見されることが多く、全脳照射が標準治療とされてきた。しかし最近、トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の登場に代表されるように薬物療法が進歩したこともあって、乳がん患者の予後が改善した結果、これまで顕在化してこなかった脳転移の症例が目立つようになっている。このため、神経学的に無症状である症例に対しても積極的に脳転移のスクリーニングを行う施設が出始める一方、放射線治療では定位手術的照射(ラジオサージャリー)を優先する動きが活発化している。

 そこで班研究では、まず診断や治療方針などの実態を把握し、その上で最適な診断および治療法を確立することを目指している。今回の中間報告では、2005年度に実施したアンケート調査をもとに、乳がんの手術件数や脳転移症例数、放射線治療設備や脳外科医の有無のほか、脳転移のスクリーニングや脳転移に対する放射線治療の治療方針などを明らかにした。アンケート対象は日本乳癌学会の外科系評議員351人(240施設)で、これまでに151施設から回答を得た(回収率62.9%)。

脳転移のスクリーニングは「行う」「行なわない」が半々
 主な調査結果は次の通りだ。2004年度の乳がんの新患手術症例数は、51〜100例と回答した施設が35%で最も多く、50例以下が22%、 101〜150例が19%で続いた。151〜200例は9%、201例以上は15%で、各施設でばらつきが見られた。一方、脳転移症例数は、60%の施設が5例以下と回答。6〜10例が29%、11〜20例が8%、21例以上が3%だった。

 放射線治療設備は、「放射線科あるいは放射線治療科があり常勤医がいる」と回答した施設が68%と大半だった。ただし「放射線科あるいは放射線治療科なし」も25%あり、施設間で差が見られた。一方の脳外科についても、「常勤医がいる」が73%だったが、「非常勤のみ」が9%で、「なし」は18%もあった。

 脳以外に転移を認めるが神経学的に無症状である症例に対する脳転移のスクリーニングについては、「ルーチンに行う」が11%、「一定の条件の場合に行う」が40%と合わせて「行う」は51%となり、「行わない」の48%と拮抗していた。乳がん以外では、スクリーニングを行わないことが標準的な治療方針とされており、違いが際立つ結果となった。

約3割が「ラジオサージャリーを優先する」
 脳転移に対する放射線治療については、定位手術的照射(ラジオサージャリー)と全脳照射のどちらを優先するかを尋ねたが、「症例ごとにどちらかを選択する」が68%と最も多かった。ただし、「ラジオサージャリーを優先する」が27%もあり、治療方針の変化が裏打ちされた格好だ。「初回は基本的に全脳照射を行う」は9%に過ぎなかった。

 ラジオサージャリーを優先する理由は、全脳照射より効果が大きい(73%。複数回答、以下同)、全脳照射の方が認知症のリスクが高い(71%)、全脳照射の際の化学療法の中断を避けるため(25%)などだった。

 なお、乳がん脳転移の手術症例数は年間0〜1例が74%と最も多く、2〜5例が23%だった。6〜9例が2%、10例以上が1%と少数だった。

 班研究では今後、乳がん診療に大きな変化をもたらしたと考えられるハーセプチンの承認後に焦点を当て、脳転移が見つかった症例を集積し、初回治療とアウトカム(脳内制御、生存率、有害事象など)との関係を解析することになっている。(三和 護)

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