もっと知る腎がん

第8回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜Vol.2

 腎癌研究会は8月9日、「腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜」をテーマとして、岡山県岡山市で第8回市民公開講座を開催した。昨年岡山市で予定されていた第7回市民公開講座は、台風の影響により中止となったため、2年ぶりの開催となる。当日の模様をリポートする。

【第2部 質問コーナー】
司会:津島知靖氏(岡山医療センター 副院長、泌尿器科医長)


 事前に参加者から寄せられた質問について、腎がん治療のエキスパートである2人の泌尿器科医が回答した。司会は、岡山医療センター副院長で泌尿器科医長の津島知靖氏が務めた。










1人目の回答者:宮地禎幸氏(川崎医科大学泌尿器科 准教授)

●「腎がんの遺伝子について深く知りたいです。親が腎がんになったら、息子、娘が発病する確率はどのくらいありますか」「母が腎がんになりました。遺伝するのか心配です」

宮地氏

―腎がんは、通常は遺伝しません。父親や母親が腎がんであっても、子供に遺伝することは基本的にありませんが、例外があります。遺伝性の特殊な病気である、フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病、バート・ホッグ・デューベ(BHD)症候群を持っている方は、その因子が子供に遺伝し、腎がんが発生しやすくなりますから、注意が必要です。ただし、どちらの病気も非常に少なく、日本ではVHL病は数百人程度、BHD症候群はさらに少数とされています。そのため、がん抑制遺伝子の後天的な変化に注意する必要があります。

●「亡くなった父が透析患者で、5年ほど透析に通っていました。その他の家族は腎臓に異常はありません。私に腎癌が発生する確率を知りたいです」「腎がんの危険因子を教えてください」

宮地氏

―透析を受けている方は腎がんになりやすいことが知られており、腎がんが発生するリスクは、透析を受けていない方の40-100倍と高率です。透析期間が長いほど、腎がんの発生頻度が高いとされています。特に、「透析腎がん」と呼ばれる腎がんの患者さんは、半数以上が透析歴10年以上の方です。血液透析を受けている患者さんは、年1回または2回、超音波検査やCT検査で検診することが必要です。

 その他の危険因子として、肥満、高血圧、生活環境では喫煙など、職業・環境因子では有機溶媒やカドミウム、アスベストなどがあります。肥満、高血圧、喫煙は日常生活で十分避けて予防することができますから、できるだけ遠ざけることが必要だと思います。

●「腎臓に不安を抱えています。どのような食事にすると病気になりにくいですか」

宮地氏

―がん抑制遺伝子が2つとも傷つかなければ、基本的に腎がんになることはありませんから、危険因子をいかに遠ざけるかが大切です。一番は喫煙で、できるだけタバコを吸わないようにすることです。一方、飲酒は適度であれば腎がんの発生を予防するとされています。過度の飲酒はいけません。一般的に、日本酒なら1合、ワインならグラス1杯、ビールなら500ml位であれば適度と言えると思います。週に1、2日の休肝日を作りましょう。上手に飲む分にはリスクはないと考えられます。

 それから肥満にも気をつけましょう。適度に運動して、太らない、食べ過ぎない。美味しいものを食べて結構ですが、よく噛んで、少ない量をゆっくり食べる、そういったことが大切だと思います。高血圧にも気をつけましょう。塩分の摂り過ぎに注意し、適度に運動することが血圧の上昇に有効です。

 肉類、乳製品、脂肪の摂り過ぎにも注意しましょう。肥満につながりますし、腎がんの危険因子となります。逆に、野菜や果物を意識的に摂ることは良いと思います。日常でこのような点に気をつければ、後天的にがん抑制遺伝子が傷ついて変異することの予防に役立つとされています。

●「知人が腎がんで亡くなりました。毎年検査を受けていたにもかかわらず、発見された時には手遅れの状態でした。検査の受け方、初期症状、治療法などについて知りたいです」「腎がんの最初の徴候を知りたいです」「どのような時に発見されることが多いですか」

宮地氏

―腎がんは、現在では約7割以上の患者さんが早期に無症状で発見されています。偶然発見された腎がんの約3/4は、周囲への浸潤や転移がない比較的早期のものです。症状が出てから発見される場合は進行していますから、症状が出る前に見つけることが大事です。

 早期発見には腹部超音波検査が最も有用で、手軽で危険性が少ない方法です。また、CT検査は確定検査として優れています。他の病気で病院に通っている方は、検査を受ける時に一緒に調べてもらうこともできると思います。一方、健康で医療機関に縁がない人は発見が遅れる場合がありますから、健康診断や人間ドックで腹部超音波検査を受けることをお勧めします。