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2014/11/21

癌患者のQOLを維持し“安全・確実・安楽な治療”ができるよう早期から緩和、副作用マネジメント、セルフケア支援を【肺癌学会2014】

中西美荷=医学ライター

 分子標的治療薬の導入は、肺癌緩和医療の在り方にどのような影響をもたらしたのか。各職種の役割とは? 11月14日から16日まで京都市で開催された第55回日本肺癌学会学術集会のチーム医療推進プログラム1「分子標的治療薬登場による緩和医療のパラダイムシフト」において、国立病院機構・近畿中央胸部疾患センター看護部/支持・緩和療法チームの武田ヒサ氏が、緩和ケアチーム看護師の立場から講演した。

 武田氏が緩和ケアチーム専従看護師として働く近畿中央胸部疾患センターは、呼吸器疾患に関する高度専門医療施設で大阪府がん診療拠点病院(肺がん)でもある。2006年5月より支持・緩和療法チーム(以下PCT)を設置し、日本医療機能評価機構(ver6.0)に認定されている。2006年6月に緩和ケア診療加算算定開始、2010年4月にPCT2チーム体制となった。2012年4月サポート外来も開設し、退院した外来患者への緩和ケア継続にも力を入れている。

 平成26年4月から10月における新規肺癌登録者数は103例、うち腺癌46例で、PCTの依頼件数は285件(肺癌患者のみ、継続依頼含む)、腺癌患者は128例(男性65、女性63)だった。男性65例のうちEGFR変異陽性は16例、ALK陽性1例、女性63例のうちEGFR陽性は26例、ALK陽性6例で、このうち合計20例の患者に対して何らかの分子標的治療薬が投与された。

 肺腺癌ステージIV、EGFR陽性でPS 1だった60代女性の例では、1次治療でゲフィチニブ、2次治療でエルロチニブ、3次治療でカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ、4次治療でアファチニブが用いられた。PCTは2次治療の入院時から、癌疼痛緩和と落ち込んだ気分、支持療法などに介入してきたが、4次治療開始時の意思決定支援において、特に大きな役割を果たしたと思われた症例である。

 アファチニブ開始前のインフォームドコンセント(IC)にはPCTの緩和ケア認定看護師(緩和ケアCN)が同席。本人、夫は特に質問はせず、不安だが医師の言う治療を受けるしかないとの反応だった。緩和ケアCNによればIC後、「説明がよくわからなかった。治療判定の時期や副作用についても不安」とした。その後サポート外来では、本人は副作用の程度や効果について、夫も間質性肺炎の可能性について不安を示した。

 PCTによる話し合いの結果、入院時に再度ICを行うべきだとして、主治医に情報提供した。武田氏自身は、分子標的薬の副作用、治療効果、今後の治療に対する不安や思いを傾聴、共感しながら、本人が望む生活を維持するための短期の目標を一緒に考え設定する、アファチニブのパンフレットを用いて下痢時の対応、皮膚障害や口内炎予防の対応等について詳しく指導し、一緒に学んで行く姿勢をとる、今後も医療スタッフで支持していくことを保証する、病棟スタッフに情報提供するとともに副作用の早期発見と予防について話し合う、という形で関わり、これらを看護計画に反映させたという。

 左肺腺癌ステージIVでEGFR変異陽性、PS2-3の70代女性では、ゲフィチニブによる1次治療入院時から癌疼痛緩和と支持療法にPCTが介入した。分子標的薬独特の副作用への対策や精神的ケアなどの点で、特にPCTの役割が重要であると考えられた1例である。

 2次治療はペメトレキセド、3次治療はエルロチニブで、4次治療のアファチニブでグレード3の皮疹と爪周囲炎が発生。料理が趣味の主婦であった患者はサポート外来で、「手が痛くて包丁も少ししか使えず、料理がきちんと作れない。手にテープを巻いてもすぐにはがれるので、はがれにくいテープが欲しい。首や頭の皮疹から出る浸出液による寝具や髪の汚れが煩わしい。気力も低下してほとんど寝ている。本当は夫のために家事をしたいのに」などと訴えた。

 武田氏はPCT看護師として、苦痛症状を丁寧に確認しながら思いを傾聴し、包括的なアセスメントを実施。がん化学療法認定看護師へコンサルトしながら、対症療法(スパイラルテーピング法、テープの選択、スキンケアなど)を行ったほか、薬剤師へ抗菌薬やステロイド外用薬の調節について相談し、薬剤師外来の継続につなげた。また皮疹による不快感、ボディイメージの変容、妻の役割の喪失に対する精神的ケアを行い、夫への思いを傾聴しながら、セルフケア支援を行ったという。

 分子標的治療薬登場により、肺癌治療はパラダイムシフトとも言える変化の時代を迎えている。次々と新薬が開発されているが、それらは、臨床現場でうまく使いこなしてこそ、患者にとって有用な治療となる。そのためには癌に対する治療個別化だけでなく、個々の患者がどのように生きてきたのか、生きていきたいのかという、患者の価値観や意向に合わせた個別化も重要である。そうした意味で、患者にもっとも近い立場にある看護師は、分子標的薬時代のチーム医療において、大きな役割を担っている。

 武田氏は「分子標的薬の開発が進む中、治療の場は、ますます入院から外来へと移行する。大切なのは、患者がその人らしい生活の中に治療を取り入れることができるように意思決定を支援すること。そこで選び取った治療を、退院後も含めて“安全・確実・安楽”に継続できるように、早期から症状緩和を行い、副作用マネジメント、セルフケア支援などを、他職種と連携、恊働してチーム医療として行うことで、患者QOLの維持、向上につなげていきたい。もっとも大切なのは、患者や他職種との日々のコミュニケーションだと思う。また個々のスタッフが治療についての知識を高め、共有することも重要である。患者・家族と病棟、病棟とPCTとのつなぎ役、そしてがん化学療法認定看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなどの専門職種へのつなぎ役として役割を果たしていくとともに、スタッフ教育にも尽力していきたい」と語った。

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