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2015/4/20

同時性の大腸癌両葉肝転移に対する集学的治療、術前化学療法では投与期間とレジメンに注意を【外科学会2015】

森下紀代美=医学ライター

 同時性の大腸癌両葉肝転移では、治癒に向けさまざまな治療を組み合わせた集学的治療が必要であり、術前化学療法を行う場合は投与期間とレジメンに注意すべきであることが示された。4月16日から18日まで名古屋市で開催された第115回日本外科学会定期学術集会で、千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学の吉留博之氏が発表した。

 大腸癌両葉多発肝転移では、肝切除の意義が認められているものの、高率な再発が問題となっている。さまざまな集学的治療が検討される中、術前化学療法、肝切除のタイミング(原発巣との同時切除か待機的肝切除か)、術後補助化学療法などについて、明確にしていく必要がある。肝転移に対する術前化学療法には、Conversion chemotherapyとneoadjuvant chemotherapyがあり、切除可能症例に対して行う場合には微小肝転移を制御できる可能性が重要になるとみられる。

 吉留氏らは、両葉肝転移の中で特に同時性転移に焦点を当てて問題点を検討するとともに、術前化学療法の影響について検討した。

 同科で初回肝切除を行った400人を超える患者の多変量解析では、同時性転移が生存に関する因子として抽出されている。これらの患者の切除標本の評価では31%に微小肝転移を認め、平均径は0.51mm、平均個数は3個だった。微小肝転移の顕在化により、待機的肝切除では根治的肝切除と早期の肝転移を減少する可能性が示唆されている。

 肝切除適応基準を満たした、同時性の両葉肝転移の患者83人のレトロスペクティブな解析では、同時切除は52人、待機的肝切除は31人に行われ、待機期間は2カ月(中央値)だった。21人(68%)に新たな肝転移の出現を認め、過去の待機的肝切除の検討と比べて、両葉肝転移では微小肝転移の発生率が高いことが示された。

 83人の生存期間中央値(MST)は25カ月、5年全生存率(OS)は33%だった。OSは、同時切除と比べて待機的肝切除で有意に改善したが、原発巣のリンパ節転移がN1以下の患者では待機的肝切除のみで有意に改善した(p=0.04)のに対し、N2以上の患者では、待機的肝切除を施行しても2群間に差はなかった。多変量解析では、待機的肝切除、原発巣のリンパ節転移、5個以上の肝転移が、生存の予測因子として抽出された。したがって、同時性の両葉肝転移で原発巣がpN2以上の患者には、術前化学療法の必要性があると考えられた。

 術前化学療法を行わなかった患者では、肝臓における無再発生存期間(HFS)は同時切除と待機的肝切除で差はなかったが(p=0.098)、OSはそれぞれ23カ月と95カ月となり、有意差がみられた(p=0.02)。吉留氏は「根治が期待できる待機的肝切除に加え、肝実質が温存できれば再肝切除が可能になり、OSが改善すると考えられる」と説明した。

 ただし、術前化学療法によって脾腫をきたす症例があり、肝再生に関与する可能性がある。同氏らは術前化学療法としてConversion chemotherapyのみを行っており、同治療を行った51人(化学療法あり群)と、同時切除を行った67人(化学療法なし群)を比較した。51人中、Conversionできたのは43人、切除不能は8人だった。化学療法あり群では、腫瘍の個数、原発巣のリンパ節転移陽性例、肝外転移併存例が有意に多かった。

 化学療法あり群において、オキサリプラチンベースで治療した患者は、イリノテカンベースで治療した患者と比べて、脾腫を判定するsplenic index(SP index)が有意に上昇した(p<0.05)。治療コース数が9コース以上になると、オキサリプラチンベースの治療で増大した脾腫が、ベバシズマブの追加により有意に抑制されることもわかった(p<0.05)。

 SP indexのカットオフ値を1.2とし、化学療法あり群の1.2以上、1.2未満、化学療法なし群の3群で比較すると、ICG-R15は脾腫がある群で有意に不良だった(p<0.05)。

 さらにこの3群間で、3区域以上のMajor liver resectionを行った患者について比較すると、SP indexが1.2以上で脾腫がある群では術前に肝機能低下が認められた。予定残肝容積は3群ともに約50%で差はなかった。

 手術時間と出血量は、脾腫がある群で有意に延長または増加した。Clavien-Dindo分類でIII以上の術後合併症は3群間で有意差はなかったが、術後の高ビリルビン血症の発生率は脾腫がある群で有意に高かった。

 吉留氏は「同時性の大腸癌両葉肝転移では、さまざまな治療戦略を組み合わせていかなければcureが得られない。術前化学療法を行う場合は、投与期間とレジメンに注意した治療方針が必要であることが示唆された」と述べた。

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