もっと知る腎がん

第6回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜

山形大学泌尿器科講師の加藤智幸氏

3人目の回答者:加藤智幸氏(山形大学泌尿器科講師)


●「8年前から腎不全のため人工透析をしていたが、今年6月、腎がんの告知を受けた。その後、紹介された病院で検査を全て受け終わったのが7月で、9月中旬に手術予定です。診断から手術を受けるまで時間がかかっており心配です」
加藤氏

―腎がんの大きさ、種類にもよりますが、一般に、腎がんは急激に進行しないタイプのものが多いと言われています。ですから、手術までの期間が2〜3カ月あっても、腎がんが進行することを心配しなくていいケースが多いと思います。
 透析患者では一般の人と比べて、「透析腎がん」という種類の腎がんの発生率が高いことが報告されています。しかし、透析腎がんは、一般の腎がんと比べ、がんの性質が悪いものはそれほど多くないことも知られています。また、透析腎がんで命を落とす可能性は、一般の腎がんよりも低いことも報告されていますので、それほど心配しなくてよいと思います。
 ただし、がんはがんですので、なるべく早く手術をできるよう、主治医に相談したほうがよいと思います。

冨田氏
―腎がんの中には、非常に特殊で進行が速いものもあります。それはいろんな検査で分かりますので、危険なタイプの腎がんについては急いで手術をします。それ以外のケースについては、だいたい診断から手術までに3カ月くらいというスケジュールですが、それでも大丈夫なのではないかと考えています。もちろん進行する可能性はゼロではないですが、われわれ泌尿器科医はそれぞれの患者さんにとって最善の治療を考えているので、主治医を信じていただいて大丈夫だと思います。

●「腎のう胞にがんが見つかりました。医師からは切除するよう勧められていますが、迷っています。腎のう胞にあるがんと、一般の腎がんはどのように違うのでしょうか」
加藤氏

―腎のう胞は、腎臓に液体の入った袋ができる状態のことで、そこに腎がんが発生したということになります。腎のう胞にがんが見つかった場合は、基本的には腎がんと同じものとして扱います。ですので、根治するためには手術で腫瘍を取り除くことが重要となります。

●「主人が9年前に腎がんの手術をしました。6年後には肺に転移し、内視鏡手術で切除しましたが、昨年もう一度肺の転移が見つかり、今度は薬物療法を行いました。なぜ1回目の転移のときに薬物療法をしてくれなかったのでしょうか。あの内視鏡手術は無駄だったのでしょうか」
加藤氏

―繰り返しになりますが、腎がんを治すために最もよい方法は腎がんを切除することです。これは転移した場合も同様です。手術ができる状態であれば、手術をお勧めします。
 おそらくですが、1回目の転移の時は、転移個数が少なく、完全に取り除けると主治医が判断して手術したのだと思います。しかし2回目は、転移個数が多い、もしくは全身状態が悪いということで、分子標的治療薬による治療を選択したのだと考えられます。

冨田氏
―日本人の腎がん患者さんのうち転移巣を切除した約500人の方々を追跡したデータがありますが、転移切除後から生存した期間を調べたところ、その中央値は7年ということが報告されています。転移があっても切除できれば予後が良好になる可能性は高いのです。
ですから、主治医が判断して「これは手術で切除しましょう」と言われた場合は切除して間違いないと思います。転移した全ての症例について切除を行っているのではなく、患者さんの状態から手術が最適であると判断した患者さんに対して切除を行っているのです。



回答者:冨田善彦氏(山形大学泌尿器科教授)
●「2008年に腎がん手術を受けてから再発を繰り返しています。がんとの付き合いかたを学びたいと思います。よろしくお願いします」
「2008年に左腎がんを切除した後、翌年に右胸膜に腫瘍が見つかり摘出。しかし小さい腫瘍を切除しきれなかったため薬物療法を行いました。実は、最初の切除時に右肺に影があったのですが、様子を見ましょうと言われました。これが結果的にがんではなかったのかと、その時に何かしていれば変わったのではないかと思います」

冨田氏

―腎がんと一言でいっても、様々な病態の患者さんがいます。転移が見つかってから7、8年が経った今でも元気に通院している患者さんもいれば、残念ながら「手術をせずに、残りの1、2カ月を大切に過ごした方がよいのではないか、ご自宅に帰った方がよいのではないか」と患者さんのご家族に申し上げないといけないケースもあります。それくらい、腎がん患者さんの状態にも幅があるのです。
標準的な治療は医師向けの治療ガイドラインで示されていますが、それがそれぞれの患者さんに最適な治療かは分かりません。我々医師は、みなさんにどういった治療が一番良いのか常に考えています。ですから、主治医を信じていただきたいと思います。そして、もし分からないことがあれば、すぐに主治医に質問するとよいでしょう。

日本医科大学泌尿器科准教授の木村剛氏

【閉会のあいさつ】
木村剛氏(日本医科大学 泌尿器科准教授・腎癌研究会世話人代表)


 会のおわりに、腎癌研究会世話人代表の木村剛氏が挨拶した。

 この市民公開講座を始めた当時、7年以上前になりますが、前立腺がんに関する市民公開講座はいくつも開催され、マスコミにもよく取り上げられていましたが、腎がんについては市民向けの情報はほとんどありませんでした。

 そのため我々は、腎がんという疾患があること、腎がんのことをもっと知ってもらいたいという意図でこの市民公開講座を開始しました。

 腎がんは特別ながんではなく、ほかのがんと同様に、早期発見、早期治療が大切です。早期に発見すれば、がんとその周囲だけを切除し、健常な腎臓をできるだけ残す手術が可能です。

 また、日本においては転移した腎がん患者さんの治療成績は良好だと言われています。それは日本の泌尿器科の先生が定期的に転移の有無をしっかりと調べ、早期の段階で転移を発見し、治療を開始していることが要因だと考えられています。

 ぜひ、腎がんとはどんなものか、どんな症状があるのかを知っていただき、健康診断等で偶然に腎にできものが発見された場合や、腎がんに当てはまる症状かもしれないと思ったら、とにかく病院に来ていただき、検査を受け、主治医に治療を任せていただくのが一番よい方法と思っています。最近、インターネット上に様々な情報があふれていますが、多くはその患者さんの経験を書いているものにとどまっています。先ほどから話に出ていますように、腎がんは患者さんによって病態が大きく異なります。つまり、みなさんの病状とは違う情報なのかもしれません。また、正確でないこともあります。患者さんの病状をよく知っているのは主治医です。不安なことや疑問があったら、ぜひ主治医によく相談してほしいと思います。

 本日はご来場いただき本当にありがとうございました。少しでもこの市民公開講座が皆様のお役に立つことが出来れば幸いです。