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2015/7/5

日本人のHER2陽性進行・再発乳癌に対するT-DM1、投与初期の安全性は良好【乳癌学会2015】

森下紀代美=医学ライター

 日本人のHER2陽性の手術不能・再発乳癌患者を対象として、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の安全性を検討した多施設共同、単群、フェーズ2のJO29317試験から、投与初期の安全性は良好であり、新たな安全性上の懸念は認められないことが示された。7月2日から4日まで東京都で開催された第23回日本乳癌学会学術総会で、大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科の中山貴寛氏が発表した。

 T-DM1では、特徴的な有害事象として血小板減少症、肝機能毒性などが報告されている。過去に国内で実施されたフェーズ2のJO22997試験において、日本人における血小板数減少、AST増加は、海外の臨床試験と比較して重症度が高い傾向が認められている。ただし、これらの臨床検査値異常の多くは、投与初期の1-3サイクル目に認められる傾向にあった。

 中山氏らは、日本人におけるT-DM1投与時の安全性、特にT-DM1の特徴的な有害事象を検討することを目的として、JO29317試験を実施した。主要評価項目は安全性で、結節性再生性過形成、過敏症/Infusion reaction、血小板減少症、肝機能検査値異常などを評価した。

 対象は、トラスツズマブおよび化学療法既治療のHER2陽性手術不能または再発乳癌の患者で、T-DM1 3.6mg/kgを3週間に1回投与した。同試験は、通常診療としてT-DM1が使用可能となるまでの短期間に実施されたため、最低3サイクル投与することとし、増悪(PD)または許容できない有害事象の発現、または通常診療としてT-DM1が使用可能となった段階で、試験治療を中止することとした。治験期間は2013年12月19日から2014年8月7日までだった。

 2014年1月から4月までに68施設から234人が登録され、少なくとも1回の治験薬投与を受けた232人が安全性解析対象集団とされた。全例で投与中止となり、中止理由の内訳は、通常臨床への移行(71.2%)、効果不十分(22.8%)、有害事象(2.2%)などだった。

 対象の年齢中央値は57.0歳(範囲:20-87)、ECOG PS 1以下の患者が98%以上を占め、ホルモン受容体陽性の患者は52.6%だった。転移・再発乳癌に対する前治療の化学療法のレジメン数中央値は3.0(範囲:1-15)、投与サイクル数中央値は3.0(範囲:1-9)だった。
 
 全グレードの有害事象は228人(98.3%)、グレード3以上の有害事象は109人(47.0%)に発現した。重篤な有害事象は20人(8.6%)に発現したが、死亡に至った有害事象はなかった。投与中止に至った有害事象は5人(2.2%)に発現し、心室細動、うっ血性心不全、間質性肺炎などが各1人(0.4%)で認められた。減量に至った有害事象は9人(3.9%)に発現したが、その多くは血小板減少で6人(2.6%)だった。

 全グレードで20%以上、グレード3以上で5%以上に認められた有害事象は、血小板数減少(全グレード:69.8%、グレード3以上:25.9%)、AST増加(45.3%、5.2%)、ALT増加(29.3%、1.3%)、悪心(25.0%、1.3%)、倦怠感(24.6%、0.9%)だった。発熱(全グレードのみ:24.6%)、鼻出血(同:23.7%)ではグレード3の事象は認めなかった。2人以上で観察された重篤な有害事象は、悪心、発熱、倦怠感、肝機能異常、貧血で、いずれも約1%だった。

 T-DM1に特徴的な有害事象のうち、血小板減少、肝機能値異常は投与初期に重症度が高く認められたが、忍容性は良好だった。血小板減少症(前述)の他、肝毒性(全グレード:60.3%、グレード3以上:10.8%)、末梢性ニューロパチー(7.8%、0.4%)、過敏症/Infusion reaction(1.7%、0%)、肺臓炎(1.3%、0.4%)、心機能障害(0.4%、0.4%)が認められたが、そのほとんどはグレード1または2だった。結節性再生性過形成は認めなかった。

 全対象の血小板減少の推移をみると、1サイクル目のDay 8で最低値を示し、その後推移しながら減衰していく傾向がみられた。こうした傾向は過去の報告と同様だった。AST、ALTの推移も同様であり、概ね忍容性は良好と考えられる結果だった。

 同試験の用量変更基準は過去の臨床試験などとは異なり、投与日のグレードで用量変更を判断することとされた。すなわち、グレード3または4の有害事象が発現しても、次のサイクルの投与日にグレード2以下に改善していれば、減量せずに投与可能とされた。そのため、グレード4の血小板数減少またはグレード3の肝機能値異常を発現後、T-DM1 3.6mg/kgを継続した症例のうち、一部の症例で臨床検査値の推移の悪化が認められた。

 中山氏は「原則として、添付文書に従った減量を行いながら治療していただくよう、お伝えしたい」と述べた。

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