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2014/9/9

9月に登場した5つのがん治療薬

満武里奈=日経メディカル

 今年9月、複数のがん治療薬が登場した。発売されたのは、抗PD-1抗体のニボルマブ、ALK阻害薬のアレクチニブ、CYP17阻害剤のアビラテロン、抗悪性腫瘍剤カバジタキセル、JAK阻害薬のルキソリチニブ――の5つ。以下に5剤の特徴や承認の基となった臨床試験などを紹介する。



●抗PD-1抗体ニボルマブ
 「根治切除不能な悪性黒色腫」の適応症で販売を開始したのが抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ点滴静注20mg/100mg)だ。

 ニボルマブは、がん細胞が免疫機構から逃れようとする仕組みを標的にした抗体医薬で、免疫チェックポイントと呼ばれるPD-1を標的にした薬剤。新しい機序の薬剤として注目を集めている。同剤は、T細胞上に発現するPD-1に結合することで、PD-1が免疫のブレーキ信号のスイッチを入れる癌細胞上の分子PD-L1、PD-L2と結合することを阻害し、抗腫瘍効果を発揮すると考えられている。

 承認の基となった臨床試験データは、国内フェーズ2試験。ダカルバジンによる化学療法歴を有する根治切除不能なIII期/IV期または再発悪性黒色腫患者35例を対象にした同試験において、奏効率は22.9%(35人中8人、90%信頼区間:13.4-36.2)、全生存期間中央値は473.0日(90%信頼区間:276.0-)だった。

 悪性黒色腫は皮膚がんの1つで最も悪性度が高いとされている。I期の5年生存率は95〜100%で、II期は70〜80%、III期は50〜60%、IV期は10%前後だ。初発病巣のみを切除しても、高い確率でその周辺に腫瘍が再発することが知られる。また、悪性黒色腫の一部に直接メスを入れて病理組織検査を行うと、転移を誘発することがあると考えられており、初治療では初発病巣辺縁より数cm大きい範囲で切除することが原則となっている。III期以降は外科療法だけでなく、化学療法や放射線療法などを組み合わせて行うことが多い。日本における進行期の悪性黒色腫に対する標準薬物療法は、現在、抗悪性腫瘍剤ダカルバジンの単剤療法のみであるため、新たな薬剤の登場が期待されていた。


●ALK阻害薬アレクチニブ
 「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で販売を開始したのがアレクチニブ(商品名:アレセンサカプセル20mg/アレセンサカプセル40mg)だ。

 アレクチニブは、ALKチロシンキナーゼ活性を阻害することで、ALK融合遺伝子陽性の腫瘍細胞の増殖を抑制する薬剤。ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんでは、ALKチロシンキナーゼ活性が異常に亢進しており、がん化と腫瘍増殖に関与していることが知られる。

 承認の基となった国内フェーズ1/2試験は、1レジメン以上の化学療法歴を有するALK融合遺伝子陽性の進行・再発非小細胞肺がん患者を対象に、国内13施設で実施された。フェーズ1部分では、用量制限毒性の発現が認められず、最大投与量の1回300mgの1日2回投与が推奨用量として決定。推奨用量でフェーズ2部分(主要評価項目は奏効率)が46人で行われ、奏効率は93.5%(95%信頼区間:82.1-98.6)だった。


●CYP17阻害剤アビラテロン
 「去勢抵抗性前立腺癌」(CRPC)の適応症で販売を開始したのはアビラテロン(商品名:ザイティガ錠250mg)だ。

 アビラテロンは、アンドロゲン生合成に必要な酵素であるCYP17を、精巣だけでなく副腎や前立腺がん組織内でも選択的に阻害することで、アンドロゲン生合成を抑制し、抗腫瘍効果を示す薬剤。
 
 承認の基となった主な臨床試験の1つが、海外フェーズ3試験(COU-AA-302試験)の結果だ。化学療法歴のない転移性CRPC患者を対象にした同試験では、プレドニゾン併用で、プラセボ群のOS中央値は27.2カ月だったのに対し、アビラテロン群が推定不能(ハザード比0.752、95%信頼区間:0.606-0.934)。 最新の中間解析では、プラセボ群が30.1カ月だったのに対し、アビラテロン群が35.3カ月だった(ハザード比0.79、95%信頼区間:0.66-0.96)。

 また、ドセタキセルによる化学療法歴(2レジメン以内)を有する転移性CRPC患者を対象にしたフェーズ3試験(COU-AA-301試験)では、プレドニゾン併用で、プラセボ群のOS中央値が10.9カ月だったのに対し、アビラテロン群は14.8カ月と有意に改善した(ハザード比0.646、95%信頼区間:0.543-0.768)。最新の中間解析では、プラセボ群が11.2カ月だったのに対し、アビラテロン群が15.8カ月だった(ハザード比0.74、95%信頼区間:0.64-0.86)。

 男性ホルモンであるアンドロゲンによって増殖する前立腺がんでは、アンドロゲンの作用を遮断する治療法が有効だ。アンドロゲンを産生する精巣を摘除してしまう外科手術(外科的去勢術)や、内科的去勢術としてアンドロゲンが働かないようにするホルモン療法が行われる。

 だが、ホルモン療法を長期間継続すると、ホルモン療法に抵抗性を示すがん細胞が徐々に増え、治療効果が消失しまう状態になることが知られ課題となっていた(外科的去勢術後に増悪した患者とあわせて「去勢抵抗性前立腺がん」と呼ぶ)。そこで、従来薬とは異なるターゲットの新規治療薬の開発が求められていた。


●抗悪性腫瘍剤カバジタキセル 
 「前立腺癌」への適応症で販売を開始したのは抗悪性腫瘍剤カバジタキセル(商品名:ジェブタナ点滴静注60mg)だ。

 カバジタキセルは、細胞内の微小管に作用することで、細胞分裂を阻害する薬剤。

 承認の基となった主な臨床試験データは、ドセタキセルによる化学療法歴がある去勢抵抗性前立腺がん患者を対象にした海外フェーズ3試験(TROPIC試験)と国内フェーズ1試験。

 海外フェーズ3試験では、プレドニゾンまたはプレドニゾロンとの併用で、ミトキサントロン群の生存期間(OS)中央値が12.7カ月だったのに対し、カバジタキセル群は15.1カ月、ハザード比0.70(95%信頼区間:0.59-0.83、p<0.0001)と、全生存期間(OS)を有意に延長した。

 また、国内フェーズ1試験では、腫瘍縮小効果奏効率が16.7%(2/12例)、PSA奏効率(PSA値がベースラインから50%以上低下した患者の割合)は29.3%(12/41例)だった。

 なお、臨床試験の結果を踏まえ、当面の間、投与対象はドセタキセルによる化学療法歴がある去勢抵抗性前立腺がん患者となる。


●JAK阻害薬ルキソリチニブ
 「骨髄線維症」の適応症で販売を開始したのがJAK阻害薬のルキソリチニブ(商品名:ジャカビ錠5mg)だ。

 ルキソリチニブはJAK1およびJAK2に高い選択性のあるJAK阻害剤。

 承認の基となったのは、欧米を中心に行われた国際共同フェーズ3試験(COMFORT-IおよびCOMFORT-II)と、日本も参加したアジア国際共同フェーズ2試験の結果。

 骨髄線維症患者309例を対象に実施した海外フェーズ3試験では、主要評価項目である「24週時点の脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した被験者の割合」はルキソリチニブ群が41.9%、プラセボ群が0.7%で、プラセボ群と比較してルキソリチニブ群で有意に高かった(p<0.0001)。

 また、骨髄線維症患者219例を対象にした海外フェーズ3試験では、主要評価項目である「48週時点の脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した被験者の割合」はルキソリチニブ群が28.5%、Best Available Therapy群が0%で、ルキソリチニブ群で有意に高かった(p<0.0001)。

 また、アジア国際共同フェーズ2試験は日本人患者30例を含む120例を対象に実施され、主要評価項目の「24週時点で脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した被験者の割合」は31.7%だった。

 骨髄線維症は、造血組織である骨髄が線維化することで、正常な血液の産生が妨げられる進行性の血液がん。一般に予後不良で、国内の5年生存率は38%、生存期間の中央値は3.4年とされている。骨髄線維症の主要な合併症への対処療法として薬物治療が行われるが、効果は限定的だ。造血幹細胞移植によってのみ治癒する可能性があるが、高齢者が多いため、移植の対象となる患者はごく一部だ。また対象となった場合でも実際の実施率は低いと言われている。骨髄線維症の病因は十分には解明されていないが、JAK経路の恒常的な活性化が大きく関わっていると考えられている。

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