もっと知る腎がん

【動画解説】ロボット支援手術は泌尿器科領域の手術を大きく変える可能性を秘めています

 また、腹腔鏡下腎部分切除術は、腎臓の表面に現れている小さながんを対象としていました。腎門部という大きな血管のそばにできてしまったがんや腎臓の内部に埋没しているがんを切除するのは細かい操作の連続であるため、腹腔鏡で行うには難しく、主に開腹手術で行われていました。しかし、こうした難しい場所にあるがんであっても、ロボットを使えば、開腹しなくて切除できると期待されています。

 我々は、最近、臨床研究としてロボット支援腎部分切除術に取り組みました。この研究の目的は、術後合併症の発生状況や治療後の腎機能がどの程度保持されたかなど、ロボット支援手術の安全性を評価することです。

 私の実感としては、腎部分切除術を行うにあたり、非常にストレスなく行うことが出来たと思っています。従来の腹腔鏡下での手術に比べて、より安全に手術ができると感じました。術後5日間ほどで退院は可能ですし、従来の腹腔鏡下切除術では行うことが難しかった、大きな腎がんや腎臓の中に埋没しているタイプの腎がんへの適応もできると感じています。

 いずれ腎部分切除術でもロボット支援手術が保険適応になるのではないかと期待していますが、このロボットにより腎がんの部分切除術は大きく変わっていくのではないかと思います。

 まずロボットそのものの進歩です。ロボットの小型化や、内視鏡で見える体内の画像とCTの画像を重ね合わせて表示する機能の進化など、装置は今後も著しく進歩していくでしょう。より手術しやすく、またより安全にできるようになると思います。

 また、従来の腹腔鏡による腎部分切除は、先に述べたように手技に熟練を要します。そのため、腹腔鏡下手術を行うことが出来る施設、および専門医の数は、徐々に増えてはいますが、まだ限られています。

 しかし、ロボットを用いた手術は、従来の腹腔鏡下の手技と比べてより習熟しやすく、そのため今後、ロボット手術に習熟した術者の数は増えていくでしょうし、その増え方は腹腔鏡下手術に習熟した術者の増え方よりも多いでしょう。

 このことは、低侵襲な腎部分切除術、つまりより高度な医療を受けられる機会が増えることにつながるのだろうと思います。

小径腎がんに対する選択肢の増加

 このように、腎がんに対する部分切除術としてロボット支援手術が注目されていますが、一方で小径腎癌に対する治療の選択肢として、凍結療法やラジオ波焼灼療法(RFA)、アクティブサーベイランス(監視療法)があります。

 凍結療法とは、体外から大きな“針”を差し、がんを凍結させて死滅させるというものです。最近、保険適用になりました。

 ラジオ波焼灼療法(RFA)も体外から大きな“針”を刺すことは同じですが、こちらはラジオ波を用いてがんを焼いてしまおうというものです。

 どちらも低侵襲な治療法として注目されていますが、RFAはまだ保険適用になっていませんし、いずれの治療法も、まだ実施している施設や症例数が少なく、今後、症例を蓄積して評価する必要があると思います。

 また、アクティブサーベイランスとは、手術や薬物治療などを行わず、定期的に検査を継続していくというもので、いわば“様子見”をするものです。腎がんはもともと高齢者に起こりやすいがんであることに加え、一口に腎がんといっても病態は非常に多様で、1年間でわずか数mmしか増大しないタイプもあります。そのため、すぐに手術で切除するのではなく、定期的に検査はしつつも様子見をするという選択肢もあるのです。

 このように手術以外の治療法の開発も進められています。今後、より検討が進むことで、小径腎がんの治療においては、どんなタイプのがんにはどの治療法が良いのか、あるいは患者さんの年齢や身体状態、もしくは患者さんの考えなどを判断して、最適な治療法を選択する機会が増えていくのではないかと思います。