このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2006/7/4

米国がん協会が「患者団体リーダー養成講座」実施

“がん予防”への取り組みが効果を生み始めた米国

 米国がん協会(ACS)は6月に東京で、日本のがん患者団体のリーダーを育成する講座「米国がん協会大学(ACSU)」を開催した。講座3日目には、「がん予防と早期発見」という講義が行われた。他の講義は患者団体の運営に関するテーマだが、これは予防と早期発見の重要性を改めて認識してもらうための教育的な内容だ。



 米国では、がんの罹患と死亡を減らす決め手は予防と早期発見にあるとして、政府、非営利団体、ボランティア団体がそうした活動に積極的に取り組んでいる。がん患者団体も活動メニューに取り入れていることが多い。米国ではがんの死亡者数が減少に転じたが、予防対策とタバコ喫煙の制限が効果を生みはじめたという見方が多い。

 講師は、米国がん協会(ACS)東部支部長のカーメル・コーエン氏と、国立がんセンターがん予防・検診研究センター情報研究部部長の祖父江友孝氏が務めた。がんの予防や早期発見にがん患者団体も関わっていくべきこと、その際の考え方や具体的行動方法などについて、レクチャーと議論が行われた。

患者団体は予防や早期発見への啓発活動を
 まず、コーエン博士が「患者団体はがんを治療している人をサポートするだけでなく、活動の中に予防や早期発見への啓発を盛り込もう。それが地域の役に立つ」と、地元に密着して、がん予防と早期発見の必要性を地道に訴えかけていく重要性を強調した。

 米国ではさまざまな調査によって、肥満や高脂血症、糖尿病なども、がんになるリスクを高めるという結果が出ている。そこで、こうした多様な疾患の体験者が連携して、がんやそれ以外の病気全般の発生を抑えていこうという運動が始まっている。コーエン氏は、こうした活動の実例を挙げて、がん撲滅(予防)と他の領域の境界線がなくなりつつあり、今後はがん以外の患者団体などとの協働の可能性が高まるという見通しを示した。

 コーエン氏の講義の後、受講生たちは、(1)予防や早期発見にどのように関わってきたか、(2)今後、どのようなことに取り組んでいかなければならないか――といったテーマで自らの活動内容を振り返った。

「がん登録」はがん対策の戦略の基礎になる

祖父江友孝氏(中央)の講義を聞く受講生たち
祖父江友孝氏(中央)の講義を聞く受講生たち

 一方、祖父江氏は、日本のがん医療を変えていく有効な手段の一つとして「がん登録」の必要性を強調した。都道府県単位などでがんの罹患者数、治療成績などを調べる「地域がん登録」、病院ごとに患者の数や治療成績などをデータベース化する「院内がん登録」がある。こうしたがん登録があってこそ、どんながんがどれぐらい発生して、どの程度治すことができているのか、あるいは発生が増えているのか減っているのか――といったことが分かる。「がん対策の戦略を作成するためにも、効果を判定するためにも基礎になるもの」(祖父江氏)というわけだ。

講義の後で修了証が一人ひとりに手渡された
講義の後で修了証が一人ひとりに手渡された

 受講生から「がん登録に対して、患者団体が支援できることはあるか」という質問があった。祖父江氏は「がん登録の必要性をがん患者団体から広く一般に説明してほしい。患者の同意を得ずに患者の情報を利用することに疑問を感じる向きもあるようだが、個人情報は保護される。患者の同意を取る仕組みにすると、なかには同意しない人が出て、社会でがん対策に活用できる正確な統計が得られない。政府は、がん登録の情報の適切な扱い方に関してすでに確認をしている。がん登録は表には見えにくいが、がん患者全体をできるだけたくさん救うための基礎になるものだ」と答えた。

 受講生からは、どのように患者の個人情報やプライバシーが保護されるのかという質問があり、祖父江氏やコーエン氏が欧米の状況も交えながらその仕組みを説明した。こうしたやりとりを通して、患者団体のがん登録に対する関心は深まったようだ。

参加者18人のネットワーク構築が大きな成果

受講を終えた修了生たち。参加者同士の交流を得られたことも成果となった
受講を終えた修了生たち。参加者同士の交流を得られたことも成果となった

 こうして4日間にわたって14団体の18人が、(1)提供サービスの優先付け、(2)マスコミに取り上げてもらう方法、(3)協力者集め、(4)資金集め、(5)組織運営法――など7つのプログラムを学び終え、「米国がん協会大学(ACSU)」の修了証を手渡された(写真右:上から2つ目)。

 修了式には、国立がんセンター総長の垣添忠生氏も出席し、「非常に充実した講義内容で満足している。このところ、がん患者団体のみなさんの後押しで様々ながん対策に大きな進展が見られてきた。ACSUで学んだことを活かして、みなさんの活動をさらに発展させていただきたいし、今後もお力添えをお願いしたい。国立がんセンターも全力を尽くして患者さんの支援をしていきたい」と述べた。

 受講生にとっては実りのある4日間だったようだ。参加した受講生は、口々に「参加した18人のネットワークができたことが、もう一つの大きな成果」と語る。個々の経験を分かち合うワークショップや受講後のフリータイムが親睦(しんぼく)を深める機会になり、さっそく参加者によるメーリングリストも発足した。

 ある参加者は、「一つひとつ対象としているがんは違っても、がん患者の生活の質(QOL)を高めたい、サポートをしていきたいという目標は同じなので、そこに向かって力を合わせていけば、一緒にやることでもっと大きなことができるのではないか」と語った。

 このところ、日本では、がん患者が連帯した成果として「がん対策基本法」などが実現した。ACSUでは繰り返し、連帯と連携によってこそより大きな成果が得られることを、世界の実例を交えながら教えられた。参加者たちは、今後、独自性は保ちながらも、協働できるところは協働しながら、がん対策に取り組んでいくことを誓い合った。

 それぞれの患者団体が、ACSUで学んだことを糧に、がん患者とその家族、そして地域を支援するための新たな一歩を踏み出そうと、それぞれの活動拠点に戻っていった。

(渡辺 千鶴)

※「がんナビ通信」(週刊:購読無料)を配信中。購読申込はこちらです。

この記事を友達に伝える印刷用ページ