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2014/9/2

突出痛への新たな治療アプローチ、フェンタニル口腔粘膜吸収剤が選択肢に【癌治療学会2014】

森下紀代美=医学ライター

 突出痛(breakthrough pain)は、オピオイド定時投与によって持続痛が適切にコントロールされている患者に発生する一過性の痛みの増強である。突出痛に対し、昨年から日本でも新たにフェンタニル口腔粘膜吸収剤が使用可能となった。8月28日から30日まで横浜市で開催された第52回日本癌治療学会学術集会で、静岡県立静岡がんセンター緩和医療科の大坂巌氏は突出痛に関する最近の知見について概説し、「突出痛において個別性は重要であり、より詳細なアセスメント、レスキュー薬の適切な選択、多職種チームアプローチにより、より質の高い鎮痛治療を提供することが可能になる」と述べた。

 突出痛が十分に治療されない場合、患者の身体的および精神的な苦痛は増強し、QOLは低下する。さらに、疼痛治療への満足度が低下し、緊急受診の回数の増加や入院期間の延長などにより、経済的負担が増えることも報告されている。大坂氏は「突出痛をいかに適切にコントロールするかが質の高い癌疼痛治療につながっていくと言える」と話した。

 多くの観察研究から、癌患者の約60%が突出痛を自覚することが示されている。欧州13カ国の癌患者1000人を対象とした観察研究では、突出痛全体、誘因が明らかな突出痛、誘因が明らかでない突出痛のほとんどが、痛みの発生から5-10分でピークに達することがわかった。持続時間は60分以内であることが多かった(A. Davies, et al. Journal of Pain and Symptom Management 2013:46:619-28)。

 最近、突出痛の評価ツールが発表され、評価項目には突出痛の部位や頻度、誘因、持続時間、痛みの程度、レスキュー薬を使ってから痛みがとれるまでの時間(10分毎に30分まで)などが含まれている。突出痛に対し、これまではモルヒネやオキシコドンなどの速放性製剤が使用された約30分後に効果が確認されていたが、10分刻みに確認する時代となった。

 今年6月、日本緩和医療学会は、改定した「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版」を発表した。突出痛のある患者におけるオピオイドのレスキュー薬について、投与量、投与間隔は従来と同様で、投与量は経口薬では1日投与量の10-20%の速放性製剤、注射薬では1時間量の急速投与が推奨され、投与間隔は経口薬では1時間毎、注射薬では15-30分毎がそれぞれ推奨されている。

 投与経路については口腔粘膜吸収剤に関する推奨が追加され、「定期投与と同じ経路を原則とする。発現から最大になるまでの時間の短い突出痛に対しては、静脈内・皮下投与・口腔粘膜吸収剤を検討する。ただし、口腔粘膜吸収剤は持続痛がコントロールされている場合に限る」となった。

 突出痛の治療には、レスキュー薬としてモルヒネやオキシコドンなどの速報性製剤が用いられてきたが、これらは短時間作用型オピオイド(Short-acting opioid:SAO)と呼ばれる。効果発現時間は約30分程度、最大効果は約1時間後であり、効果持続時間は数時間である。したがって、これらの製剤では最も痛みが強いときには効果が弱く、痛みが消失した後にも薬剤の影響が残り、臨床的には眠気が残存する可能性が高い。

 SAOの欠点を補うように開発されたのがフェンタニルレスキュー製剤で、即効性オピオイド(Rapid-onset opioid:ROO)と呼ばれる。効果発現時間は10-15分と速く、効果持続時間は1-2時間である。突出痛のピークに近いところで鎮痛効果が発現し、痛みが消失した後には薬剤の影響が速やかに消失するよう設計されている。日本では昨年から、フェンタニル口腔粘膜吸収剤として、上顎臼歯と頬の間で溶解させる製剤であるバッカル錠と舌下錠が使用可能となっている。

 大坂氏は、フェンタニル口腔粘膜吸収剤の適応と考えられる例として、突出痛をより早く軽減させたい場合、悪心・嘔吐、嚥下困難がある患者、消化管閉塞のある患者、持続の皮下注射や静脈注射が困難な場合、臥位から上半身の挙上による痛みが増悪する場合、食道気管支瘻などがある場合、在宅療養に移行する場合、SAOによる眠気や便秘が問題となる患者などをあげた。

 持続痛をコントロールするための定期投与オピオイドとレスキュー薬の有効用量は相関しないことが明らかになっているため、いずれも低用量から開始し、鎮痛効果が得られて有害事象が許容できる用量まで調節(タイトレーション)する必要がある。有害事象として、眠気、呼吸抑制、依存などが生じる可能性があり、薬物動態や特性を十分理解したうえで使用することが重要である。

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