このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

News ニュース

ニュース一覧へ

新着一覧へ

ニュース

2015/1/17

ハイブリッド低侵襲食道切除術は切除可能な食道癌の標準的治療となる可能性【ASCO-GI2015】

森下紀代美=医学ライター

 切除可能な食道癌に対し、腹腔鏡を用いる経腹的アプローチと開胸食道切除術を組み合わせたハイブリッド低侵襲食道切除術(hybrid minimally invasive oesophagectomy:HMIO)は、開胸・開腹食道切除術(OO)と比べて、肺合併症をはじめとする重度の合併症の発生を減らし、再発や生存にマイナスの影響は与えないことが、多施設共同、非盲検、フェーズ3のランダム化試験(MIRO試験)から示された。1月15日から17日まで米国サンフランシスコで開催されているGastrointestinal Cancers Symposiumで、フランスClaude Huriez University HospitalのChristophe Mariette氏が発表した。

 食道癌では開胸による経胸的食道切除術が標準的治療となっている。しかし、死亡は2-10%、術後合併症は30-50%に発生する。特に肺合併症はOO後の患者における大きな懸念であり、死亡例の半数は肺合併症が原因である。

 一方、胃食道逆流症に対する腹腔鏡下手術や腹腔鏡下胆嚢摘出術では、術後合併症の発生率の低下、手術創の縮小、換気メカニズムの悪化の軽減など、有望な結果が報告されている。食道癌手術でも、腹腔鏡を用いる経腹的アプローチにより、肺合併症の軽減をはじめ、複数の利点が得られる可能性がある。しかし、OOと腹腔鏡下手術をレトロスペクティブに比較したコホート研究はほとんどない。

 Mariette氏らは、腹腔鏡を用いる経腹的アプローチ(腹腔鏡下胃授動)は、食道切除術における重度の術後合併症を減らすとする仮説を立て、MIRO試験で検証した。

 開腹下で胃授動を行い、開胸食道切除術を行う群(OO群)、または腹腔鏡下胃授動と開胸食道切除術を行う群(HMIO群)のいずれかに、患者をランダムに割り付けた。主要評価項目は術中および術後30日目の合併症発生率(Clavien-Dindo分類でgrade II-IV)、副次的評価項目は術後30日目の術後死亡率、肺合併症発生率、無病生存率(DFS)、全生存率(OS)、QOL、医療経済評価だった。仮説では、術後30日目の重度の合併症発生率は、開腹術では45%、腹腔鏡下手術では25%に低下するとした。

 対象は、cTNM病期分類でI、II、II期の切除可能な胸部中下部の食道癌で、扁平上皮癌(SCC)または腺癌(ADC)の18-75歳の患者だった。手術技術は、現地の査察とビデオで標準化し、腹腔鏡下胃授動と右開胸手術を行い、Ivor Lewis切除に基づくこととした。

 2009年10月から2012年4月までに12施設から219人が登録された。適格性の評価の結果、207人がランダム化に進み、OO群104人、HMIO群103人となった。ベースラインの患者背景は両群でバランスがとれており、OO群とHMO群において、ADCの割合は63.1%と55.9%、腫瘍部位は中部が30.8%と31.1%、BMI中央値は24.8と25.7、術前補助療法を受けた患者は72.1%と74.8%だった。

 手術に関し、OO群とHMIO群の手術時間中央値はそれぞれ330分と327分、Ivor Lewis切除は96.2%と97.1%で行われた。術中合併症(grade II-IV)の発生率は低く、OO群3.8%、HMIO群1.0%だった。HMIO群のconversionは2.9%と低かった。R0切除率は、OO群98.1%、HMIO群95.1%だった。切除したリンパ節数の中央値はOO群22個、HMIO群21個で、pTおよびpNの分類でも分布は両群で同様だった。

 主要評価項目である術中および術後30日目の合併症は、OO群の67人(64.4%)、HMIO群の37人(35.9%)に発生し、オッズ比は0.31(95%信頼区間:0.18-0.55)となった(p<0.0001)。HMIO群で69%の減少が示され、仮定された減少率を上回った。

 術後30日目の時点において、術後死亡はOO群の2人(1.9%)、HMIO群の1人(1.0%)に発生した。grade II-IVの合併症は、OO群の41人(39.8%)、HMIO群の20人(19.6%)に発生した。重度の肺合併症の発生は、OO群の31人(30.1%)に対し、HMIO群では18人(17.7%)で有意に少なかった(p=0.037)。

 2年時のDFSはOO群54.5%、HMIO群63.1%(p=0.224)、2年時のOSはそれぞれ63.2%と76.7%(p=0.127)となり、両群間に有意差はなかった。

 Mariette氏は「今回の知見は、切除可能な食道癌患者にHMIOを適用する強いエビデンスとなる。HMIOは新たな標準的治療として考える必要がある」と述べた。

 今回の結果に対し、ディスカッサントを務めた米国Beth Israel Deaconess Medical CenterのMichael Kent氏は、「低侵襲食道切除術は、食道癌に対する標準的治療とすべきと考える。MIRO試験では経済解析とQOL指数が重要になる」と話した。

この記事を友達に伝える印刷用ページ