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2014/7/23

皮膚症状をコントロールして分子標的薬の長期投与から抗腫瘍効果を最大限に引き出す【臨床腫瘍学会2014】

森下紀代美=医学ライター

 分子標的治療では、新規薬剤の登場とともにさまざまな皮膚症状をコントロールしながら、癌の治療を上手に続けていくことが必要となってきている。7月17日から19日まで福岡市で開催された第12回日本臨床腫瘍学会学術集会では、国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科の山崎直也氏が、上皮細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)とマルチキナーゼ阻害剤で発現する皮膚障害と手足症候群について解説し、皮膚症状をコントロールして分子標的薬の投与期間を延長することにより、抗腫瘍効果を最大限に引き出すことができると話した。

 分子標的薬は、EGFR-TKIとマルチキナーゼ阻害剤に大きく二分される。過去2年間では、EGFR-TKIでは頭頸部癌に対するセツキシマブ、非小細胞肺癌(NSCLC)に対するアファチニブ、マルチキナーゼ阻害剤では大腸癌に対するレゴラフェニブ、甲状腺癌に対するソラフェニブが新たに使用可能となった。

 EGFR-TKIでは皮膚障害はほぼ必発し、マルチキナーゼ阻害剤では手足症候群が高頻度に発現することが知られている。

 EGFR-TKIとEGFRモノクローナル抗体で発現する主な皮膚症状には、ざ瘡様皮疹、皮膚乾燥、そう痒症、爪囲炎がある。

 ざ瘡様皮疹はざ瘡とは異なるもので、原則として無菌性である。ステロイド外用薬が有効であるが、二次感染を起こしやすい。ただし、スキンケアである程度再発予防ができる。ざ瘡様皮疹に対し、グレード1ではステロイド外用薬、グレード2ではステロイド外用薬にミノマイシン100mg/回×2の内服を加える。グレード3となった場合は、ステロイドは外用薬よりも内服薬を考慮し、ミノマイシンと併用する。グレード4の場合は、皮膚科専門医のいる入院可能な基幹病院への紹介が必要になる。

 皮膚乾燥と爪囲炎は、症状の変化はあるものの、長期にわたって継続するため、根気よく治療することが必要になる。特に爪囲炎は治療に難渋することが多い。皮膚乾燥に対し、グレード1ではヘパリン類似物質などの保湿剤、グレード2以上となったらステロイド外用薬を加え、掻痒が強い場合は抗ヒスタミン薬などの内服を考慮する。爪囲炎では洗浄+テーピングが基本となる。さらに、グレード1ではステロイド外用薬+保湿剤、グレード2ではミノマイシンの内服も加え、グレード3となったら部分抜爪などの外科的または皮膚科的処置が必要になる。

 院内に皮膚科の専門医がいない場合でも、発現している皮膚障害に応じて対処し、症状マネジメントを適切に行うことができれば、治療は継続できる。ただし、無効の場合やグレード3以上となった場合は、治療を継続するためにも皮膚科医の介入が必要になる。本来はグレード3となるよりも前の段階から連携をとることが望ましく、皮膚科医からも、もっと早く介入できれば多くの手段があるとする意見が多いという。

 最近使用可能となった薬剤の1つ、アファチニブを検討した国際的なフェーズ3試験(LUX-Lung3)では、発疹/ざ瘡は約9割に発現し、さらに爪囲炎が6割近くと高頻度に発現したことが特徴的だった。同試験に参加した日本人EGFR遺伝子変異陽性例の初回治療における有害事象を比較しても、アファチニブではゲフィチニブと比べてグレード3の皮疹が高頻度に発現した。治療を継続するうえでは課題となるとみられる。

 日本人のNSCLC患者を対象としたエルロチニブの市販後調査では、皮膚症状に対し、ステロイドの予防投与を行った場合と早期に使用を開始した場合に回復が早かった。山崎氏は「ステロイドは強いものを早めに使うことが大切。ステロイドの使用開始が遅れると、回復までに時間がかかる」と指摘した。

 ただし、分子標的治療では、皮膚にみられる所見は皮膚障害ではなく、抗腫瘍効果の表れと考えられる。そのため山崎氏は、「皮膚症状をうまくコントロールしながら投与期間を延長することで、抗腫瘍効果を最大限に引き出すことが可能となり、癌治療の成功に結びつけることができる」と話した。

 また、最近のキナーゼ阻害剤による手足症候群は、フッ化ピリミジン系の薬剤で知られていたものとは皮膚症状が異なるため、見逃さないよう注意が必要だ。初期症状は、従来の手足症候群ではしびれ、ちくちく、ぴりぴりするといった感覚異常、不快な違和感だったが、キナーゼ阻害剤では限局性の紅斑と軽度の疼痛である。またキナーゼ阻害剤では、加重部、加圧部に強い角化が認められる。発症機序はいずれも不明である。

 キナーゼ阻害剤による手足症候群に対し、外用薬は保湿剤とステロイドを使用するが、増悪して疼痛が出現した場合は、早めに休薬する。短期間で疼痛は消失するため、適切に減量して治療を継続する。

 最後に山崎氏は「それぞれの職種の役割を尊重しながらチーム医療を進めていくことが、患者さんの治療を長く続けるために重要と考える」と述べた。

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