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2018/6/11

既治療のHER2陽性乳癌と胃癌に抗体薬物複合体DS-8201aが有望な抗腫瘍効果を示す【ASCO2018】

森下紀代美=医学ライター

 HER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)trastuzumab deruxtecanDS-8201a)は、HER2陽性の乳癌または胃癌であらゆる治療を受けた(heavily treated)患者において、有望な抗腫瘍効果が得られることが、日米共同の大規模なフェーズ1試験から示された。6月1日から5日まで米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2018)で、愛知県がんセンター中央病院乳腺科部の岩田広治氏が発表した。

 DS-8201aは、抗HER2抗体に新規のトポイソメラーゼI阻害化合物Dxdを結合させた製剤で、ペイロードの高い効果、バイスタンダー効果、高いリンカー安定性などの特徴を持つ。

 フェーズ1試験は、HER2を発現している固形腫瘍を有する患者を対象に、DS-8201aの安全性と有効性を評価するため、2015年に開始された。2つのパートから構成され、パート1は用量漸増コホート、パート2は用量拡大コホートで検討が行われた。

 パート2の対象は、T-DM1による前治療を受けたHER2陽性乳癌患者(IHC 3+またはISH+)、トラスツズマブによる前治療を受けたHER2陽性胃癌患者(IHC3+またはIHC2+/ISH+)、標準的な化学療法による前治療を受けたHER2低発現(IHC 2+/ISH−、IHC1+/ISH−)の乳癌患者、その他のHER2を発現している固形腫瘍(大腸癌、非小細胞肺癌など)の患者、そして薬物動態コホートとしてのHER2陽性またはHER2低発現(IHC1+、IHC2+、IHC3+および/またはISH+)の乳癌患者(薬物動態コホート)とされた。DS-8201aは、T-DM1またはトラスツズマブによる前治療を受けた患者には5.4mg/kgまたは6.4mg/kgを3週毎、その他の患者には6.4mg/kgを3週毎に投与した。

 2018年4月18日をデータカットオフ日とし、HER2陽性乳癌患者は111人、HER2低発現の乳癌患者は34人、HER2陽性胃癌患者は44人、他のHER2を発現している固形腫瘍の患者は51人となった。年齢中央値はそれぞれ55.0歳、54.5歳、68.0歳、59歳、前治療のレジメン数中央値は7.0、7.5、3.0、3.0、腫瘍径中央値は6.0cm、5.6cm、5.6cm、6.6cmだった。

 腫瘍の縮小は全対象の86.3%で認め、奏効が確認されたのは49.3%だった。腫瘍の縮小が認められた患者の91.5%は、6週時の最初の画像評価で縮小が確認された。多くの症例では奏効が長期間持続していた。

 癌種別に効果をみると、T-DM1による前治療を受けたHER2陽性乳癌患者99人では、奏効率は54.5%、病勢コントロール率(DCR)は93.9%、奏効期間中央値および無増悪生存期間(PFS)中央値は未到達だった。

 一方、前治療を受けたHER2低発現の乳癌患者34人でも、同様の効果が得られ、奏効率は50.0%、DCRは85.3%となり、奏効期間中央値は11.0カ月、PFS中央値は12.9カ月だった。これらの患者の奏効率については、2017年12月に米国で開催されたSAN ANTONIO BREAST CANCER SYMPOSIUM(SABCS2018)で発表された31.6%よりも改善した。岩田氏は「時間が経過してデータがmatureとなり、また多くの患者が治療を継続したため」と説明した。

 また、トラスツズマブによる前治療を受けたHER2陽性胃癌患者44人では、奏効率は43.2%、DCRは79.5%、奏効期間中央値は7.0カ月、PFS中央値は5.6カ月となった。

 さらに、その他の固形腫瘍の患者51人では、奏効率は38.7%、DCRは83.9%、奏効期間中央値は12.9カ月、PFS中央値は12.1カ月となった。

 DS-8201aを1回以上投与した患者では、有害事象は98.8%に発現し、グレード3以上の事象は50.2%で観察された。薬剤に関連する有害事象は全グレードで97.5%、グレード3以上の事象は41.9%で観察された。治療中止に至った有害事象は9.5%だった。死亡は4.1%(10人)発生し、内訳は肺臓炎4人、病勢進行2人、間質性肺疾患1人、イレウス1人、誤嚥性肺炎1人、肺炎1人だった。間質性肺疾患、肺臓炎については、現在独立判定委員会による精査中であるという。

 多く発現した有害事象は、嘔気68.9%(グレード3以上:2.5%)、食欲低下55.6%(3.3%)、嘔吐34.9%(1.7%)、好中球減少症25.3%(15.4%)、貧血32.0%(14.9%)、白血球減少症24.1%(12.4%)、血小板減少症28.6%(10.4%)などだった。その他の臨床検査値の異常は全般的にグレードが低く、DS-8201aの投与は継続された。また急性輸注反応の頻度は低く、重篤な反応は観察されなかった。

 これらの結果から、T-DM1治療抵抗性のHER2陽性進行乳癌を対象とするフェーズ2試験が進行中であり、この試験でも有望な結果が得られれば、研究グループは承認を目指したいとしている。DS-8201aについては、その他にもHER2発現のさまざまな癌種を対象として複数の臨床試験が開始されている。

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