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2018/3/5

NTRK陽性癌にlarotrectinibが米国で申請開始、臓器横断的な抗癌剤の開発進む

横山勇生=編集委員

 肺癌、胃癌、大腸癌といった癌の種類ごとに薬剤を開発するのではなく、癌を引き起こす遺伝子の異常に注目して、その遺伝子異常を持つ癌を臓器横断的に治療する薬剤の開発が進められている。昨年5月には、「マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(deficient mismatch repair: dMMR)の固形癌」を対象に、米国でペムブロリズマブが承認された。MSI-HまたはdMMRの固形癌は大腸癌、子宮内膜癌、胃腸系の癌に多く、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌には少ないとされている。抗PD-1抗体ペムブロリズマブは、日本では悪性黒色腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌に承認されている。

 現在、抗癌剤開発のターゲットとして注目されている遺伝子異常の1つが、トロポミオシン受容体キナーゼ融合遺伝子(NTRK融合遺伝子)だ。NTRK融合遺伝子は虫垂癌、乳癌、胆管癌、大腸癌、消化管間質腫瘍(GIST)、乳児型線維肉腫、肺癌、悪性黒色腫、膵癌、甲状腺癌、肉腫など様々な癌で見つかっており、トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)を活性化し、腫瘍を増殖させる。

 そしてNTRK融合遺伝子阻害薬larotrectinib(LOXO-101)の開発も進んでいる。Larotrectinibを開発する米Loxo Oncology社は昨年12月20日に、NTRK融合遺伝子から作られるNTRK融合蛋白質陽性の切除不能または転移を有する成人、小児の癌を対象として、米国食品医薬品局(FDA)に段階的申請(rolling submission)を開始したことを発表している。

 The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE誌の2月22日号に掲載されたのは、larotrectinibが、小児、成人のNTRK融合遺伝子陽性癌に高い効果を示したという試験結果だ(DOI: 10.1056/NEJMoa1714448)。成人を対象にしたフェーズ1試験、遺伝子変異がある様々な癌を対象にしたバスケット試験であるフェーズ2試験NAVIGATE、小児を対象にしたフェーズ1/2試験SCOUTに参加した55人のNTRK陽性癌患者(4歳から76歳)を解析した。唾液腺癌、小児性線維肉腫、甲状腺癌、大腸癌、肺癌、悪性黒色腫、消化管間質腫瘍などが含まれていた。結果の一部は既に昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されていたが、さらに観察期間を3カ月延長した結果が掲載された。

 Larotrectinibの奏効率は、中央判定で75%(95%信頼区間:61-85)、研究グループの判定で80%(同:67-90)。完全奏効となったのは、中央判定で13%、研究グループの判定で16%だった。観察期間中央値は、中央判定で8.3カ月、研究グループの判定で9.9カ月、奏効期間中央値と無増悪生存期間(PFS)中央値は未到達だった。1年時点で奏効したうちの71%で効果が持続していた。2017年7月17日をデータカットオフとして、効果のあった患者の86%で治療が継続中か治癒を目的とした手術を受けていた。

 日本では、国立がん研究センター東病院が実施している臨床試験リストの中にLOXO-101が記載されている。国立がん研究センター東病院のホームページには、第I/II相試験(国際共同治験)の選択基準として、1. 融合遺伝子NTRK1、NTRK2またはNTRK3を持つ局所進行性または転移性の悪性腫瘍を有する患者、2. 標準的な治療法では効果が認められない、または副作用などの理由で続けることが出来ない患者、3. 評価病変を有する患者、4. 18歳以上の患者、5. 各種臓器能が保たれている患者――があげられている。

 Bayer社2017年11月に、larotrectinibと、larotrectinib耐性となった患者にも有効な次世代NTRK阻害薬であるLOXO-195の開発と商業化に関する全世界での独占的な協力契約を締結している。その中で、Loxo社が全世界における開発、米国での承認活動をリードし、Bayer社は米国外での承認活動、全世界での商業化活動をリードするとしている。現時点で日本法人のバイエル薬品は、日本での権利、また日本での開発状況については、回答を控えるとしている。

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