もっと知る腎がん

第8回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜Vol.2

2人目の回答者:江原伸氏(岡山大学泌尿器科 講師)

●「1つしかない腎臓にがんができた場合の治療法はどのようになりますか」

江原氏

―片方の腎臓を摘出されているということだと思いますが、私たち泌尿器科の医師としては、1つしかない腎臓にがんが再発した場合でも、技術的に可能であれば「がんを摘出したい」というのが正直な意見です。ただし、手術をするにあたっては、1つしかない腎臓が多少のダメージを負うことがあるため、腎機能が比較的良好であることが条件になります。手術をしても腎機能の低下がそれほど大きくないと泌尿器科医が判断した場合は、手術を行うことが良いと思います。

手術以外の方法として、2011年7月から保険適用となった凍結療法があります。背中側から腎臓のがんに針を刺し、アイスボール(凍結領域)をつくり、がん細胞を凍らせて死滅させる方法です。この治療法は全国10施設で行っています。岡山大学では、放射線科の先生方と相談して、腎臓が1つで、腎機能低下があり、腫瘍のサイズが4cm以下の患者さんに凍結療法を行っています。

●「大学病院で腎がんの治療を受けています。昨年、左側の腎臓を摘出し、その9カ月後にリンパ節に転移したため切除しました。現在また転移し、薬で治療中です。体調は良いのですが、最近の情報を知りたいです」「腎がんが見つかりました。薬で治療できますか」

江原氏

―腎がんがあり、転移ではない場合は、手術で取れる状況であれば手術を行います。手術が難しく、1つしか腎臓がない場合は、凍結療法という選択肢もあります。薬物療法である分子標的薬、免疫療法では、がんの増殖・転移を抑えることはできても、根治はなかなか難しいと思います。また多臓器にがんが転移している場合は、全身性の病気ということになりますから、分子標的薬や免疫療法でがんが大きくなることを抑えることが現実的だと思います。

●「昨年7月に腎がんの手術をしました。再発の検査などで定期的に通院していますが、今後はどのくらいのペースで、いつまで、どのような検査が必要ですか」

江原氏

―がんという病気は、一般的に5年を一区切りとして、5年間再発しなければ大丈夫だろうとする考え方があると思いますが、腎がんの場合は少し違います。私たちが岡山大学の外来で腎がんの患者さんを診察する際には、手術後2年間は3カ月毎に血液検査、半年毎にCT検査を行い、転移がないかをチェックしています。2-5年の間は血液検査とCT検査を半年毎に行います。5年以上経過しても、1年毎に必ず病院に来ていただくようにしています。腎がんでは、10年以上経過してからも転移を認める場合があるためで、定期的なチェックで見逃さないこと、見つかったとしても小さな段階で見つけることが重要になります。

●「術後のケアについて知りたいです」「4月に腎臓摘除術を受けましたが、その後の神経の痛み、腎機能の低下などが心配です」

江原氏

―手術後の神経の痛みはなかなか回復しないことがありますし、腎機能は基本的に手術をすることによって低下します。けれども、術前の腎機能が比較的良好であれば、一方の腎臓を摘除しても、透析が必要になるほど悪化することはありませんし、規則正しい食生活や運動をしていただければ、進行することはありません。ただし、糖尿病、高血圧、高尿酸血症、蛋白尿などの合併症があると、腎機能が悪化することがありますから、合併症の治療をきちんと行うことが必要になります。

●「片方の腎臓を全摘除して1年になりますが、食事の量を少なくした方がよいですか」「3年前に手術を受け、経過は順調で、現在6カ月毎に検診を受けています。今後気をつけることを教えてください」「現在、腎臓が1つしか機能していません。現状を保つことに不安を感じています」

江原氏

―宮地先生もお話されましたが、バランスの良い食事、適度な運動、動物性蛋白・塩分・アルコールの過剰な摂取を控えることが大切です。アルコールは、休肝日を設けることで控えめにすることができると思います。

 腎不全の患者さんの食事療法をみると、タンパク摂取量は体重1kgあたり0.6g/日とされ、体重50kgの患者さんであれば、1日タンパク摂取量は30gです。タンパク量は、ごはんは茶碗1杯で4.5g、食パンは6枚切り1枚で6.0gあり、30gに抑えようとすると非常に厳しいことになります。このように腎不全のレベルまで進行してしまうと、日々の生活の質を落とすことになります。しかし、腎機能が悪化していない患者さんが適度な摂取をする分には問題ありません。

 また腎不全になると、塩分摂取量を1日5-7g以下に抑えることになります。塩分は、ウインナー1本でも0.4g含まれています。このレベルまで進行しないような予防策、適度なバランスの良い食事、適度の運動を考えなくてはいけないと思います。

司会・津島氏
―代表的な質問をまとめさせていただき、回答者の方から答えさせていただきました。もう一点、1つしかない腎臓を何かの事故で失うことは避けていただきたいと思います。腎がんの患者さんでスキーやスノーボードをする方はあまりいないと思いますが、激しい運動で腎臓を損傷することがないよう、気をつけてください。