もっと知る腎がん

さまざまな検査を行って患者さんの腎がんの状態を正確に把握して治療に臨みます

3.手術を含めた治療を行うための検査


Q. がんの状態を調べるための検査はわかりましたが、治療開始までにほかにどんな検査を行うのですか。

A. 全身状態の評価を目的とした画像検査と血液検査を行います。また、がんの予後因子もチェックします。呼吸機能や心機能も手術を中心とした治療の前に評価します。


Q. 全身状態の評価とは、どのように行うのですか。

A. 全身状態の評価とは、パフォーマンスステータス(PS)とも言います。PSは以下のように5段階に分かれています。患者さんの診察の際、日常生活などの状態を聞き、総合的に判断して決めます。



0:まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
1:肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事、事務作業
2:歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3:限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4:まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。
(国立がん研究センター「がん情報サービス」より)


Q. 血液検査はどんな検査を行うのですか。

A. 体の各臓器の機能をみるために行う一般的な血液検査として、白血球、赤血球、血小板などを測定する血算、肝機能、腎機能、電解質、栄養状態などをみる血液生化学があります。血液型も万が一の輸血に備えてチェックします。手術する前には血が止まりにくくないかも調べます。

 腎がんに特有の血液検査は残念ながらありませんが、予後因子といって、その検査項目が異常値の場合、生存期間が短くなるという因子はわかっています。転移のある症例では、その因子がいくつあるかによって予後良好群、中間群、予後不良群に分類され、治療薬の決定などの指標にされます。それには、前述のパフォーマンスステータス(PS)、腎臓を摘出してから転移までの期間(1年以下だと予後不良)に加え、血液検査のヘモグロビン(Hb)、LDH、Caがあります。その他には、CRPが挙げられます。

 CRPとは、C反応性蛋白の略称です。この蛋白は炎症と関係することが知られていて、体内の炎症の程度が高いと血液中にCRPがたくさん出てくるようになります。腎がんにおいては、治療前のCRP値が高いと、がんの進行速度が速い、再発のリスクが高い、などの可能性があるとされています。

 Hb値とは、ヘモグロビンのことで、赤血球の色素成分のことです。Hb値が低いと予後が悪いことが知られています。

 LDH値とは、乳酸脱水素酵素のことで、細胞が壊れると血液中に出てくるものです。さまざまな病気でLDH値が高くなることが知られていますが、がんもその1つです。腎がんにおいては、LDH値は予後因子の1つであることが明らかになっており、LDH値が高値を示すと予後が悪いことが知られています。

 Ca値とは血液中のカルシウム(Ca)濃度を示すものです。腎臓は体内のカルシウム濃度をコントロールするホルモンを産生しています。腎臓のがん細胞がこのホルモンを大量に産生するようになり血液中のCa濃度が高まってしまうと考えられています。Ca値も腎がんの予後因子の1つであり、Ca値が高いと予後が悪いことが知られています。


Q. 手術を行う場合に、なぜ呼吸機能、心機能を評価するのですか。

A. 手術などの治療を安全に行うことが出来るかどうかを評価する上で、まず、血圧、心拍数、胸部聴診や、喫煙歴、肥満かどうか、糖尿病やその他の合併症の有無、内服薬、既往歴などを問診します。

 心機能の評価には、胸部単純レントゲン、心電図、心エコー検査などを行います。呼吸機能は、肺活量や1秒率などの検査で評価します。手術を行う際に呼吸機能や心機能を評価するのは、麻酔や手術を行うと身体に負担がかかり、術中、術後に重篤な合併症が生じる可能性があるからです。がんを治しても全身状態が悪くなっては意味がありません。そのため、あまりに心肺機能が低下している場合は麻酔や手術は難しいと判断します。


Q. 呼吸機能はどのように評価するのですか。

A. 呼吸機能検査は、スパイロメーターを用いて肺活量や努力性肺活量を評価します。肺活量は、できるだけ息を吸って、ゆっくりと吐いたときの肺活量と、年齢、身長、体重から予測される肺活量とを比較して、実際の肺活量が予測肺活量の何%程度かを評価します。80%以上を示すと正常とされています。

 一方、努力性肺活量は、できるだけ息を吸って、一気に吐いて吐ききったときの肺活量のことです。一気に吐き始めてから1秒間で吐いた呼気量(一秒量)を吐ききったときの肺活量で割った値を一秒率と言います。この一秒率が70%以上を示すと正常とされています。

 健康な人では、肺活量と努力性肺活量はほぼ同じになります。肺に何らかの異常があって呼吸機能が低下していると、努力性肺活量は肺活量に比べて低い値を示します。


Q. 心機能はどのように評価するのですか。

A. 心機能検査は、胸部単純レントゲン、心電図と心臓超音波検査(心エコー)を行います。胸部単純レントゲンでは、心臓の大きさや肺の状態をチェックします。

 心電図は胸や手首、足首の電極を設置するもので、健康診断等で受ける検査と同じです。心臓の電気的な信号をグラフに示すことで、心臓が正常に機能しているか、不整脈や虚血性心疾患などがないかを評価します。

 心エコー検査は、エコーによって心臓の動きを評価するもので、血液を押し出す左室の機能がどの程度あるか、心室と心房の境にある弁に異常はないかどうか、などを評価します。


Q. 他に検査はありますか。

A. 腎がんの手術を行う際にもう1つ重要な検査があります。それは、レノグラムという分腎機能検査です。

 腎がんが見つかる場合、たいていは片方の腎臓にがんが見つかりますが、その場合、がんが小さければ腎部分切除術が行われますし、がんが大きいとがんが見つかった側の腎臓を全て切除する腎全摘除術が行われます。

 腎臓は、体内の老廃物などをろ過する大事な機能を持っているため、腎臓を一部または片方全て切除した際に、腎臓の機能がどれだけ残るか評価しておく必要があります。

 レノグラムとは、腎尿細管に高率に取り込まれ、排泄される薬剤を用いる検査です。この薬剤は放射性同位体で標識した薬剤で、注射後から腎臓を撮影することで放射性同位体が腎臓でろ過され、尿路へと流れていく様子が分かります。この流れを解析することで、左右それぞれの腎機能がどの程度あるかが推定できます。